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Ⅳ 番と過ごす発情期

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 目が覚めたら病院。何回か経験のある光景。ルカの腕に繋がる点滴。点滴薬は副作用が強すぎるから出来るだけ避けたかった。ため息をつく。

フェロモン相殺治療に移行してから緊急抑制剤を使用することなく過ごしていたのに。寝ていても眩暈がする。天井が揺れて気持ち悪い。目を開けていられない。

「ルカ、大丈夫?」
川口さんの声。目を閉じたまま返事をする。

「……はい。ご迷惑、かけちゃいました」
「いいんだよ。辛そうだね。発情期の時のように一週間くらい休んだほうが良い?」

「……ちょっと、久しぶりすぎて、よく分かりません」
これほどの眩暈と気持ち悪さは経験したことが無い。室内灯の明るさが辛くて片腕を目の上に置く。

「失礼する」
急に誰かが入室する。ふわりと良い匂い。少し嘔吐感が楽になる。

「一週間休めば大丈夫だろう」
「ちょ、ちょっと! 何なんですか! どうしてココに居るんですか! バース診療オメガ専用病棟へのアルファ立ち入りは禁止でしょう!」

「フェロモンブロック剤を使用した。お前に用はない。ルカ、聞こえるか?」
「やめてください! ルカに近づくな!」
声の主に驚きすぎてルカは目を開けていた。先ほどまでの強烈な眩暈が楽になっている。

病室内にゆっくり蓮の匂いが満ちていくのを肌で感じる。
(来てくれた。俺のところに、来てくれた)
そんな幸福感に自然とルカの頬が緩む。ルカに近づく蓮しか見えていなかった。

「待たせたな」
そっと頬に触れる手に甘えるようにすり寄る。嬉しくてすがるように蓮に抱き着く。何か周囲で声がしていた。だけど、全てどうでも良くなってしまっていた。

「お願い、助けて……もう、捨てないで……」

自分の言葉とは思えないような甘ったるい弱弱しい声がした。

(こんなの、自分じゃない!)
頭のどこかでそう思ったが、蓮が唇を重ねてきて粘膜を貪るように舐められると理性の全てが消し飛んだ。
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