顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!

小池 月

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Ⅲ 番のアルファ?

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撮影の昼休憩。ルカは控室で水分と栄養ゼリーをとったあと、少しソファーで横になった。緊急抑制剤が効いているのは助かるが、副作用の倦怠感と頭痛が強すぎる。明日が休みで良かった。あとは午後の対談だけ乗り切ろうと自分を励ます。

「ルカ、寝ながらでいい。聞いて。蓮はルカにとって憎いアルファだ。到底許せる相手ではない。フェロモンでごまかされたらいけない。憎むべき相手だ」
川口さんがルカに言い聞かせるように話す。こんなに真剣に考えてくれて川口さんは良い人だと思う。だからこそルカは正直に話す。

「うん。そうなんですけど。もう、よく分からなくて。俺の苦しんできた思いよりも番のフェロモンって強いのかなぁ」
「違うよ、ルカ。これはルカの意志の問題だ。ルカはバース犯罪被害者として、蓮を許してはいけない」
川口さんの強い口調に驚いて目を開ける。ルカを見ている川口さんの顔が悲しそうで何も言えなかった。


 午後の対談は撮影より楽だった。表面上は会談している風にするが実際は原稿文が仕上がっていたから。それに蓮とはアナウンサーを挟んで距離があり接触が無い。触れ合わないだけましだ。

蓮は本当にルカの番なのか? なぜあの夜ルカを噛んだのか? ずっと番を放置するなんて酷いことを、どうしてしたのか? ルカの人生を踏みにじって何とも思わないのか? 苦しい思いが喉元までせり上がるのに蓮と目が合うだけで歓喜に頬が紅潮してしまう。混乱で頭痛がする。

「はい、これで全て終了です。お疲れさまでした」
現場監督者から声がかかり、ほっと安堵した。冷汗が出始めていた。もう、限界。

「おい、大丈夫か?」
すぐに蓮が声をかけてくる。いつまでも聞いていたい声なのに頭に響いて辛い。顔を上げられない。

「どいてください。ルカはすぐに病院に連れて行きます。私が対応します。バースハラスメントになりますよ! アルファはルカに触れないで!」
川口さんだ。そっと手を伸ばして川口さんに助けを求める。

「あぁ、ルカ。僕を選んでくれるんだね。大丈夫。すぐに助けてあげるから」
そんな優しい川口さんの声を聞きながら、徐々に意識が遠のいた。
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