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番外編
たとえばこんな年始の迎え方。
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ノクタ・ムーン・ミッド公式ミニ企画「姫初め2020」に参加する為に書いた番外編です。
F氏がどんどん変態化してて、どうすれば良いのか分からなくなっています………。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
今年も年跨ぎの鐘が鳴り始める。
フェリクスとリィナは灯りを落とした寝室の窓から、ぽつぽつと灯っている町の灯りを眺めながらその時を迎えた。
「今年も特に問題なく過ごせましたね」
「そうだな……まぁうちは騒がしかったが」
「男の子は元気が1番って、アマーリエ達も言ってましたよ」
今はすっかり夢の中の、まだ時折泣く事もあるもののようやく夜中に起きることなく眠るようになってきた息子の顔を思い浮かべて、リィナが笑う。
頬を撫でてくるフェリクスの手に誘われてリィナがフェリクスを見上げると、そっと口付けが落とされた。
──この国では年を跨いで鳴らされる鐘も、交わされる口付けも、悪いモノを祓うとされている。そうして悪いモノを祓って、清らかに新たな年を迎えるのだ。
最後の鐘が鳴ったのと同時に離れた唇を追いかけて、リィナはフェリクスの頬にちゅっと軽いキスを贈る。
「今年もよろしくお願いしますね、旦那さま」
「ああ、よろしく頼む」
頬に返されたキスに目を細めて、リィナはフェリクスを上目遣いで見上げる。
「フェリクス様……旦那さま。私の今年の目標、聞いて頂けますか?」
「──まぁ、聞かなくても、分かった」
くしゃりと髪を撫でられて、リィナがほわりと笑う。
「では、フェル様」
ん、と伸ばされたリィナの腕を引いて、フェリクスはその小さな身体を抱き込む。
「去年は出来なかったしな」
「フェリクス様がダメっておっしゃったからじゃないですか」
「本調子になるまでは、だろ。あん時はまだ戻ってなかったじゃねーか」
1年前と同じようにぷーっと頬を膨らませた妻の頬を突っついて、フェリクスは小さく笑う。
「今年は可愛がってやるから、そんな顔すんな」
そう言われて抱き上げられたかと思ったら、ベッドとは違う方へ歩き始めたフェリクスをリィナはきょとんと見上げる。
「フェリクス様?」
どちらへ?と首を傾げているリィナを、フェリクスは出窓になっている窓まで連れて行って窓台に座らせると、きょとんとしたままのリィナの顎を持ち上げて唇を重ねた。
「──たまには、違うことしてみんのも良いかと思ってな」
「………え?あの、まさか、ここで……?」
「そう、ここで。こないだ丁度良い高さだと気付いてな」
確かに窓台の高さと、フェリクスの腰の位置は良い高さのようだ。
「で、でも、あの、外……」
「誰にも見られやしねーよ」
頬を撫でられて、ゆっくりと口付けられる。
角度を変えて何度か口付けを交わして、そして舌を絡められる。
くちゅくちゅと響く水音にリィナの甘い吐息が重なり始めた頃、頬に添えられていた手が滑ってリィナの夜着の肩がするりと落とされた。
フェリクスの唇が首筋から鎖骨へと落ちている間に、その大きな手で胸を持ち上げるように揉まれて、頂をくるりと撫でられる。
リィナの口から零れた小さな声に、フェリクスはツンと上向いた頂を口に含んだ。
そうしてちゅっと音を立てて吸ってやると、リィナの身体が小さく跳ねる。
やわやわと乳房を揉んで、押し出すように乳輪を刺激して頂を吸ってみる──と、僅かに頂から液体が滲み出てくる。
それをちゅうっと吸って、フェリクスは小さく首を傾げた。
「あんま味はしねーんだな」
「ふぇ?」
とろりとしたリィナの視線に、母乳、と短く返すと、また乳房を揉んで頂を吸う。
「やっ……!さいきん止まってきた、のに……」
ちゅうちゅうと吸っているフェリクスの頭を、リィナの手がぺちぺちと叩く。
「あんな美味そうに飲んでたんだ。どんな味なのか気になるだろ」
「でしたら、あげている頃に仰ってくだされば……」
「これはアディのです、とか言われそうだったからな」
う、と詰まったリィナにほらな、と言って、フェリクスはぺろりと頂を舐める。
「アディはもう飲まねーのか?」
「離乳食が始まってからは、あまり……」
夜中にグズった時に欲しがるくらいで、と言うリィナにふぅんと返しながらもう一度頂に口を寄せる。
「ふっ……あ……」
舌先で転がして、吸う。
拒むようにフェリクスの頭にあてられていた手が抱き込むように変わった事に口端を上げて、フェリクスは反対の頂へと口を移す。
「アディに吸われてる時もこんな声出してたのか?」
「ア……アディは、こんな吸い方、しませ……んんっ」
「”こんな吸い方”?」
乳輪をなぞる様にくるりと舌先を這わせて、どんな?と問えば、リィナの手がフェリクスの髪をくしゃりと乱す。
「こんな……えっちな、吸い方………あっ、ふぁっ」
片方の頂を指で転がしながらぺろぺろと舐めて、そして指でつまむのと同時に強く吸う。
「やぁんっ」
可愛らしい声を上げながらフェリクスの頭を抱き込むように上体を屈めたリィナに、けれどあまりやり過ぎると本気で泣かれそうなので、フェリクスはそこで胸から口を離すとリィナの両足を窓台の上に持ち上げる。
大きく足を開かされたリィナの口から恥ずかしそうな小さな悲鳴が零れて、咄嗟に閉じようとする膝を抑えるとフェリクスはリィナの足の間に潜り込む。
「染みになってるぞ」
既にしっとりと湿っている薄い布の一部を、フェリクスは指で一撫でしてから顔を寄せる。
「フェルさっ……あっ……!」
舌を這わされて、布越しに感じるフェリクスの熱と、もどかしさを覚える感触に、リィナの口から甘い声が零れる。
「あ、も……フェルさま……っ」
腰を揺らしたリィナに、フェリクスはリィナの腰で結われている紐を解いて薄布を落とすと、露わになったリィナの花弁に舌を這わせる。
下から上へと舐め上げて溢れてくる蜜を吸ってやると、リィナの口からは子猫のような啼き声が零れ落ちた。
「すげぇな、リィナ。大洪水だ」
「ひゃっ……んっ……そこで、しゃべらな……あっ!!」
ふうっと息を吹きかけられて、リィナがぴくんと僅かに背を反らす。
とろとろと止まる事の無いリィナの蜜に誘われるように、フェリクスはリィナの中に舌先を挿れて中を掻き回して、そうしてぷくりと膨らんできた突起を舌先で弾く。
突起の愛撫を続けながら、同時にリィナの中に指を挿れて掻き混ぜれば、リィナの腰が逃げるように引かれた。
それを押し止めて、フェリクスは突起に軽く歯を立てる。
「やぁぁっ!」
びくんと大きく跳ねた腰を抱き寄せて、フェリクスは指の動きを速める。
「ふぇるさまっ……も、いっちゃいます……!いっちゃ……あっ、あぁっ!」
だめ、と啼いたリィナの声に、ぐちゅぐちゅと中を掻き混ぜていた指を引き抜いて硬くなっている突起をきゅっと摘むと、リィナの身体が跳ねて、そうして勢いよく体液が溢れ出した。
力の抜けたリィナを抱き止めて、ひくんと震えている身体を緩く抱き締めてその背を撫でる。
乱れた息をそのままに、ゆるゆると顔を上げたリィナがフェリクスがまだ纏ったままのガウンの襟元から手を差し入れて、はだけた胸に唇を寄せた。
フェリクスはガウンを床に落とすと、リィナの腰に纏わりついたままだった夜着を頭から引き抜いて床に放って、リィナの乱れてしまった髪を撫でつける様に梳きながら口付ける。
「挿れるぞ」
「ん……はい」
フェリクスはリィナに後ろで手をつかせると、ゆっくりとリィナの膣内へと自身を埋める。
「んっ……あ………」
ゆっくり、ゆっくり、焦らすように入ってくるフェリクスに、リィナはもどかし気に首を振る。
「ここだと、よく見えんだろ」
「……ん」
恥ずかしそうにしながらも小さく頷いたリィナに口付けて、フェリクスは繋がっているそこを見せつける様に、2人の隙間を埋めていく。
2人の身体がぴたりとくっついて、リィナがフェリクスの首に腕を回したのを合図に、フェリクスはゆっくりと抽挿を始めた。
少しずつ速まる動きに合わせて、リィナの吐息も弾む。
「あっ、あっ……ふぇる、さ……も、と………っ」
「何を、"もっと"だ?」
耳元で囁くと、リィナは潤んだ瞳でフェリクスを見上げて、そしてフェリクスの首に回している腕に力を込める。
「おく……もっと……」
最初の頃に比べると随分と素直に要求を口にするようになったリィナの言葉に、フェリクスは小さく喉を鳴らす。
「掴まっとけよ」
そう言ってフェリクスがリィナの身体を抱え上げると、その動きで中が刺激されたのかリィナが甘く啼いて腕にぎゅうっと力を込めた。
フェリクスはリィナの身体を小さく揺さぶって、そして時折突き上げる。
何度かそんな動きを繰り返して、そうしてリィナの膣内がきゅうきゅうとフェリクスを締め付け始めると、フェリクスは強請る様に唇を寄せて来たリィナに口付けて、短くいくぞ、と耳元で囁いた。
「あぁぁっ!あっ、あんっ、お、く……ふぇるさま……おく、い……!」
下から思い切り突き上げられて、逃げ場のないリィナはフェリクスに縋りつく。
「ホント、奥が好きだよな、お前は」
ほら、と腰を回して突き上げると、リィナの白い喉がフェリクスの眼前に晒される。
そこに噛み付くように口付けて、フェリクスはリィナの身体を持ち上げると、ふ、とほんの僅か腕の力を抜く。
力強く支えられていたその腕が緩んだ事で、リィナの身体が自重で沈んで──悲鳴のような嬌声と共にリィナの中が弾けて、フェリクスを誘うように膣内がうねる。
「しっかり飲み込めよ」
返事の代わりにきゅうっとまた締め付けて来る膣内と、フェリクスの腰に絡められたリィナの足に口端を持ち上げて、フェリクスはリィナの最奥へと己の熱を放った。
くったりと力の抜けたリィナを抱えたまま──繋がったまま移動して、その刺激でまた軽く達したらしいリィナをベッドに下ろすと、フェリクスはすぐに抽挿を始める。
「やぁっ……いま、いった……ばかり、で……!まっ……あんっ、んっ、あぁっ……!」
容赦なく揺さぶられたリィナの甘い声が絶え間なく零れ落ちて、そうして深まる夜闇に溶けていった──
「おはようございます、フェリクス様」
翌朝、フェリクスは何だかムスッとしたベティに起こされた。
腕の中で眠っているリィナを起こさないようにそぉっとベッドを離れてガウンを纏って、部屋の外で不機嫌そうにしていたベティにどうしたと問えば、ベティは主人がやるそれと同じようにぷくりと頬を膨らませる。
「アンネは今日はお休みだそうなので、本日は私とクラーラの2名で奥様にお仕えさせて頂きます」
「あぁ……なるほど。分かった──が、そんなに不機嫌になる事か?」
元騎士のくせに今やすっかりこの屋敷の料理人としての姿が板に着いたマウロは、三月程前にようやく射止めた意中の相手──リィナの第一の侍女であるアンネと、つい先日婚約にまでこぎつけた。
つまりは初めて迎えた年跨ぎの夜に少しばかりはっちゃけて、アンネが動けなくなったのだろう。
フェリクスにそれを責める事は出来やしないが──
「アンネは良いのです。今日1日と言わず3日くらい休んじゃって、と言いたいくらいです」
フェリクスは使用人達に週に1日は休みを取るように言っている。
けれどアンネは休みのはずの日にも「今日は休みなので、奥様とアディール様を愛でる日です」等と言って、結局休んでるのか何なのか分からない休日を過ごしている事が多いのだ。
「じゃあ何だ?」
ベティの不機嫌の理由が全く分からず首を傾げたフェリクスに、ベティがだってですね!とがばりと顔を上げる。
「マウロさんまで”午前中は寝るから”だなんて言うんですよ!?」
「………あー……それは、困る、な。何もねーのか?」
「焼きたてパンはありました!今日も美味しそうです!あとハムもどーんっと置いてあったので勝手に食べて良いみたいです!」
「何だよ、それなら良いじゃねーか」
新年早々朝食抜きかと心配したフェリクスは食うもんがあるなら、とそう返したが、ベティは納得がいっていないようで、再びぷくりと頬を膨らませている。
「良くありません!フェリクス様からマウロさんに言ってください!今すぐふわふわ玉子を作れって!!」
「あー…………」
ベティは3人娘の中でも──恐らくは使用人達の中でも、一番食べる事が好きだ。
大食いと言う訳では無いが、とにかく”美味しいもの”を食べる事が好きで、リィナについてこの屋敷に来て以降、朝にはマウロの作る”ふわふわのスクランブルエッグ”がなくては1日が始まらない、といつぞや言っていた。
そういう事か、とフェリクスはやれやれと息を落として、ベティの頭をぽんぽんと叩く。
「まぁ、今日くらいは諦めてやれ」
「そんなぁぁ!フェリクス様が一言おっしゃって下されば……!」
「食うもんがあるだけマシだろ。その分明日の”ふわふわ玉子”はもっと美味いぞ」
「うぅぅぅぅ……っ」
フェリクスの加勢が望めないと悟ったのか、肩を落としてとぼとぼと去っていくベティの背を苦笑と共に見送ったフェリクスの耳に、小さく名を呼ぶ声が届いた。
「悪い、起こしたか」
ベッドに戻ってまだとろんとしているリィナの頭を撫でると、リィナが小さく首を振る。
「ベティが、すみません……」
「いや、構わねーが……まぁ、マウロにはあとで一言言っておいてやるか」
「そんな……マウロさんだって、お休み、しないと……」
アンネ以上に休みを取っていないのがマウロだ。
本人が「構わないよ、どうせ休んだって自分の飯作るんだし」なんて言うものだから、ついつい甘えてしまっているのが現状で、フェリクスとしても早急に料理人をもう2人ばかり……と考えてはいるが、なぜだかマウロがあまり良い顔をしない為に頓挫したままなのだ。
「まぁ、そろそろ本気で考えねーとな……ほら、マウロの事は良いから、お前もまだ寝てろ」
くしゃりと頭を撫でれば、リィナが腕を伸ばしてくる。
仕方ねーなと笑って、フェリクスは掛布ごとリィナを抱き寄せる。
「もうすこしで、おきます……から……」
もにゃもにゃとそんな事を言うリィナの額にばぁかと口付けると、だって……とようやく聞き取れるくらいの呟きが返ってくる。
「アディなら今日は俺が見ててやる。困ったらクラーラやアマーリエにでも頼むから、心配しないでお前は寝てろ」
もう何を言っているのか聞き取れないリィナの返事らしき声のあと、すぐに小さな寝息が聞こえて来て、フェリクスは抱き寄せたその背をリィナの呼吸に合わせてトントンと叩く。
アディールが産まれて以降、随分と眠りが浅くなったリィナがもうずっと寝不足の状態だという事は分かっていた。
「悪ぃな、こんな風にしかしてやれなくて」
いくら見ておくから寝てろと言っても、深く眠る事が出来なくなっているらしい"母親"のリィナは、アディールが泣くとすぐに起きてしまう。
信用されていないわけではないのだろうが、昼寝をさせようが夜中に良いから寝てろと押し止めようが、すぐに起きて来てしまうリィナを寝かせる為に抱き潰す事しか浮かばなかった自分は、やはり"父親"としては失格なのだろうなと自嘲気味に笑う。
そして久方ぶりに深い眠りに落ちているらしいリィナの額にもう一度口付けて、フェリクスはそっと寝室を後にした──。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
お読みいただきましてありがとうございました!
リィナはぐっすり眠って、久しぶりにすっきりしましたとさ……!
リィナのこなれた感をどこまで出すかで悩みましたが……かなり慣れてしまいました。
まぁ3年目ですからね……うん。
そして時期的にマウロとアンネもそんな頃……!と気付いたのでちょろっと入れたくなったせいで、
ベティが食いしん坊みたいになってしまいました……ごめん、ベティ………。
孤児院でひもじい思いをしているので、"食べる"事に熱意がいっちゃった子です。
本編後の人物紹介で「多分飲食店系の人とお付き合い中」みたいな事を書いたのはその辺に由来してたりします。
F氏がどんどん変態化してて、どうすれば良いのか分からなくなっています………。
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今年も年跨ぎの鐘が鳴り始める。
フェリクスとリィナは灯りを落とした寝室の窓から、ぽつぽつと灯っている町の灯りを眺めながらその時を迎えた。
「今年も特に問題なく過ごせましたね」
「そうだな……まぁうちは騒がしかったが」
「男の子は元気が1番って、アマーリエ達も言ってましたよ」
今はすっかり夢の中の、まだ時折泣く事もあるもののようやく夜中に起きることなく眠るようになってきた息子の顔を思い浮かべて、リィナが笑う。
頬を撫でてくるフェリクスの手に誘われてリィナがフェリクスを見上げると、そっと口付けが落とされた。
──この国では年を跨いで鳴らされる鐘も、交わされる口付けも、悪いモノを祓うとされている。そうして悪いモノを祓って、清らかに新たな年を迎えるのだ。
最後の鐘が鳴ったのと同時に離れた唇を追いかけて、リィナはフェリクスの頬にちゅっと軽いキスを贈る。
「今年もよろしくお願いしますね、旦那さま」
「ああ、よろしく頼む」
頬に返されたキスに目を細めて、リィナはフェリクスを上目遣いで見上げる。
「フェリクス様……旦那さま。私の今年の目標、聞いて頂けますか?」
「──まぁ、聞かなくても、分かった」
くしゃりと髪を撫でられて、リィナがほわりと笑う。
「では、フェル様」
ん、と伸ばされたリィナの腕を引いて、フェリクスはその小さな身体を抱き込む。
「去年は出来なかったしな」
「フェリクス様がダメっておっしゃったからじゃないですか」
「本調子になるまでは、だろ。あん時はまだ戻ってなかったじゃねーか」
1年前と同じようにぷーっと頬を膨らませた妻の頬を突っついて、フェリクスは小さく笑う。
「今年は可愛がってやるから、そんな顔すんな」
そう言われて抱き上げられたかと思ったら、ベッドとは違う方へ歩き始めたフェリクスをリィナはきょとんと見上げる。
「フェリクス様?」
どちらへ?と首を傾げているリィナを、フェリクスは出窓になっている窓まで連れて行って窓台に座らせると、きょとんとしたままのリィナの顎を持ち上げて唇を重ねた。
「──たまには、違うことしてみんのも良いかと思ってな」
「………え?あの、まさか、ここで……?」
「そう、ここで。こないだ丁度良い高さだと気付いてな」
確かに窓台の高さと、フェリクスの腰の位置は良い高さのようだ。
「で、でも、あの、外……」
「誰にも見られやしねーよ」
頬を撫でられて、ゆっくりと口付けられる。
角度を変えて何度か口付けを交わして、そして舌を絡められる。
くちゅくちゅと響く水音にリィナの甘い吐息が重なり始めた頃、頬に添えられていた手が滑ってリィナの夜着の肩がするりと落とされた。
フェリクスの唇が首筋から鎖骨へと落ちている間に、その大きな手で胸を持ち上げるように揉まれて、頂をくるりと撫でられる。
リィナの口から零れた小さな声に、フェリクスはツンと上向いた頂を口に含んだ。
そうしてちゅっと音を立てて吸ってやると、リィナの身体が小さく跳ねる。
やわやわと乳房を揉んで、押し出すように乳輪を刺激して頂を吸ってみる──と、僅かに頂から液体が滲み出てくる。
それをちゅうっと吸って、フェリクスは小さく首を傾げた。
「あんま味はしねーんだな」
「ふぇ?」
とろりとしたリィナの視線に、母乳、と短く返すと、また乳房を揉んで頂を吸う。
「やっ……!さいきん止まってきた、のに……」
ちゅうちゅうと吸っているフェリクスの頭を、リィナの手がぺちぺちと叩く。
「あんな美味そうに飲んでたんだ。どんな味なのか気になるだろ」
「でしたら、あげている頃に仰ってくだされば……」
「これはアディのです、とか言われそうだったからな」
う、と詰まったリィナにほらな、と言って、フェリクスはぺろりと頂を舐める。
「アディはもう飲まねーのか?」
「離乳食が始まってからは、あまり……」
夜中にグズった時に欲しがるくらいで、と言うリィナにふぅんと返しながらもう一度頂に口を寄せる。
「ふっ……あ……」
舌先で転がして、吸う。
拒むようにフェリクスの頭にあてられていた手が抱き込むように変わった事に口端を上げて、フェリクスは反対の頂へと口を移す。
「アディに吸われてる時もこんな声出してたのか?」
「ア……アディは、こんな吸い方、しませ……んんっ」
「”こんな吸い方”?」
乳輪をなぞる様にくるりと舌先を這わせて、どんな?と問えば、リィナの手がフェリクスの髪をくしゃりと乱す。
「こんな……えっちな、吸い方………あっ、ふぁっ」
片方の頂を指で転がしながらぺろぺろと舐めて、そして指でつまむのと同時に強く吸う。
「やぁんっ」
可愛らしい声を上げながらフェリクスの頭を抱き込むように上体を屈めたリィナに、けれどあまりやり過ぎると本気で泣かれそうなので、フェリクスはそこで胸から口を離すとリィナの両足を窓台の上に持ち上げる。
大きく足を開かされたリィナの口から恥ずかしそうな小さな悲鳴が零れて、咄嗟に閉じようとする膝を抑えるとフェリクスはリィナの足の間に潜り込む。
「染みになってるぞ」
既にしっとりと湿っている薄い布の一部を、フェリクスは指で一撫でしてから顔を寄せる。
「フェルさっ……あっ……!」
舌を這わされて、布越しに感じるフェリクスの熱と、もどかしさを覚える感触に、リィナの口から甘い声が零れる。
「あ、も……フェルさま……っ」
腰を揺らしたリィナに、フェリクスはリィナの腰で結われている紐を解いて薄布を落とすと、露わになったリィナの花弁に舌を這わせる。
下から上へと舐め上げて溢れてくる蜜を吸ってやると、リィナの口からは子猫のような啼き声が零れ落ちた。
「すげぇな、リィナ。大洪水だ」
「ひゃっ……んっ……そこで、しゃべらな……あっ!!」
ふうっと息を吹きかけられて、リィナがぴくんと僅かに背を反らす。
とろとろと止まる事の無いリィナの蜜に誘われるように、フェリクスはリィナの中に舌先を挿れて中を掻き回して、そうしてぷくりと膨らんできた突起を舌先で弾く。
突起の愛撫を続けながら、同時にリィナの中に指を挿れて掻き混ぜれば、リィナの腰が逃げるように引かれた。
それを押し止めて、フェリクスは突起に軽く歯を立てる。
「やぁぁっ!」
びくんと大きく跳ねた腰を抱き寄せて、フェリクスは指の動きを速める。
「ふぇるさまっ……も、いっちゃいます……!いっちゃ……あっ、あぁっ!」
だめ、と啼いたリィナの声に、ぐちゅぐちゅと中を掻き混ぜていた指を引き抜いて硬くなっている突起をきゅっと摘むと、リィナの身体が跳ねて、そうして勢いよく体液が溢れ出した。
力の抜けたリィナを抱き止めて、ひくんと震えている身体を緩く抱き締めてその背を撫でる。
乱れた息をそのままに、ゆるゆると顔を上げたリィナがフェリクスがまだ纏ったままのガウンの襟元から手を差し入れて、はだけた胸に唇を寄せた。
フェリクスはガウンを床に落とすと、リィナの腰に纏わりついたままだった夜着を頭から引き抜いて床に放って、リィナの乱れてしまった髪を撫でつける様に梳きながら口付ける。
「挿れるぞ」
「ん……はい」
フェリクスはリィナに後ろで手をつかせると、ゆっくりとリィナの膣内へと自身を埋める。
「んっ……あ………」
ゆっくり、ゆっくり、焦らすように入ってくるフェリクスに、リィナはもどかし気に首を振る。
「ここだと、よく見えんだろ」
「……ん」
恥ずかしそうにしながらも小さく頷いたリィナに口付けて、フェリクスは繋がっているそこを見せつける様に、2人の隙間を埋めていく。
2人の身体がぴたりとくっついて、リィナがフェリクスの首に腕を回したのを合図に、フェリクスはゆっくりと抽挿を始めた。
少しずつ速まる動きに合わせて、リィナの吐息も弾む。
「あっ、あっ……ふぇる、さ……も、と………っ」
「何を、"もっと"だ?」
耳元で囁くと、リィナは潤んだ瞳でフェリクスを見上げて、そしてフェリクスの首に回している腕に力を込める。
「おく……もっと……」
最初の頃に比べると随分と素直に要求を口にするようになったリィナの言葉に、フェリクスは小さく喉を鳴らす。
「掴まっとけよ」
そう言ってフェリクスがリィナの身体を抱え上げると、その動きで中が刺激されたのかリィナが甘く啼いて腕にぎゅうっと力を込めた。
フェリクスはリィナの身体を小さく揺さぶって、そして時折突き上げる。
何度かそんな動きを繰り返して、そうしてリィナの膣内がきゅうきゅうとフェリクスを締め付け始めると、フェリクスは強請る様に唇を寄せて来たリィナに口付けて、短くいくぞ、と耳元で囁いた。
「あぁぁっ!あっ、あんっ、お、く……ふぇるさま……おく、い……!」
下から思い切り突き上げられて、逃げ場のないリィナはフェリクスに縋りつく。
「ホント、奥が好きだよな、お前は」
ほら、と腰を回して突き上げると、リィナの白い喉がフェリクスの眼前に晒される。
そこに噛み付くように口付けて、フェリクスはリィナの身体を持ち上げると、ふ、とほんの僅か腕の力を抜く。
力強く支えられていたその腕が緩んだ事で、リィナの身体が自重で沈んで──悲鳴のような嬌声と共にリィナの中が弾けて、フェリクスを誘うように膣内がうねる。
「しっかり飲み込めよ」
返事の代わりにきゅうっとまた締め付けて来る膣内と、フェリクスの腰に絡められたリィナの足に口端を持ち上げて、フェリクスはリィナの最奥へと己の熱を放った。
くったりと力の抜けたリィナを抱えたまま──繋がったまま移動して、その刺激でまた軽く達したらしいリィナをベッドに下ろすと、フェリクスはすぐに抽挿を始める。
「やぁっ……いま、いった……ばかり、で……!まっ……あんっ、んっ、あぁっ……!」
容赦なく揺さぶられたリィナの甘い声が絶え間なく零れ落ちて、そうして深まる夜闇に溶けていった──
「おはようございます、フェリクス様」
翌朝、フェリクスは何だかムスッとしたベティに起こされた。
腕の中で眠っているリィナを起こさないようにそぉっとベッドを離れてガウンを纏って、部屋の外で不機嫌そうにしていたベティにどうしたと問えば、ベティは主人がやるそれと同じようにぷくりと頬を膨らませる。
「アンネは今日はお休みだそうなので、本日は私とクラーラの2名で奥様にお仕えさせて頂きます」
「あぁ……なるほど。分かった──が、そんなに不機嫌になる事か?」
元騎士のくせに今やすっかりこの屋敷の料理人としての姿が板に着いたマウロは、三月程前にようやく射止めた意中の相手──リィナの第一の侍女であるアンネと、つい先日婚約にまでこぎつけた。
つまりは初めて迎えた年跨ぎの夜に少しばかりはっちゃけて、アンネが動けなくなったのだろう。
フェリクスにそれを責める事は出来やしないが──
「アンネは良いのです。今日1日と言わず3日くらい休んじゃって、と言いたいくらいです」
フェリクスは使用人達に週に1日は休みを取るように言っている。
けれどアンネは休みのはずの日にも「今日は休みなので、奥様とアディール様を愛でる日です」等と言って、結局休んでるのか何なのか分からない休日を過ごしている事が多いのだ。
「じゃあ何だ?」
ベティの不機嫌の理由が全く分からず首を傾げたフェリクスに、ベティがだってですね!とがばりと顔を上げる。
「マウロさんまで”午前中は寝るから”だなんて言うんですよ!?」
「………あー……それは、困る、な。何もねーのか?」
「焼きたてパンはありました!今日も美味しそうです!あとハムもどーんっと置いてあったので勝手に食べて良いみたいです!」
「何だよ、それなら良いじゃねーか」
新年早々朝食抜きかと心配したフェリクスは食うもんがあるなら、とそう返したが、ベティは納得がいっていないようで、再びぷくりと頬を膨らませている。
「良くありません!フェリクス様からマウロさんに言ってください!今すぐふわふわ玉子を作れって!!」
「あー…………」
ベティは3人娘の中でも──恐らくは使用人達の中でも、一番食べる事が好きだ。
大食いと言う訳では無いが、とにかく”美味しいもの”を食べる事が好きで、リィナについてこの屋敷に来て以降、朝にはマウロの作る”ふわふわのスクランブルエッグ”がなくては1日が始まらない、といつぞや言っていた。
そういう事か、とフェリクスはやれやれと息を落として、ベティの頭をぽんぽんと叩く。
「まぁ、今日くらいは諦めてやれ」
「そんなぁぁ!フェリクス様が一言おっしゃって下されば……!」
「食うもんがあるだけマシだろ。その分明日の”ふわふわ玉子”はもっと美味いぞ」
「うぅぅぅぅ……っ」
フェリクスの加勢が望めないと悟ったのか、肩を落としてとぼとぼと去っていくベティの背を苦笑と共に見送ったフェリクスの耳に、小さく名を呼ぶ声が届いた。
「悪い、起こしたか」
ベッドに戻ってまだとろんとしているリィナの頭を撫でると、リィナが小さく首を振る。
「ベティが、すみません……」
「いや、構わねーが……まぁ、マウロにはあとで一言言っておいてやるか」
「そんな……マウロさんだって、お休み、しないと……」
アンネ以上に休みを取っていないのがマウロだ。
本人が「構わないよ、どうせ休んだって自分の飯作るんだし」なんて言うものだから、ついつい甘えてしまっているのが現状で、フェリクスとしても早急に料理人をもう2人ばかり……と考えてはいるが、なぜだかマウロがあまり良い顔をしない為に頓挫したままなのだ。
「まぁ、そろそろ本気で考えねーとな……ほら、マウロの事は良いから、お前もまだ寝てろ」
くしゃりと頭を撫でれば、リィナが腕を伸ばしてくる。
仕方ねーなと笑って、フェリクスは掛布ごとリィナを抱き寄せる。
「もうすこしで、おきます……から……」
もにゃもにゃとそんな事を言うリィナの額にばぁかと口付けると、だって……とようやく聞き取れるくらいの呟きが返ってくる。
「アディなら今日は俺が見ててやる。困ったらクラーラやアマーリエにでも頼むから、心配しないでお前は寝てろ」
もう何を言っているのか聞き取れないリィナの返事らしき声のあと、すぐに小さな寝息が聞こえて来て、フェリクスは抱き寄せたその背をリィナの呼吸に合わせてトントンと叩く。
アディールが産まれて以降、随分と眠りが浅くなったリィナがもうずっと寝不足の状態だという事は分かっていた。
「悪ぃな、こんな風にしかしてやれなくて」
いくら見ておくから寝てろと言っても、深く眠る事が出来なくなっているらしい"母親"のリィナは、アディールが泣くとすぐに起きてしまう。
信用されていないわけではないのだろうが、昼寝をさせようが夜中に良いから寝てろと押し止めようが、すぐに起きて来てしまうリィナを寝かせる為に抱き潰す事しか浮かばなかった自分は、やはり"父親"としては失格なのだろうなと自嘲気味に笑う。
そして久方ぶりに深い眠りに落ちているらしいリィナの額にもう一度口付けて、フェリクスはそっと寝室を後にした──。
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お読みいただきましてありがとうございました!
リィナはぐっすり眠って、久しぶりにすっきりしましたとさ……!
リィナのこなれた感をどこまで出すかで悩みましたが……かなり慣れてしまいました。
まぁ3年目ですからね……うん。
そして時期的にマウロとアンネもそんな頃……!と気付いたのでちょろっと入れたくなったせいで、
ベティが食いしん坊みたいになってしまいました……ごめん、ベティ………。
孤児院でひもじい思いをしているので、"食べる"事に熱意がいっちゃった子です。
本編後の人物紹介で「多分飲食店系の人とお付き合い中」みたいな事を書いたのはその辺に由来してたりします。
応援ありがとうございます!
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