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密談は続く
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「あぁ、そうさ。……ところで確認だけど、ザレドスさん、ポピッカさん。ゼットツ州が何故、当初は簡単だと思われた依頼に、過剰とも言える高い報酬を当てたのか。もう、気づいていますよね」
ボクは、二人に目をやった。
「えぇ、もちろん推測ですが、私たちは妨害者をおびき出す為の”囮”だったんでしょうね」
まず、ザレドスが口を開く。
「州としても妨害者・魔法使いガスラムの実力を知っていたので、手練れの冒険者を集める為に高額な報酬が必要だったのですわね」
ポピッカが続いた。
「さらに言えば、妨害者に気取られないために、部外者を使わざるを得なかった。これはボクの推測ですが、恐らくガスラムがボクたちの事を知ったのは、かなり最近になってからだと思うんですよ。
そうでなければ、更に周到な罠を仕掛けていたでしょうからね。抜け穴もある事だし」
ボクが、締めくくる。
「ゲル。あなた、ちゃんと気づいてました?」
「え……? お、おう。もちろんだともさ。と、とっくの昔に気づいてたぜぇ」
僧侶の意地悪な質問に、戦士があたふたと答えた。皆がクスクスと笑う。
まぁ、高額な報酬については、事が露見した後の口止め料という主旨も含まれるに違いない。ゼットツ州としてはガスラムさえ捕縛すれば、最深部の謎や背後関係を奴の口から聞きだせると思っていたであろうから……。
「未だに奴の正体や目的は分かりませんが、州としても魔獣は予想外だったでしょうな。あと恐らくは、上の階の崩落も……」
「えぇ、だからむしろ、そこがこちらの付け目になります」
「付け目って?」
ザレドスとボクの話に、ゲルドーシュが口をはさむ。
「多分、当初の予定としては、向こうはガスラムの尻尾を捕まえて、ボクたちには体よくお引き取り願うつもりだったんだろうよ。最深部の謎が解けなくても、ガスラムを締め上げればわかるだろうし、残金も払わなくて済むからね。
だけど魔獣が出て、しかもボクたちが討伐したとなっては話が全く変わって来る」
ボクの話を聞きながら、ゲルドーシュがゴクンと唾をのみこんだ。
「だから、ボクたちを徒や疎かに扱う事は出来ないだろうさ。守秘義務があるとはいえ、魔獣が出るなんてのは全くの想定外だから、契約の見直しだって必要になりかねない」
「それにですね。もう一つ有利な情報があるんですよ。車中での隊長さんの話から察するに、囮を使うというのは役人側が考えた事みたいです」
ザレドスが、僕の説明に続く。
「軍人さんたちの方は、反対したらしいですけどね。まぁ、余り正々堂々とは言えない作戦ですので……。
そこへ私たちの魔獣討伐です。ビークルに乗る時の様子を見ても分かるように、軍人さんたちの多くは、私たちに大変な好意を抱いているようです。これで間接的に、役人へ対する対抗心をますます強めたのではないでしょうか」
次第に饒舌になる細工師ザレドス。
「実はビークル内で隊長さんが、こっそり耳打ちして来たんですよ。”軍はあなた方を、出来うる限り支援する”って。どうやら軍部の、かなり上の人の同意も得ているようですな」
新たな吉報にボクとポピッカの頬が緩む。ゲルドーシュは……、まぁ、いつもの如くであろうか。
ボクは、二人に目をやった。
「えぇ、もちろん推測ですが、私たちは妨害者をおびき出す為の”囮”だったんでしょうね」
まず、ザレドスが口を開く。
「州としても妨害者・魔法使いガスラムの実力を知っていたので、手練れの冒険者を集める為に高額な報酬が必要だったのですわね」
ポピッカが続いた。
「さらに言えば、妨害者に気取られないために、部外者を使わざるを得なかった。これはボクの推測ですが、恐らくガスラムがボクたちの事を知ったのは、かなり最近になってからだと思うんですよ。
そうでなければ、更に周到な罠を仕掛けていたでしょうからね。抜け穴もある事だし」
ボクが、締めくくる。
「ゲル。あなた、ちゃんと気づいてました?」
「え……? お、おう。もちろんだともさ。と、とっくの昔に気づいてたぜぇ」
僧侶の意地悪な質問に、戦士があたふたと答えた。皆がクスクスと笑う。
まぁ、高額な報酬については、事が露見した後の口止め料という主旨も含まれるに違いない。ゼットツ州としてはガスラムさえ捕縛すれば、最深部の謎や背後関係を奴の口から聞きだせると思っていたであろうから……。
「未だに奴の正体や目的は分かりませんが、州としても魔獣は予想外だったでしょうな。あと恐らくは、上の階の崩落も……」
「えぇ、だからむしろ、そこがこちらの付け目になります」
「付け目って?」
ザレドスとボクの話に、ゲルドーシュが口をはさむ。
「多分、当初の予定としては、向こうはガスラムの尻尾を捕まえて、ボクたちには体よくお引き取り願うつもりだったんだろうよ。最深部の謎が解けなくても、ガスラムを締め上げればわかるだろうし、残金も払わなくて済むからね。
だけど魔獣が出て、しかもボクたちが討伐したとなっては話が全く変わって来る」
ボクの話を聞きながら、ゲルドーシュがゴクンと唾をのみこんだ。
「だから、ボクたちを徒や疎かに扱う事は出来ないだろうさ。守秘義務があるとはいえ、魔獣が出るなんてのは全くの想定外だから、契約の見直しだって必要になりかねない」
「それにですね。もう一つ有利な情報があるんですよ。車中での隊長さんの話から察するに、囮を使うというのは役人側が考えた事みたいです」
ザレドスが、僕の説明に続く。
「軍人さんたちの方は、反対したらしいですけどね。まぁ、余り正々堂々とは言えない作戦ですので……。
そこへ私たちの魔獣討伐です。ビークルに乗る時の様子を見ても分かるように、軍人さんたちの多くは、私たちに大変な好意を抱いているようです。これで間接的に、役人へ対する対抗心をますます強めたのではないでしょうか」
次第に饒舌になる細工師ザレドス。
「実はビークル内で隊長さんが、こっそり耳打ちして来たんですよ。”軍はあなた方を、出来うる限り支援する”って。どうやら軍部の、かなり上の人の同意も得ているようですな」
新たな吉報にボクとポピッカの頬が緩む。ゲルドーシュは……、まぁ、いつもの如くであろうか。
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