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結婚式の相談
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ぼやいているゲルドーシュを尻目に、皆で地下7階の安全地帯へと入る。ゲルドーシュ以外の三人は取りあえずマジックエッセンスを備え付けのタンクから補給し、最下階へ乗り込むための準備を万全とした。
食料保存庫にあるハーブを含んだお茶を皆で飲み、気持ちを落ち着ける。
「ゲル、剣をちょっと見せていただけませんかね」
ザレドスは、闘気を爆発に変換できる珍しいアイテムを目の当たりにし、マニアの血が抑えきれないらしい。
「おぉ、だけど剣は戦士の魂だ。丁寧に扱ってくれよ」
ゲルドーシュは気前良く、己の魂を細工師に差し出した。
「ザレドスは本当に、その手のものがお好きですわね。定めしご自宅には、コレクター垂涎の魔使具などが山とあるのではないですの?」
安全地帯に入ったとはいえ、今日の仕事を終えたわけではなく、あくまでも小休止である。各々の呼び方は、まだ探索モードの状態た。
「えぇ、まぁそれなりにね。もっとも妻にはガラクタ扱いされていますよ」
ゲルドーシュの大剣を魔使具で鑑定しながら、ザレドスは苦笑いをする。
「まぁ、奥様がいらっしゃるなら、これから結婚生活を送るゲルに、何かアドバイスをして差し上げてみましては?」
ポピッカが、悪ふざけでもするように細工師を促す。
「お、おう? べ、別にそんなもん教えてもらわなくっても、愛があればだなぁ……」
ゲルドーシュが、照れくさそうに頭をかいた。
「はぁ? あなたから”愛”なんて言葉が出るとは思いもしませんでしたわね。でもあなたのような前時代的な男性が、まともな結婚生活を送るためには、聞いておいた方が良いですわよ。即、離婚されないためにもね。
なんなら私が指南して差し上げましょうか?」
ポピッカが、”神父らしい”説教をし始める。……でもなぁ、彼女だって二十代前半だろうに、”結婚とは”なんて事がわかるのだろうか。ボクは思わずプッと吹いてしまう。
「あ、スタン。いま笑いましたわね。どうせ、こんな小娘に結婚の何たるかがわかるのかって思ってらっしゃるのでしょう!」
「え、い、いやそんな事ないよ、ポピッカ。あぁ、ザレドス、パーティーを組んだのも何かの縁だし、ゲルドーシュに平穏な結婚生活における秘訣でも教えてあげたら……」
僧侶に図星を指されたボクは、思わずザレドスに話をふった。
「そうですねぇ……。ま、やめときましょう。これから希望に満ちた新婚生活を送る彼に、冷や水を浴びせかけるような事を吹き込むのは無粋というものですよ」
魔使具での測定を続けながら、ザレドスは半ば諦めたような微笑みを浮かべる。
「ちょ、ちょっと。ザレドスよ。気になるじゃねぇか。結婚生活ってぇのは、そんなに難儀なものなのか…!?」
こいつが新婚生活を実際にイメージしてるって事は……、まぁ、ないよな。婚約者を好きだという気持ちにウソはないだろが、子供が出来たと聞かされ、勢いだけで結婚を決めた可能性が大だろう。
「あぁ、それじゃあ、いっその事、私が結婚式の司祭をやってあげましょうか? 」
意外な提案をするポピッカ。
「は? いや、別にいいよ。そもそも何で、お前に俺たちの結婚式を仕切られなきゃいけねぇんだ。それにここを出たら、すぐに帰らなきゃいけねぇんじゃないのかよ」
ゲルドーシュが、あたふたとし始める。
「心配ご無用ですわ。前に聞いたあなたの住まいは帰り道の途中にありますし、依頼の前金は既に私の教会に送ってありますの。残金を得た場合でも、同じ手続きをすれば問題ありませんわ」
「で、でも……」
ゲルドーシュが動揺する。確かに天敵と言えるポピッカに結婚式を仕切られるのは具合が悪いだろう。
「あぁ、それはいい。ゲル、是非、彼女に頼んだ方が良いですよ。
普通、庶民の結婚式は牧師やその代行者が司るものです。神父が仕切るのは、その街の政治家や官僚、有力商人などですからね。結婚式の格が違いますよ」
興味があるのか、ザレドスが鑑定中の品から顔をあげて話に加わる。
「い、いや、俺もテュラフィーも格とかそういうものには、興味がなくて……」
ゲルドーシュの抵抗が続いた。
「それだけじゃないんです。神父の仕切りで結婚式を挙げたとなると、色々と優遇措置が受けられると聞いた事があります。お金や家を借りる時などは、教会が保証人になってくれるそうですし、お子さんの進学などにも有利に働くみたいですよ」
「お、おお……」
戦士の勢いが、どんどん衰えていく。
「なにより、テュラフィーさんが喜ぶでしょう。若くして第6等級のロザリオを賜るほど熱心な信徒なのでしょう? 神父の信任を得た結婚式は、彼女にとってこの上ない名誉だと思いますよ」
ザレドスが、戦士の泣き所である婚約者の名前をあげてとどめを刺した。
「……じゃ、まぁ頼もうかな……」
ゲルドーシュが、ついに白旗をあげる。
「えぇ、大船に乗ったつもりでいて下さいましね」
ポピッカがゲルドーシュの肩をポンとたたき、場は笑い声に包まれた。
うん、いい傾向だ。皆、ここから無事に出られる事を前提に未来を語っている。もちろん全く事態を楽観視しているわけではないだろうが、気持ちが前向きになっているのは間違いない。
「有難うございました」
ザレドスが大剣を鑑定し終え、戦士の魂をゲルドーシュに返す。
「調べた結果、先ほどのような爆発を、あと2回分放てると分かりました。ただし、この剣は魔使具ではありませんから、マジックエッセンスの補給で回数を復活させる事は出来ませんし、テュラフィーさんでない限り新たに魔法を施す事も出来ません」
食料保存庫にあるハーブを含んだお茶を皆で飲み、気持ちを落ち着ける。
「ゲル、剣をちょっと見せていただけませんかね」
ザレドスは、闘気を爆発に変換できる珍しいアイテムを目の当たりにし、マニアの血が抑えきれないらしい。
「おぉ、だけど剣は戦士の魂だ。丁寧に扱ってくれよ」
ゲルドーシュは気前良く、己の魂を細工師に差し出した。
「ザレドスは本当に、その手のものがお好きですわね。定めしご自宅には、コレクター垂涎の魔使具などが山とあるのではないですの?」
安全地帯に入ったとはいえ、今日の仕事を終えたわけではなく、あくまでも小休止である。各々の呼び方は、まだ探索モードの状態た。
「えぇ、まぁそれなりにね。もっとも妻にはガラクタ扱いされていますよ」
ゲルドーシュの大剣を魔使具で鑑定しながら、ザレドスは苦笑いをする。
「まぁ、奥様がいらっしゃるなら、これから結婚生活を送るゲルに、何かアドバイスをして差し上げてみましては?」
ポピッカが、悪ふざけでもするように細工師を促す。
「お、おう? べ、別にそんなもん教えてもらわなくっても、愛があればだなぁ……」
ゲルドーシュが、照れくさそうに頭をかいた。
「はぁ? あなたから”愛”なんて言葉が出るとは思いもしませんでしたわね。でもあなたのような前時代的な男性が、まともな結婚生活を送るためには、聞いておいた方が良いですわよ。即、離婚されないためにもね。
なんなら私が指南して差し上げましょうか?」
ポピッカが、”神父らしい”説教をし始める。……でもなぁ、彼女だって二十代前半だろうに、”結婚とは”なんて事がわかるのだろうか。ボクは思わずプッと吹いてしまう。
「あ、スタン。いま笑いましたわね。どうせ、こんな小娘に結婚の何たるかがわかるのかって思ってらっしゃるのでしょう!」
「え、い、いやそんな事ないよ、ポピッカ。あぁ、ザレドス、パーティーを組んだのも何かの縁だし、ゲルドーシュに平穏な結婚生活における秘訣でも教えてあげたら……」
僧侶に図星を指されたボクは、思わずザレドスに話をふった。
「そうですねぇ……。ま、やめときましょう。これから希望に満ちた新婚生活を送る彼に、冷や水を浴びせかけるような事を吹き込むのは無粋というものですよ」
魔使具での測定を続けながら、ザレドスは半ば諦めたような微笑みを浮かべる。
「ちょ、ちょっと。ザレドスよ。気になるじゃねぇか。結婚生活ってぇのは、そんなに難儀なものなのか…!?」
こいつが新婚生活を実際にイメージしてるって事は……、まぁ、ないよな。婚約者を好きだという気持ちにウソはないだろが、子供が出来たと聞かされ、勢いだけで結婚を決めた可能性が大だろう。
「あぁ、それじゃあ、いっその事、私が結婚式の司祭をやってあげましょうか? 」
意外な提案をするポピッカ。
「は? いや、別にいいよ。そもそも何で、お前に俺たちの結婚式を仕切られなきゃいけねぇんだ。それにここを出たら、すぐに帰らなきゃいけねぇんじゃないのかよ」
ゲルドーシュが、あたふたとし始める。
「心配ご無用ですわ。前に聞いたあなたの住まいは帰り道の途中にありますし、依頼の前金は既に私の教会に送ってありますの。残金を得た場合でも、同じ手続きをすれば問題ありませんわ」
「で、でも……」
ゲルドーシュが動揺する。確かに天敵と言えるポピッカに結婚式を仕切られるのは具合が悪いだろう。
「あぁ、それはいい。ゲル、是非、彼女に頼んだ方が良いですよ。
普通、庶民の結婚式は牧師やその代行者が司るものです。神父が仕切るのは、その街の政治家や官僚、有力商人などですからね。結婚式の格が違いますよ」
興味があるのか、ザレドスが鑑定中の品から顔をあげて話に加わる。
「い、いや、俺もテュラフィーも格とかそういうものには、興味がなくて……」
ゲルドーシュの抵抗が続いた。
「それだけじゃないんです。神父の仕切りで結婚式を挙げたとなると、色々と優遇措置が受けられると聞いた事があります。お金や家を借りる時などは、教会が保証人になってくれるそうですし、お子さんの進学などにも有利に働くみたいですよ」
「お、おお……」
戦士の勢いが、どんどん衰えていく。
「なにより、テュラフィーさんが喜ぶでしょう。若くして第6等級のロザリオを賜るほど熱心な信徒なのでしょう? 神父の信任を得た結婚式は、彼女にとってこの上ない名誉だと思いますよ」
ザレドスが、戦士の泣き所である婚約者の名前をあげてとどめを刺した。
「……じゃ、まぁ頼もうかな……」
ゲルドーシュが、ついに白旗をあげる。
「えぇ、大船に乗ったつもりでいて下さいましね」
ポピッカがゲルドーシュの肩をポンとたたき、場は笑い声に包まれた。
うん、いい傾向だ。皆、ここから無事に出られる事を前提に未来を語っている。もちろん全く事態を楽観視しているわけではないだろうが、気持ちが前向きになっているのは間違いない。
「有難うございました」
ザレドスが大剣を鑑定し終え、戦士の魂をゲルドーシュに返す。
「調べた結果、先ほどのような爆発を、あと2回分放てると分かりました。ただし、この剣は魔使具ではありませんから、マジックエッセンスの補給で回数を復活させる事は出来ませんし、テュラフィーさんでない限り新たに魔法を施す事も出来ません」
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