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その後に5
しおりを挟む「なら、我が儘も言うぞ?」
「…なんだ?」
「学園の長期の休みの時にも食いたい」
せめて後悔なく告白だけはしたいと思うほど好きな相手だったが、今はそれ以上に離せない。
「わかった。言ったろ? 甘やかしたいのは俺のほうだ。もっといくらでも言えよ?」
「うー…。このタラシが。俺以外に言うんじゃないぞ?」
「言わない。お前専用だ」
頬を染めた倉見はそれを隠すよう顔をそむけて弁当を食べる。
場所は人がそれほど来ないが、ベンチが置いてある場所で、そこに2人は並んで座って食べている。
日の光が注ぎ、暖かく穏やかな時間だ。
しかしそれを破壊する声が響く。
「あー! なんでこんなとこにいるんだよ!」
騒がしい声の主は、学園を荒らした元凶の転校生だ。
倉見と仲樹は深く眉間に皺を寄せた。百害ばかりの転校生に会いたくなくて出現の多い食堂を避けたのに。
「うるせえ。メシ食うのにお前の許可なんていらねえだろが」
本来、倉見は穏やかで沸点も高いのだが、この時は口の悪さ全開である。
「そんな言い方よくないぞイチカゼ!メシならみんなて食べたほうがいいに決まってるんだから、俺のとこに来いよな!」
倉見一風はさらに眉間に皺を寄せた。その倉見の眉間を仲樹は優しく撫でる。
「あ!なにしてんだよ!2人だけで駄目なんだぞ!」
「ちょっ!お前…」
2人のやりとりが羨ましく感じたのか、転校生は2人の間に無理矢理入り込んだ。そして2人の腕を掴んでご満悦だ。
「モトカ。駄目ですよ。会長に近づいては何をされるか分かりません」
「ええー?」
転校生、華谷元香の取り巻きの1人、副会長の久根が転校生を2人から引き離して腕の中に入れた。
その時引き離してほしかったので、2人は押した。
「そうだよお。会長は仕事もしないでセフレと遊んでるような人だからあ。モトカが汚されるよー」
「そういえばそうだったな!駄目だぞ!仕事ちゃんとしろよ!」
会計の戸場がありえないことを言い、転校生はまるっと信じている。
今さら取り巻き達がなんと言おうが倉見は気にしないが、恋人ができた身としては容認できる話ではない。
仲樹も不快な言葉だったので、倉見を立たせて移動することにした。転校生にどこかに行けと言っても無駄なので。
取り巻き達も2人の移動に異論はないのか、2人を止めることなく転校生が動かないようにしている。
仲樹は離れつつ振り返って、言葉を残す。
「…言っておく。倉見と俺は付き合うことになった。今後、恋人を侮辱するのは許さない」
その言葉には色ボケた取り巻き達も驚き、口を開ける。
そんな間抜けな顔を見ることなく2人は生徒会室に戻った。
弁当の残りを食べた後、仕事を再開する。無理はしないといっても仕事はたくさんあるのだ。
「…なあ」
「ん?」
倉見は手を止めて、仲樹に話しかける。呼ばれた仲樹は無駄に優しい声で答えた。
「………信じてくれるか?」
「お前の言葉ならなんでも信じるさ」
「………気のせいかもしれないんだが、転校生と一緒にいた取り巻き達に…、なんていうか、黒っぽいモヤみたいなもんが纏わってた」
「黒いモヤ?」
「ああ、そいつらの周りだけ」
「…見えてないな」
「う…、やっぱり気のせいか?」
「そうとも限らない。ありえないと思ってたことがありえてる。…もしかしたら、クラミは一度…、危なかっただろ?それで特殊なものが見えるようになったのかもしれない」
「お前がそんな漫画みたいなこと考えるとは思わなかった…」
「そこが気になるのか? 漫画も読んだことはあるぞ。素晴らしい作品もある」
「そうか! なら今度…。ああ、いかん、脱線した…。そうじゃなくて、ナカキの考えが正しいとしたらどういうことだ? あの黒いモヤは」
「そうだな。漫画というか、こういった話の定番からするに、死神が言った、何故お前があんなに弱ったのか、ということに関わる事なんじゃないか?」
「…ああ、そういうやつな。物語だと、読んでたり見てると絶対あの道具が怪しいだろって思うのに、探偵役の主人公はなかなか気づかないんだよな。…ん? だとするなら、解決が早すぎる。2時間もたない」
「いいんだ。現実だから。それにこれが正解だとしても、探偵役がいないから解決方法は思いつかない。現実は2時間というか、なかなか進まないものだ」
「むむ…」
オカルトな状況になったと理解しても、問題は複雑なままだ。
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