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その後に6
しおりを挟む「ほら、そんなに眉を寄せるな」
仲樹はまた倉見の眉間を撫でる。
「しかし…」
死神も言ったように、解決しなければ、また何が起こるか分からない。
「大丈夫だ。俺はもう倉見の側にいて離れない。そこまで不安に感じる必要なんてない。…できれば俺だけ見てればいいんだよ」
「ふっ。…真面目な委員長のほうが俺様みたいだな。…まあ、嬉しい。善処するよ」
問題解決しなくとも、倉見の心は軽くなる。
恋人同士として、2人は誰に遠慮することなく、いつも一緒にいて仲睦まじくしたい。
その為には憂うことはできるだけ解決しておいたほうがいい。
「お呼びですか?倉見様」
生徒会室に呼んだのは生徒会長親衛隊隊長だ。妖艶な美少女のような美少年だ。生徒会役員になってもおかしくないほどの美貌である。
「ああ、アキシロに言っておきたいことがある」
倉見は仲樹との関係を話そうとする。
「転校生のことですね。すぐに排除しますね」
「いやいや、ちげえよ」
笑顔で物騒なことを言った隊長の秋城。
「そうでしたか、僕としたことが先走ってしまい申し訳ありません。しかし、転校生を闇に消すことはいつでもできますので、命令してください」
秋城は何度も転校生退治を倉見に提案しているが、倉見はさすがにそこまではと止めている。
「…そういうことは簡単に口にするな…」
安易に使ってしまいがちな悪い言葉。それに深い意味がないと倉見にも分かるし説教くさいのもよくないと分かるが、今は耐えられない。
「倉見様?」
そんな弱々しい姿に秋城は不思議に思う。
「ほら、こっち来い」
「ん…」
隣にいた仲樹が倉見の頭を引き寄せて自分の胸に乗せる。
秋城は仲樹が部屋にいたことにも驚いていたが、顔に出さずにいた。しかし、今のやりとりには冷静さを失い。2人を交互に見る。
「…こういうことだ。アキシロ」
「それはつまり…」
「俺達は付き合うことになった。アキシロには認めてほしい」
仲樹が説明しようとしたが、倉見はこれは自分のことだと気分を払拭し、説明した。
「…それは、弱ってるところを美味しくいただかれた、とかじゃないですか?」
「違う。俺から告白したんだ。…後悔はしたくなくて」
「それは…。前から好きだったんですね。…気づきませんでした。私はクラミ様が幸せになるのでしたら異論はありません。親衛隊の者達も私がしっかり説明しておきますよ」
にっこりと微笑んだ秋城。秋城は倉見のことは好きだが、芸能人にたいしての憧れのようなものに近い。大好きで、恋人になってもいいかな、とは思うものの、そこまで本気ではない。
「ただ、この先、クラミ様を泣かせたなら容赦しませんが」
「そんなことには絶対ならない」
「ええ、ナカキ様は真面目な方ですものね。一応、信用しております」
「ああ。ありがとうアキシロ」
「お顔の色がよくなってきたのもナカキ様のおかげなのですね。しかし、あの転校生をなんとかしなければ学園はおさまりませんよ」
「それならリコールの準備をしている。それでなんとか一応元に戻るだろう」
「いえ、私はそれで事が終わるとは思いません。転校生の取り巻きは初日に落とした大物だけでなく、他の親衛隊持ちまで増やしています。簡単に沈静すると考えるのは早計です」
「…そうか。じっくり考えよう」
「はい」
秋城への話が終わり、2人は生徒会室で今後を考える。
リコールが終わるまで耐えていればいいと安易に考えていたかもしれない。
「やっぱり問題そのものをなんとかしないと問題が消えるはずもないか…」
「それはそうだと分かってたんだがな。…クラミと恋人になれて少し浮かれていたのかもしれない」
「…そういうのはあっさり言うな」
「そうか? 本当のことだぞ?」
「うう…。で、だ、俺は現状どうなってるのか、しっかりこの目で見て判断すべきだと思う。ほとんど部屋にこもって仕事してただけだからな」
「クラミだけでなく、俺も報告だけで現状を正しく理解しているとは言えないな。しかし、どうするんだ? 学校内や食堂は奴らがよくいるぞ」
仲樹の言う奴らとは勿論、転校生とその取り巻き達である。会えば必ず絡んでくるだろう。
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