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サーレック辺境伯(2)
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「おお、これは、これは、レトレイド伯爵令嬢。よく、ここまで来てくださった。わたしが、サーレック辺境伯だ!」
まるで今までのやりとりを誰も聞いていなかったかのように、2階から慌てて降りて来た人物は、そう言ってミリアに手を差し伸べた。目を何度か瞬いてから、握手を交わすミリア。
「サーレック辺境伯、お招きありがとうございます。ミリア・レトレイドと申します。お伺いするのが少々遅くなってしまって、大変申し訳ございませんでした」
「いやいや、左足の件は、うちの息子から聞いていた。それから、騎士団を退職した話についても、レトレイド公から話を聞いていてな。スヴェンをお勧めしたらどうかと思っていたら、君の方からヤーナックに来たと伺った」
そう言いながらサーレック辺境伯はにこにこと笑みを見せた。年のころは50歳頃。骨格はヴィルマー、ハルトムートとよく似ており、身長もほとんど同じ。だが、少しだけ痩せているようだ。それが年齢に応じてなのか、もともとそうだったのかはわからない。だが、見るからに「ここにいる2人の父親だ」と思える。
「さあ、では客間にご案内しよう。侍女長、茶を用意してくれるかな」
「はい」
そう言って、サーレック辺境伯は一階の別室へと向かう。花道を作るように並んでいた使用人たちは軽く頭をさげ、ミリアたちが辺境伯の後をついていくまでそこに並び続けるのだった。
話を聞けば、ミリアの父親であるレトレイド伯爵とサーレック辺境伯の仲は結構よかったようで、どうやら、通信を行う魔道具を使って双方で連絡をとりあっているのだと言う。それは、ただの友情ではなく、仕事に絡んでのことがほとんどらしい。
サーレック辺境伯は改めて、ヤーナックの町にミリアたちが警備隊を作ったことを絶賛し、同時に感謝の言葉を述べた。そして、ギスタークの討伐についても。それらすべては、既に封書で礼を言われていたし、ミリアは「どれも、そう大した話ではありませんので」と言って軽く流そうとする。
が、ハルトムートが「とはいえ、それらは我々の手が届かない場所で、かつ、届かなければいけない場所での出来事ですから」と添えれば、ヴィルマーも「同感だ。改めて、ありがとう」と頭を軽く下げた。
「さて、君にここに来てもらったのは他でもない。君に、お願いをしたいことがあってね」
「なんでしょうか?」
客間で、サーレック辺境伯、そして長男のハルトムートが並び、その向かいにミリアとヴィルマーが並ぶ。
「君も既にご存じだと思うのだが、このサーレック辺境伯領は広すぎる」
「そのようです」
「そこで、この領地に関しては、辺境伯は一人。だが、統治をする者を、2手に分けようと思っているのだ」
そう言って、辺境伯は地図をその場で広げた。それは、サーレック辺境伯領の地図。ミリアはそれを見て「予想よりも広い」と思う。わかっていたつもりではあったが、そこにあった地図は彼女の脳内にあった領内地図よりも詳細が記されており、細かな集落も書き入れられている。それらを見れば見るほど広いことを実感せざるを得ない。
「今、わたしの方から兵士を配置してない集落はここ、それからここ。ヤーナックのように、形ばかり配置をした場所はこことここ」
指をさしながら確認をするサーレック辺境伯。
「また、この森、それからこちらの森に住んでいた者たちは数を増やしているので、今後その者たちと接触もしないといけない」
「えっ、増えたのか」
「移民が住み着いたんだ。それから、今のところヴィルマーに回ってもらっている地域はこちら」
大きく指で線をたどる。そうやって見ると案外と少ないものの、国境沿いが多い。
「ここの町はまた後程町長と話し合いが必要なんだが……」
と、サーレック辺境伯は話を進める。ミリアは一体なぜ自分がこの話に加わっているのだろうか、と疑問に思ったが、まずは余さずに聞こうと努めた。
「そこで、この地域とこの地域に、統治者を一人ずつ置いて、この中央への報告義務を課そうと思っている。それぞれの中心になる町は、こことここ」
「なるほど」
「こちらの地域はクラウスに任せようと思っている」
ようやく、少しだけ話が見えて来た。ならば、ここにクラウスがいないことはおかしいのでは、と思うが、彼への打診の前にヴィルマーに話をつけたかったということだろうか。ちらりとミリアはヴィルマーを見たが、彼は眉根を寄せている。
「そして、こちらはヴィルマー、お前に任せたい」
「おいおい」
それは彼にとっても寝耳に水だったようで、困惑の声を漏らした。
「俺が? クラウスはともかく、俺はそういう力は」
「そして、ぶしつけな申し入れではあるのだが、君にヴィルマーの補佐をお願いしたいのだ。ミリア嬢」
そう言って、サーレック辺境伯はミリアを見た。静かなまなざしだ、と思う。
まるで今までのやりとりを誰も聞いていなかったかのように、2階から慌てて降りて来た人物は、そう言ってミリアに手を差し伸べた。目を何度か瞬いてから、握手を交わすミリア。
「サーレック辺境伯、お招きありがとうございます。ミリア・レトレイドと申します。お伺いするのが少々遅くなってしまって、大変申し訳ございませんでした」
「いやいや、左足の件は、うちの息子から聞いていた。それから、騎士団を退職した話についても、レトレイド公から話を聞いていてな。スヴェンをお勧めしたらどうかと思っていたら、君の方からヤーナックに来たと伺った」
そう言いながらサーレック辺境伯はにこにこと笑みを見せた。年のころは50歳頃。骨格はヴィルマー、ハルトムートとよく似ており、身長もほとんど同じ。だが、少しだけ痩せているようだ。それが年齢に応じてなのか、もともとそうだったのかはわからない。だが、見るからに「ここにいる2人の父親だ」と思える。
「さあ、では客間にご案内しよう。侍女長、茶を用意してくれるかな」
「はい」
そう言って、サーレック辺境伯は一階の別室へと向かう。花道を作るように並んでいた使用人たちは軽く頭をさげ、ミリアたちが辺境伯の後をついていくまでそこに並び続けるのだった。
話を聞けば、ミリアの父親であるレトレイド伯爵とサーレック辺境伯の仲は結構よかったようで、どうやら、通信を行う魔道具を使って双方で連絡をとりあっているのだと言う。それは、ただの友情ではなく、仕事に絡んでのことがほとんどらしい。
サーレック辺境伯は改めて、ヤーナックの町にミリアたちが警備隊を作ったことを絶賛し、同時に感謝の言葉を述べた。そして、ギスタークの討伐についても。それらすべては、既に封書で礼を言われていたし、ミリアは「どれも、そう大した話ではありませんので」と言って軽く流そうとする。
が、ハルトムートが「とはいえ、それらは我々の手が届かない場所で、かつ、届かなければいけない場所での出来事ですから」と添えれば、ヴィルマーも「同感だ。改めて、ありがとう」と頭を軽く下げた。
「さて、君にここに来てもらったのは他でもない。君に、お願いをしたいことがあってね」
「なんでしょうか?」
客間で、サーレック辺境伯、そして長男のハルトムートが並び、その向かいにミリアとヴィルマーが並ぶ。
「君も既にご存じだと思うのだが、このサーレック辺境伯領は広すぎる」
「そのようです」
「そこで、この領地に関しては、辺境伯は一人。だが、統治をする者を、2手に分けようと思っているのだ」
そう言って、辺境伯は地図をその場で広げた。それは、サーレック辺境伯領の地図。ミリアはそれを見て「予想よりも広い」と思う。わかっていたつもりではあったが、そこにあった地図は彼女の脳内にあった領内地図よりも詳細が記されており、細かな集落も書き入れられている。それらを見れば見るほど広いことを実感せざるを得ない。
「今、わたしの方から兵士を配置してない集落はここ、それからここ。ヤーナックのように、形ばかり配置をした場所はこことここ」
指をさしながら確認をするサーレック辺境伯。
「また、この森、それからこちらの森に住んでいた者たちは数を増やしているので、今後その者たちと接触もしないといけない」
「えっ、増えたのか」
「移民が住み着いたんだ。それから、今のところヴィルマーに回ってもらっている地域はこちら」
大きく指で線をたどる。そうやって見ると案外と少ないものの、国境沿いが多い。
「ここの町はまた後程町長と話し合いが必要なんだが……」
と、サーレック辺境伯は話を進める。ミリアは一体なぜ自分がこの話に加わっているのだろうか、と疑問に思ったが、まずは余さずに聞こうと努めた。
「そこで、この地域とこの地域に、統治者を一人ずつ置いて、この中央への報告義務を課そうと思っている。それぞれの中心になる町は、こことここ」
「なるほど」
「こちらの地域はクラウスに任せようと思っている」
ようやく、少しだけ話が見えて来た。ならば、ここにクラウスがいないことはおかしいのでは、と思うが、彼への打診の前にヴィルマーに話をつけたかったということだろうか。ちらりとミリアはヴィルマーを見たが、彼は眉根を寄せている。
「そして、こちらはヴィルマー、お前に任せたい」
「おいおい」
それは彼にとっても寝耳に水だったようで、困惑の声を漏らした。
「俺が? クラウスはともかく、俺はそういう力は」
「そして、ぶしつけな申し入れではあるのだが、君にヴィルマーの補佐をお願いしたいのだ。ミリア嬢」
そう言って、サーレック辺境伯はミリアを見た。静かなまなざしだ、と思う。
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