45 / 52
サーレック辺境伯邸へ向かう(2)
しおりを挟む
「ヴィルマーさんはおいくつの頃から、傭兵を率いて回っていたのですか」
木陰に立って、尋ねるミリア。同じく、木陰で風に吹かれながらヴィルマーは答える。
「……17の頃、かな。最初は、俺が率いてもらっていた。まあまあ年上の騎士が、今の俺の役割を担ってくれていてな。そこに、俺はついて回っていた」
「そうなのですね。では、結構な年数今のように? 今さらで失礼ですが、今はおいくつですか」
「25歳だ。7年間。そのうち、やつらの上に立って今みたいに率いては4年間……ああ、君の年齢すら、俺も聞いていなかった」
今さらながら、互いの年齢もわからずプロポーズをして、そしてプロポーズを受けてしまったのか、とミリアもヴィルマーも笑う。
「わたしは22です。来月23歳になります」
「来月!? おいおい、まじか、良かった、聞いておいて……」
「ヴィルマーさんはいつお生まれに?」
「俺は三か月後だな。そうか。今から君の誕生日のことを考えなくちゃな」
3歳の年の差か、と思う反面、ミリアには少しばかり気がかりなことがあった。
(過去のことは探らない。気にしない、とは思っていますが、ヴィルマーさんも婚約者がいてもおかしくない年齢で家を出たのですね……)
それについては、自分からは何も聞かない。ミリアはそう思うものの、胸の奥にひっかかりは感じ取っていた。
街道の途中にある、あまり大きくもない宿にその日は泊まることにした。ヴィルマーは「俺が言うのもなんだが、こんな宿で申し訳ない」と言ったが、ミリアにとっては屋根がある場所で寝泊まり出来るなら、それはかなり極上だ。そう答えると、ヴィルマーは笑って「そんな伯爵令嬢がいてたまるか」と言った。勿論それは冗談だし、彼女もよくわかっている。
慣れない相手との2人旅で、互いに少し疲労がかさんでいるだろうということで、その晩は早く眠ることにした。それぞれ一室を借りたものの、隣同士。そして、壁は薄いどころか、穴まで開いていることがわかってミリアは苦笑い。
「あまり見ないでいただけると助かります」
「見ないでいただけると、と言うより、穴をふさぐ方向にしないか?」
そう言ってヴィルマーは開いている穴の前に、自分の部屋にあるおんぼろな椅子を運び、そこに自分のジャケットをかけた。どうやら、彼のベッドはもう片方の壁側に置いてあるらしい。一方のミリアの部屋は、穴が開いている壁側にベッドが置いてあった。
薄い布団、薄い毛布。時期的にそれでも問題はないが、久しぶりの少し硬いベッドに、ミリアは「眠いのに寝づらいな」と少しだけ苦労をした。
「なあ、まだ起きているか?」
すると、隣の部屋からの声。「はい」と返事をすれば「少し話さないか」と壁越しに誘いが。なんだか嬉しい、とミリアは「いいですね」と答えた。布越しになってはいるものの穴が開いているため、案外とはっきり声が聞こえる。
がたん、と音が響く。彼はベッドから降りて椅子に座ったようだった。ミリアは起きずに、ベッドに横たわったまま会話を続けた。
「あのさ。またその話かって思われるかもしれないけど」
「なんでしょう」
「先日、俺は君にプロポーズをしただろう?」
「はい」
ミリアは少し笑いそうになる。実際に「またその話か」と思ったからだ。ヴィルマーは珍しく歯切れが悪い。
「その、恋人になって欲しいわけでも、婚約者になって欲しいわけでもない……いや、なって欲しいといえば欲しいんだが、それらをすっ飛ばしてしまっているというか……」
それへの答えに、ミリアは簡潔に「そうですね」と答えた。すると、ヴィルマーは「ははっ」と笑い声をあげる。
「俺もさ、感情的な人間なので、君の立場を考えていないプロポーズではあった」
「大丈夫ですよ」
「大丈夫かどうかは、そのう、話し合いをしてみないことにはわからない……よな?」
彼は、きっとレトレイド伯爵令嬢を娶るということは……と考えたのだろうとミリアは思う。それはそうだ。だが、レトレイド伯爵家を継ぐのは自分ではないし、何も問題はない。
とはいえ、ヴィルマーもサーレック辺境伯の次男だ。彼もまたサーレック辺境伯の名は継がないのだろう。
「ううん、君のような人に、この先一体どうするのか、どうなるのかもはっきり決まっていない俺がプロポーズをしたのは、いささか申し訳ない。が、後悔はしていないんだ」
「ふふ、後悔していると言われたら、泣くところでした」
「!」
「あなたはわたしを泣かせるのがお上手ですね」
「……今すぐ、君を抱きしめにそちらに行っても?」
それへはミリアは笑って、あっさりと拒否の言葉を返した。それへ、ヴィルマーが「ううん、駄目かぁ、手厳しいな……」と唸りつつも「これがうち(サーレック辺境伯邸)なら、問答無用でドアをノックしただろうが」と言って、ミリアを笑わせた。
「ああ、少し、眠くなってきました」
「うん。眠ると良い。悪かったな」
「いいえ。おやすみなさい」
「おやすみ」
ミリアはうとうとと瞳を閉じた。以前、騎士団長をしていた頃は、もっと気を張り詰めていて、こんな風に眠ることなんてありえなかった。深い眠りにつく手前に、ふわりとそんなことを思い描く。
(ああ、わたし……)
きっと、これも伝わっていない。
こんな風に眠ってしまうなんて、自分はヴィルマーに存分に甘えているではないか。今日は、馬に乗って心地よく旅をした。慣れない相手との旅で疲れているかもしれない……そんな気遣いは本当は必要はない。だって、何も負担ではなかった。まるで、以前からそうやって共にいたかのように、当たり前のように馬を走らせて……。
(だけど)
少しだけちりりと感じる心の痛み。それは、今日感じたものだ。
(こんな風に、相手の過去が気になるなんて。恥ずべきことではないのかしら……)
ミリアはすうっと思考を閉ざす寸前、そんなことを考えたのだった。勿論、それを考えたことすら、目覚める頃には忘れていたが。
木陰に立って、尋ねるミリア。同じく、木陰で風に吹かれながらヴィルマーは答える。
「……17の頃、かな。最初は、俺が率いてもらっていた。まあまあ年上の騎士が、今の俺の役割を担ってくれていてな。そこに、俺はついて回っていた」
「そうなのですね。では、結構な年数今のように? 今さらで失礼ですが、今はおいくつですか」
「25歳だ。7年間。そのうち、やつらの上に立って今みたいに率いては4年間……ああ、君の年齢すら、俺も聞いていなかった」
今さらながら、互いの年齢もわからずプロポーズをして、そしてプロポーズを受けてしまったのか、とミリアもヴィルマーも笑う。
「わたしは22です。来月23歳になります」
「来月!? おいおい、まじか、良かった、聞いておいて……」
「ヴィルマーさんはいつお生まれに?」
「俺は三か月後だな。そうか。今から君の誕生日のことを考えなくちゃな」
3歳の年の差か、と思う反面、ミリアには少しばかり気がかりなことがあった。
(過去のことは探らない。気にしない、とは思っていますが、ヴィルマーさんも婚約者がいてもおかしくない年齢で家を出たのですね……)
それについては、自分からは何も聞かない。ミリアはそう思うものの、胸の奥にひっかかりは感じ取っていた。
街道の途中にある、あまり大きくもない宿にその日は泊まることにした。ヴィルマーは「俺が言うのもなんだが、こんな宿で申し訳ない」と言ったが、ミリアにとっては屋根がある場所で寝泊まり出来るなら、それはかなり極上だ。そう答えると、ヴィルマーは笑って「そんな伯爵令嬢がいてたまるか」と言った。勿論それは冗談だし、彼女もよくわかっている。
慣れない相手との2人旅で、互いに少し疲労がかさんでいるだろうということで、その晩は早く眠ることにした。それぞれ一室を借りたものの、隣同士。そして、壁は薄いどころか、穴まで開いていることがわかってミリアは苦笑い。
「あまり見ないでいただけると助かります」
「見ないでいただけると、と言うより、穴をふさぐ方向にしないか?」
そう言ってヴィルマーは開いている穴の前に、自分の部屋にあるおんぼろな椅子を運び、そこに自分のジャケットをかけた。どうやら、彼のベッドはもう片方の壁側に置いてあるらしい。一方のミリアの部屋は、穴が開いている壁側にベッドが置いてあった。
薄い布団、薄い毛布。時期的にそれでも問題はないが、久しぶりの少し硬いベッドに、ミリアは「眠いのに寝づらいな」と少しだけ苦労をした。
「なあ、まだ起きているか?」
すると、隣の部屋からの声。「はい」と返事をすれば「少し話さないか」と壁越しに誘いが。なんだか嬉しい、とミリアは「いいですね」と答えた。布越しになってはいるものの穴が開いているため、案外とはっきり声が聞こえる。
がたん、と音が響く。彼はベッドから降りて椅子に座ったようだった。ミリアは起きずに、ベッドに横たわったまま会話を続けた。
「あのさ。またその話かって思われるかもしれないけど」
「なんでしょう」
「先日、俺は君にプロポーズをしただろう?」
「はい」
ミリアは少し笑いそうになる。実際に「またその話か」と思ったからだ。ヴィルマーは珍しく歯切れが悪い。
「その、恋人になって欲しいわけでも、婚約者になって欲しいわけでもない……いや、なって欲しいといえば欲しいんだが、それらをすっ飛ばしてしまっているというか……」
それへの答えに、ミリアは簡潔に「そうですね」と答えた。すると、ヴィルマーは「ははっ」と笑い声をあげる。
「俺もさ、感情的な人間なので、君の立場を考えていないプロポーズではあった」
「大丈夫ですよ」
「大丈夫かどうかは、そのう、話し合いをしてみないことにはわからない……よな?」
彼は、きっとレトレイド伯爵令嬢を娶るということは……と考えたのだろうとミリアは思う。それはそうだ。だが、レトレイド伯爵家を継ぐのは自分ではないし、何も問題はない。
とはいえ、ヴィルマーもサーレック辺境伯の次男だ。彼もまたサーレック辺境伯の名は継がないのだろう。
「ううん、君のような人に、この先一体どうするのか、どうなるのかもはっきり決まっていない俺がプロポーズをしたのは、いささか申し訳ない。が、後悔はしていないんだ」
「ふふ、後悔していると言われたら、泣くところでした」
「!」
「あなたはわたしを泣かせるのがお上手ですね」
「……今すぐ、君を抱きしめにそちらに行っても?」
それへはミリアは笑って、あっさりと拒否の言葉を返した。それへ、ヴィルマーが「ううん、駄目かぁ、手厳しいな……」と唸りつつも「これがうち(サーレック辺境伯邸)なら、問答無用でドアをノックしただろうが」と言って、ミリアを笑わせた。
「ああ、少し、眠くなってきました」
「うん。眠ると良い。悪かったな」
「いいえ。おやすみなさい」
「おやすみ」
ミリアはうとうとと瞳を閉じた。以前、騎士団長をしていた頃は、もっと気を張り詰めていて、こんな風に眠ることなんてありえなかった。深い眠りにつく手前に、ふわりとそんなことを思い描く。
(ああ、わたし……)
きっと、これも伝わっていない。
こんな風に眠ってしまうなんて、自分はヴィルマーに存分に甘えているではないか。今日は、馬に乗って心地よく旅をした。慣れない相手との旅で疲れているかもしれない……そんな気遣いは本当は必要はない。だって、何も負担ではなかった。まるで、以前からそうやって共にいたかのように、当たり前のように馬を走らせて……。
(だけど)
少しだけちりりと感じる心の痛み。それは、今日感じたものだ。
(こんな風に、相手の過去が気になるなんて。恥ずべきことではないのかしら……)
ミリアはすうっと思考を閉ざす寸前、そんなことを考えたのだった。勿論、それを考えたことすら、目覚める頃には忘れていたが。
59
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説
【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜
鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。
誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。
幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。
ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。
一人の客人をもてなしたのだ。
その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。
【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。
彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。
そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。
そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。
やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。
ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、
「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。
学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。
☆第2部完結しました☆
【完結】バッドエンドの落ちこぼれ令嬢、巻き戻りの人生は好きにさせて貰います!
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢エレノアは、容姿端麗で優秀な兄姉とは違い、容姿は平凡、
ピアノや刺繍も苦手で、得意な事といえば庭仕事だけ。
家族や周囲からは「出来損ない」と言われてきた。
十九歳を迎えたエレノアは、侯爵家の跡取り子息ネイサンと婚約した。
次期侯爵夫人という事で、厳しい教育を受ける事になったが、
両親の為、ネイサンの為にと、エレノアは自分を殺し耐えてきた。
だが、結婚式の日、ネイサンの浮気を目撃してしまう。
愚行を侯爵に知られたくないネイサンにより、エレノアは階段から突き落とされた___
『死んだ』と思ったエレノアだったが、目を覚ますと、十九歳の誕生日に戻っていた。
与えられたチャンス、次こそは自分らしく生きる!と誓うエレノアに、曾祖母の遺言が届く。
遺言に従い、オースグリーン館を相続したエレノアを、隣人は神・精霊と思っているらしく…??
異世界恋愛☆ ※元さやではありません。《完結しました》
偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~
日之影ソラ
恋愛
【小説家になろうにて先行公開中!】
https://ncode.syosetu.com/n9071il/
異世界で村娘に転生したイリアスには、聖女の力が宿っていた。本来スローレン公爵家に生まれるはずの聖女が一般人から生まれた事実を隠すべく、八歳の頃にスローレン公爵家に養子として迎え入れられるイリアス。
貴族としての振る舞い方や作法、聖女の在り方をみっちり教育され、家の人間や王族から厳しい目で見られ大変な日々を送る。そんなある日、事件は起こった。
イリアスと見た目はそっくり、聖女の力?も使えるもう一人のイリアスが現れ、自分こそが本物のイリアスだと主張し、婚約者の王子ですら彼女の味方をする。
このままじゃ聖女の地位が奪われてしまう。何とかして取り戻そう……ん?
別にいっか!
聖女じゃないなら自由に生きさせてもらいますね!
重圧、パワハラから解放された聖女の第二の人生がスタートする!!
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
身代わりで嫁いだお相手は女嫌いの商人貴族でした
今泉 香耶
恋愛
全37話。アメリア・ナーシェ・ヒルシュは子爵令嬢で、双子の妹だ。
ヒルシュ家には「双子が生まれれば片方は殺す」という習わしがあったもの、占い師の「その子はのちに金になるので生かしておいた方が良い」というアドバイスにより、離れに軟禁状態で飼い殺しにされていた。
子爵家であるが血統は国で唯一無二の歴史を誇るヒルシュ家。しかし、そのヒルシュ家の財力は衰えていた。
そんな折、姉のカミラがバルツァー侯爵であるアウグストから求婚をされ、身代わりに彼女が差し出される。
アウグストは商才に長けていたが先代の愛妾の息子で、人々にはその生まれを陰で笑われていた。
財力があるがゆえに近寄って来る女たちも多く、すっかり女嫌いになった彼は、金で「貴族の血統」を買おうと、ヒルシュ家に婚姻を迫ったのだ。
そんな彼の元に、カミラの代わりに差し出されたアメリアは……。
※こちら、ベリーズカフェ様にも投稿しております。
売られていた奴隷は裏切られた元婚約者でした。
狼狼3
恋愛
私は先日婚約者に裏切られた。昔の頃から婚約者だった彼とは、心が通じ合っていると思っていたのに、裏切られた私はもの凄いショックを受けた。
「婚約者様のことでショックをお受けしているのなら、裏切ったりしない奴隷を買ってみては如何ですか?」
執事の一言で、気分転換も兼ねて奴隷が売っている市場に行ってみることに。すると、そこに居たのはーー
「マルクス?」
昔の頃からよく一緒に居た、元婚約者でした。
転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました
みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。
日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。
引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。
そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。
香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……
「君を愛さない」と言った公爵が好きなのは騎士団長らしいのですが、それは男装した私です。何故気づかない。
束原ミヤコ
恋愛
伯爵令嬢エニードは両親から告げられる。
クラウス公爵が結婚相手を探している、すでに申し込み済みだと。
二十歳になるまで結婚など考えていなかったエニードは、両親の希望でクラウス公爵に嫁ぐことになる。
けれど、クラウスは言う。「君を愛することはできない」と。
何故ならば、クラウスは騎士団長セツカに惚れているのだという。
クラウスが男性だと信じ込んでいる騎士団長セツカとは、エニードのことである。
確かに邪魔だから胸は潰して軍服を着ているが、顔も声も同じだというのに、何故気づかない――。
でも、男だと思って道ならぬ恋に身を焦がしているクラウスが、可哀想だからとても言えない。
とりあえず気づくのを待とう。うん。それがいい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる