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回復魔法をちょっとかけてみたら……
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辺境のクマさんは困ったような顔をしている。
「こ、この傷ですか……」
「えぇ、回復魔法でならすぐに消えると思うのですが……」
レオナード殿下が代わりに答えた。
「我が国には回復魔法を使える魔導士がそれほどたくさんいるわけではないのです。それゆえに高位貴族や王族以外の命に関わること以外ではあまり使われないのです」
えこひいきなわけね。
クマさんも口を開いた。
「回復魔法はかなりの魔力を消失してしまいます。こんな顔の傷ごときに使うわけにはいきません。それにここまで大きな傷は回復魔法では治せないと言われました。」
はぁ? 治せない? 回復魔法は欠損部分を復元できるくらいの魔法なのよ。傷くらいちょちょいのちょいよ。
辺境伯はそう言うが顔の傷って大事よね。それにこのクマさんたいがい満身創痍なのよ。
我慢強いのかなんだか知らないけど身体ボロボロなのに戦うって言うの? 今の日本人にはいないタイプだわね。
私は治すことにした。嫌がられても絶対治してやる。
私は辺境伯閣下の前に出た。
「勝手に診させていただきました。閣下はお顔の傷以外にも身体に古傷がたくさんあるように感じます。肩から背中にかけての刀傷のせいで左肩が上がりにくかったり、左手の握力が弱かったり、痺れたり、いまでも天候などであちこち痛みが出たり、首も辛かったりしませんか?」
私の言葉に辺境伯は驚いているようだ。
「は、はい」
「そうなのか、ジーク? 私は全く気がつかなかった」
それを聞いた殿下は辛そうな顔をしている。
鑑定魔法で体調や身体の悪い部分はだいたいわかる。だから医者になろうと思った。お金がない人でも検査や手術をしなくても私の鑑定魔法と回復魔法でこっそり治せるからだ。
「では勝手に治しますね。私は回復魔法を使ったくらいで魔力がなくなったりしませんし、身体も辛くなりませんから」
「いや、しかし、私を治すよりもっと高貴な方を……」
何言ってるんだ? 辺境伯は高貴だろう。
「あなたが完全でいてくれないと私やこの国のみんなが困ります。あなたはこれからもこの国の辺境の地を死守していくのでしょう? あなたが倒れたら王都は大変なことになります」
私の言葉に殿下はハッとしたようだ。
「そうだよジーク。お前が元気で辺境の地を守ってくれているから私達は安心していられるんだ。お前にもしものことがあったら我が国はどうなる」
殿下は辺境伯閣下を信頼して頼りにしているんだな。
「アイリ殿、ジークを頼む。アイリ殿が大丈夫なら回復魔法でジークを元気にしてやってほしい」
殿下は私に頭を下げた。
「でも……しかし……」
辺境伯はまだグダグダ言っている。
「主人が頭を下げているのにまだグダグダ言うんですか、もう諦めて腹を括りなさい。私はあなたを治します!」
私が大きな声で怒鳴ると辺境伯は大人しくなった。
「は、はい。よろしくお願いします」
「任せて」
私は辺境伯の身体の傷がなくなり、身体の調子が良くなるように祈る。
すると私から光とキラキラした光の粒子が湧き出てきた。それが辺境伯の身体をすっぽりと包み込む。
皆、ポカンとした顔でそれを見ているようだ。
光は身体が良くなれば勝手に消える。
しばらくキラキラしていたが光が消えるとともに顔の傷も消えていた。
「ジーク、傷が、傷がないぞ! 背中は?背中はどうだ?」
殿下が顔の傷が無くなったことに気がついたようだ。辺境伯に近づき上着をむしり取りシャツを剥がした。
「無い! 無いぞ。ジーク、背中の傷も無い。それに他の小さい傷も消えている。凄い! アイリ殿は大丈夫か?」
私の方を心配そうに見る。
「私は大丈夫ですわ。元気そのものです。これくらいの回復魔法、痛くも痒くもありませんわ」
ふふふと笑ってみた。
辺境伯は……、あれ? 号泣してる。
「聖女殿、有難うございます。あなた様のおかげで私は長年苦しんでいた痛みや痺れから解放されました。嘘のように身体が軽い。腕もこのように軽々上がります。これなら魔獣や魔物、いやドラゴンや魔王も討ち果たせそうです」
あらあら大袈裟ですこと。でも楽になったのなら良かったわ。
辺境伯は急に私の前に来て足元に跪いた。そして剣を差し出す。
「聖女殿、私、ジークヴァルト・フランケンハイムは騎士の誓いをあなたに捧げます。私は一生あなたの騎士として、あなたを守り、あなたに尽くし、あなたに命を捧げます。この剣をお受け取り下さい」
え~! まさかの騎士の誓い。
いや、困るわ。重い重い。こんな事くらいでそんな大袈裟な。
しかし、騎士の誓いなんて見るのは前世以来ね。やっぱり受け取らなきゃダメよね。受け取らないと辺境伯も困るわね。
殿下の顔を見ると「受け取れ、受け取ってくれ」と懇願している。
トゥルンヴァルト公爵も令嬢も目で受け取ってくれと訴えている。
受け取るしか無いようだ。こんな大きなきクマさんの命を預かっちゃうの。参ったわね。
私は剣を受け取り、辺境伯の肩に乗せた。そしてその刃を辺境伯に向ける。辺境伯はその刃に口付ける。
「我、汝を我の騎士に任命する。汝の騎士の誓いを受け取ります」
私はそう言って剣を鞘におさめ、辺境伯に渡す。
ひょんなことで専属騎士を得てしまった。
*騎士の誓いは作者の世界の騎士の誓いということで、本来の騎士の誓いとはかなり違うと思います。
ファンタジーの世界のお話ということでご理解下さいませ。
「こ、この傷ですか……」
「えぇ、回復魔法でならすぐに消えると思うのですが……」
レオナード殿下が代わりに答えた。
「我が国には回復魔法を使える魔導士がそれほどたくさんいるわけではないのです。それゆえに高位貴族や王族以外の命に関わること以外ではあまり使われないのです」
えこひいきなわけね。
クマさんも口を開いた。
「回復魔法はかなりの魔力を消失してしまいます。こんな顔の傷ごときに使うわけにはいきません。それにここまで大きな傷は回復魔法では治せないと言われました。」
はぁ? 治せない? 回復魔法は欠損部分を復元できるくらいの魔法なのよ。傷くらいちょちょいのちょいよ。
辺境伯はそう言うが顔の傷って大事よね。それにこのクマさんたいがい満身創痍なのよ。
我慢強いのかなんだか知らないけど身体ボロボロなのに戦うって言うの? 今の日本人にはいないタイプだわね。
私は治すことにした。嫌がられても絶対治してやる。
私は辺境伯閣下の前に出た。
「勝手に診させていただきました。閣下はお顔の傷以外にも身体に古傷がたくさんあるように感じます。肩から背中にかけての刀傷のせいで左肩が上がりにくかったり、左手の握力が弱かったり、痺れたり、いまでも天候などであちこち痛みが出たり、首も辛かったりしませんか?」
私の言葉に辺境伯は驚いているようだ。
「は、はい」
「そうなのか、ジーク? 私は全く気がつかなかった」
それを聞いた殿下は辛そうな顔をしている。
鑑定魔法で体調や身体の悪い部分はだいたいわかる。だから医者になろうと思った。お金がない人でも検査や手術をしなくても私の鑑定魔法と回復魔法でこっそり治せるからだ。
「では勝手に治しますね。私は回復魔法を使ったくらいで魔力がなくなったりしませんし、身体も辛くなりませんから」
「いや、しかし、私を治すよりもっと高貴な方を……」
何言ってるんだ? 辺境伯は高貴だろう。
「あなたが完全でいてくれないと私やこの国のみんなが困ります。あなたはこれからもこの国の辺境の地を死守していくのでしょう? あなたが倒れたら王都は大変なことになります」
私の言葉に殿下はハッとしたようだ。
「そうだよジーク。お前が元気で辺境の地を守ってくれているから私達は安心していられるんだ。お前にもしものことがあったら我が国はどうなる」
殿下は辺境伯閣下を信頼して頼りにしているんだな。
「アイリ殿、ジークを頼む。アイリ殿が大丈夫なら回復魔法でジークを元気にしてやってほしい」
殿下は私に頭を下げた。
「でも……しかし……」
辺境伯はまだグダグダ言っている。
「主人が頭を下げているのにまだグダグダ言うんですか、もう諦めて腹を括りなさい。私はあなたを治します!」
私が大きな声で怒鳴ると辺境伯は大人しくなった。
「は、はい。よろしくお願いします」
「任せて」
私は辺境伯の身体の傷がなくなり、身体の調子が良くなるように祈る。
すると私から光とキラキラした光の粒子が湧き出てきた。それが辺境伯の身体をすっぽりと包み込む。
皆、ポカンとした顔でそれを見ているようだ。
光は身体が良くなれば勝手に消える。
しばらくキラキラしていたが光が消えるとともに顔の傷も消えていた。
「ジーク、傷が、傷がないぞ! 背中は?背中はどうだ?」
殿下が顔の傷が無くなったことに気がついたようだ。辺境伯に近づき上着をむしり取りシャツを剥がした。
「無い! 無いぞ。ジーク、背中の傷も無い。それに他の小さい傷も消えている。凄い! アイリ殿は大丈夫か?」
私の方を心配そうに見る。
「私は大丈夫ですわ。元気そのものです。これくらいの回復魔法、痛くも痒くもありませんわ」
ふふふと笑ってみた。
辺境伯は……、あれ? 号泣してる。
「聖女殿、有難うございます。あなた様のおかげで私は長年苦しんでいた痛みや痺れから解放されました。嘘のように身体が軽い。腕もこのように軽々上がります。これなら魔獣や魔物、いやドラゴンや魔王も討ち果たせそうです」
あらあら大袈裟ですこと。でも楽になったのなら良かったわ。
辺境伯は急に私の前に来て足元に跪いた。そして剣を差し出す。
「聖女殿、私、ジークヴァルト・フランケンハイムは騎士の誓いをあなたに捧げます。私は一生あなたの騎士として、あなたを守り、あなたに尽くし、あなたに命を捧げます。この剣をお受け取り下さい」
え~! まさかの騎士の誓い。
いや、困るわ。重い重い。こんな事くらいでそんな大袈裟な。
しかし、騎士の誓いなんて見るのは前世以来ね。やっぱり受け取らなきゃダメよね。受け取らないと辺境伯も困るわね。
殿下の顔を見ると「受け取れ、受け取ってくれ」と懇願している。
トゥルンヴァルト公爵も令嬢も目で受け取ってくれと訴えている。
受け取るしか無いようだ。こんな大きなきクマさんの命を預かっちゃうの。参ったわね。
私は剣を受け取り、辺境伯の肩に乗せた。そしてその刃を辺境伯に向ける。辺境伯はその刃に口付ける。
「我、汝を我の騎士に任命する。汝の騎士の誓いを受け取ります」
私はそう言って剣を鞘におさめ、辺境伯に渡す。
ひょんなことで専属騎士を得てしまった。
*騎士の誓いは作者の世界の騎士の誓いということで、本来の騎士の誓いとはかなり違うと思います。
ファンタジーの世界のお話ということでご理解下さいませ。
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