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魔法
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辺境のクマさんは私の足元で跪いたままだ。
困ったなぁ。
ふと殿下を見ると必死で笑いを堪えている。
公爵も令嬢も同じだ。
私は殿下を睨んだ。
「殿下、笑っている場合ですか?」
殿下は堪えきれず声を出して笑い始めた。
「す、すまない。ジークがあまりにも堅いので面白くなってしまったんだ。アイリ殿に長年の傷を治してもらい、身体だけではなく、心まで治ったのだろう。それにしてもアイリ殿はやっぱり凄い。本物の聖女は桁外れだ」
殿下の目はキラキラしている。
「本当だ。私は何度が魔導士が回復魔法をかけているところを見たことがあるが、全くちがう。これを回復魔法というならあれはなんだろうと思うほどだ」
公爵も笑いながら驚いているようだ。
「普通の回復魔法ですわ。回復魔法は死人を生きかえらすのと心の病以外はなんでも治せます」
私の言葉に皆目を丸くしている。
辺境のクマさんがおもむろに言葉を発した。
「主人殿、四肢が欠損した者を元に戻す事は可能でしょうか」
「主人殿はやめてくれないですか。いくら騎士の誓いを受け取っても私は主人殿って呼ばれるのは嫌ですわ。アイリでよろしいのですよ」
「し、しかし……」
「では、命令です。私をアイリと呼びなさい」
クマさんは眉間に皺を寄せている。傷が無くなったからイケメン度が増したわね。
「承知いたしました。アイリ殿。では私のことはジークとお呼びください」
「ただのアイリでよろしいのに。では、あなたのことはジークと呼びますわね」
私の脳内ではジーク=ジークマになっている。そうそう四肢欠損だったわね。
「四肢欠損は状態にもよりますが、本人が生きるエネルギーを持っていれば再生できますわ。回復魔法はサポート魔法です。本人にエネルギーがなければ発動できませんの。だから亡くなった人を生きかえらす事は無理なのです」
みんな私の話に頷いている。
「アイリ殿、お願いします。ブランケンハイム領に来て、魔獣にやられ大怪我をしたり、四肢を欠損し騎士をやめなくてはならなくなった者達を助けて下さい」
ジークマ……もとい、ジークヴァルトの目は真剣そのものだ。
「本人が希望すれば」
「ありがとうございます」
ジークヴァルトはまた泣いている。泣き虫クマさんだな。
そういえば、この国に転移魔法はあるのだろうか?
「殿下、この世界には転移魔法はありますの?」
殿下はまた驚いた顔をしている。
「転移魔法か? あることはあるが、あまり使える者がいない」
中途半端なのね。召喚魔法ができるくせに回復魔法や転移魔法があんまりできないなんて、鍛えたらできると思うのだけれど。
私は前世のアイリーン時代、元々魔力は強く、全属性使えたのだが、王太子妃教育の一環で馬鹿王太子を支えるためにあの国で最強の魔導士からどんな魔法もつかえるように鍛えられた。
それに日本に転生した時に転生チートというやつだろうか? 魔法の力が倍増されていた。しかし現代の日本では魔法はそれほど必要ではないし、隠れて使わなければいけなかったので、回復魔法と転移魔法くらいしか使わなかった。
それも今から考えれば、初めからこの世界に召喚されるのありきで日本に転生させられたような気がする。
こっそり鑑定魔法で鑑定して、殿下やジークヴァルト達が魔力が強いのはわかっている。回復魔法は光属性を持たないと使えないが、転移魔法はある程度の魔力があれば訓練次第で誰でも使えるはずだ。私が連れて行ってもいいがしょっちゅうだとめんどくさい。ここにいるみんなあたりが使えるようになればいいのに。
私は提案してみた。
困ったなぁ。
ふと殿下を見ると必死で笑いを堪えている。
公爵も令嬢も同じだ。
私は殿下を睨んだ。
「殿下、笑っている場合ですか?」
殿下は堪えきれず声を出して笑い始めた。
「す、すまない。ジークがあまりにも堅いので面白くなってしまったんだ。アイリ殿に長年の傷を治してもらい、身体だけではなく、心まで治ったのだろう。それにしてもアイリ殿はやっぱり凄い。本物の聖女は桁外れだ」
殿下の目はキラキラしている。
「本当だ。私は何度が魔導士が回復魔法をかけているところを見たことがあるが、全くちがう。これを回復魔法というならあれはなんだろうと思うほどだ」
公爵も笑いながら驚いているようだ。
「普通の回復魔法ですわ。回復魔法は死人を生きかえらすのと心の病以外はなんでも治せます」
私の言葉に皆目を丸くしている。
辺境のクマさんがおもむろに言葉を発した。
「主人殿、四肢が欠損した者を元に戻す事は可能でしょうか」
「主人殿はやめてくれないですか。いくら騎士の誓いを受け取っても私は主人殿って呼ばれるのは嫌ですわ。アイリでよろしいのですよ」
「し、しかし……」
「では、命令です。私をアイリと呼びなさい」
クマさんは眉間に皺を寄せている。傷が無くなったからイケメン度が増したわね。
「承知いたしました。アイリ殿。では私のことはジークとお呼びください」
「ただのアイリでよろしいのに。では、あなたのことはジークと呼びますわね」
私の脳内ではジーク=ジークマになっている。そうそう四肢欠損だったわね。
「四肢欠損は状態にもよりますが、本人が生きるエネルギーを持っていれば再生できますわ。回復魔法はサポート魔法です。本人にエネルギーがなければ発動できませんの。だから亡くなった人を生きかえらす事は無理なのです」
みんな私の話に頷いている。
「アイリ殿、お願いします。ブランケンハイム領に来て、魔獣にやられ大怪我をしたり、四肢を欠損し騎士をやめなくてはならなくなった者達を助けて下さい」
ジークマ……もとい、ジークヴァルトの目は真剣そのものだ。
「本人が希望すれば」
「ありがとうございます」
ジークヴァルトはまた泣いている。泣き虫クマさんだな。
そういえば、この国に転移魔法はあるのだろうか?
「殿下、この世界には転移魔法はありますの?」
殿下はまた驚いた顔をしている。
「転移魔法か? あることはあるが、あまり使える者がいない」
中途半端なのね。召喚魔法ができるくせに回復魔法や転移魔法があんまりできないなんて、鍛えたらできると思うのだけれど。
私は前世のアイリーン時代、元々魔力は強く、全属性使えたのだが、王太子妃教育の一環で馬鹿王太子を支えるためにあの国で最強の魔導士からどんな魔法もつかえるように鍛えられた。
それに日本に転生した時に転生チートというやつだろうか? 魔法の力が倍増されていた。しかし現代の日本では魔法はそれほど必要ではないし、隠れて使わなければいけなかったので、回復魔法と転移魔法くらいしか使わなかった。
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こっそり鑑定魔法で鑑定して、殿下やジークヴァルト達が魔力が強いのはわかっている。回復魔法は光属性を持たないと使えないが、転移魔法はある程度の魔力があれば訓練次第で誰でも使えるはずだ。私が連れて行ってもいいがしょっちゅうだとめんどくさい。ここにいるみんなあたりが使えるようになればいいのに。
私は提案してみた。
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