【完結】転生の次は召喚ですか? 私は聖女なんかじゃありません。いい加減にして下さい!

金峯蓮華

文字の大きさ
上 下
9 / 34

魔法

しおりを挟む
 辺境のクマさんは私の足元で跪いたままだ。

 困ったなぁ。

 ふと殿下を見ると必死で笑いを堪えている。

 公爵も令嬢も同じだ。

 私は殿下を睨んだ。

「殿下、笑っている場合ですか?」

 殿下は堪えきれず声を出して笑い始めた。

「す、すまない。ジークがあまりにも堅いので面白くなってしまったんだ。アイリ殿に長年の傷を治してもらい、身体だけではなく、心まで治ったのだろう。それにしてもアイリ殿はやっぱり凄い。本物の聖女は桁外れだ」

 殿下の目はキラキラしている。

「本当だ。私は何度が魔導士が回復魔法をかけているところを見たことがあるが、全くちがう。これを回復魔法というならあれはなんだろうと思うほどだ」

 公爵も笑いながら驚いているようだ。

「普通の回復魔法ですわ。回復魔法は死人を生きかえらすのと心の病以外はなんでも治せます」

 私の言葉に皆目を丸くしている。

 辺境のクマさんがおもむろに言葉を発した。

「主人殿、四肢が欠損した者を元に戻す事は可能でしょうか」

「主人殿はやめてくれないですか。いくら騎士の誓いを受け取っても私は主人殿って呼ばれるのは嫌ですわ。アイリでよろしいのですよ」

「し、しかし……」

「では、命令です。私をアイリと呼びなさい」

 クマさんは眉間に皺を寄せている。傷が無くなったからイケメン度が増したわね。

「承知いたしました。アイリ殿。では私のことはジークとお呼びください」

「ただのアイリでよろしいのに。では、あなたのことはジークと呼びますわね」

 私の脳内ではジーク=ジークマになっている。そうそう四肢欠損だったわね。

「四肢欠損は状態にもよりますが、本人が生きるエネルギーを持っていれば再生できますわ。回復魔法はサポート魔法です。本人にエネルギーがなければ発動できませんの。だから亡くなった人を生きかえらす事は無理なのです」

 みんな私の話に頷いている。

「アイリ殿、お願いします。ブランケンハイム領に来て、魔獣にやられ大怪我をしたり、四肢を欠損し騎士をやめなくてはならなくなった者達を助けて下さい」

 ジークマ……もとい、ジークヴァルトの目は真剣そのものだ。

「本人が希望すれば」

「ありがとうございます」

 ジークヴァルトはまた泣いている。泣き虫クマさんだな。

 そういえば、この国に転移魔法はあるのだろうか?

「殿下、この世界には転移魔法はありますの?」

 殿下はまた驚いた顔をしている。

「転移魔法か? あることはあるが、あまり使える者がいない」

 中途半端なのね。召喚魔法ができるくせに回復魔法や転移魔法があんまりできないなんて、鍛えたらできると思うのだけれど。

 私は前世のアイリーン時代、元々魔力は強く、全属性使えたのだが、王太子妃教育の一環で馬鹿王太子を支えるためにあの国で最強の魔導士からどんな魔法もつかえるように鍛えられた。

 それに日本に転生した時に転生チートというやつだろうか? 魔法の力が倍増されていた。しかし現代の日本では魔法はそれほど必要ではないし、隠れて使わなければいけなかったので、回復魔法と転移魔法くらいしか使わなかった。

 それも今から考えれば、初めからこの世界に召喚されるのありきで日本に転生させられたような気がする。

 こっそり鑑定魔法で鑑定して、殿下やジークヴァルト達が魔力が強いのはわかっている。回復魔法は光属性を持たないと使えないが、転移魔法はある程度の魔力があれば訓練次第で誰でも使えるはずだ。私が連れて行ってもいいがしょっちゅうだとめんどくさい。ここにいるみんなあたりが使えるようになればいいのに。

 私は提案してみた。







しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

私の頑張りは、とんだ無駄骨だったようです

風見ゆうみ
恋愛
私、リディア・トゥーラル男爵令嬢にはジッシー・アンダーソンという婚約者がいた。ある日、学園の中庭で彼が女子生徒に告白され、その生徒と抱き合っているシーンを大勢の生徒と一緒に見てしまった上に、その場で婚約破棄を要求されてしまう。 婚約破棄を要求されてすぐに、ミラン・ミーグス公爵令息から求婚され、ひそかに彼に思いを寄せていた私は、彼の申し出を受けるか迷ったけれど、彼の両親から身を引く様にお願いされ、ミランを諦める事に決める。 そんな私は、学園を辞めて遠くの街に引っ越し、平民として新しい生活を始めてみたんだけど、ん? 誰かからストーカーされてる? それだけじゃなく、ミランが私を見つけ出してしまい…!? え、これじゃあ、私、何のために引っ越したの!? ※恋愛メインで書くつもりですが、ざまぁ必要のご意見があれば、微々たるものになりますが、ざまぁを入れるつもりです。 ※ざまぁ希望をいただきましたので、タグを「ざまぁ」に変更いたしました。 ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定も緩くご都合主義です。魔法も存在します。作者の都合の良い世界観や設定であるとご了承いただいた上でお読み下さいませ。

もうもうが口癖令嬢は、婚約者の手先の魔術師にもうもうに変えられてしまいましたが、婚約破棄をしてくれたこと感謝いたします。

悠月 星花
恋愛
とある国の学園の最終試験、婚約者である伯爵令息クライシスと他二人の友人とパーティーを組んで挑んだベアトリクス。 低級魔法しか使えないクライシスに花を持たせるためにおぜん立てをするも、決めきれない。 急かすベアトリクスから逃れるために、クライシスはある女の子の手を取った。 その名はマリアーヌ。平民出の恋仲にあるマリアーヌの補助を受けて、最終試験を終えた。 そのことについて、クライシスに抗議をした日の夜、私は黒いフードを目深にかぶった赤い目の魔術師に襲われる。 目が覚めたら……私は!

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

処理中です...