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隣国ヘーラクレール編
98 ふわふわの
しおりを挟む元王家の人達が騎士団に連行されていって、やっと緊張が解けたようだった。
「ぶはーっ!きつかったぁああ」
「私、もうポーション飲めませんっ」
「お、俺はちょっとクラクラするからもう一本下さい……」
その場にへたり込んだり、肩で息をしているのはなんと神殿からやってきたたくさんの神官さん達だった。
「い、一体どうなさったんですか!?」
神官長様に尋ねるとちょっと困った顔をしたけれど、教えてくれた。
「お世話になったマーガレッタ様達を応援しよう、ついでにシロ様の素晴らしい力をお見せしようと……ちょっと無理をしました。回復の聖歌を歌い続けるのは普通の神官では無理ですから……その、マーガレッタ様がおつくりになった大量のポーションを、こう……飲みながらここまで歌い続けたのですよ」
「えっ! あのポーションですか?」
「ええ、薄めずに飲ませていただきました。それでもまだまだたっぷり在庫があるのは嬉しいやら困惑するやら……」
「それは言わないでくださいませ……」
楽しくなってシロ様と歌いながらいっぱい作ってしまったんだった。ポーションは空き部屋を占拠していたはずだもの、飲めるならいくらでも飲んで欲しいですが……。
「疲れたというか、お腹がいっぱいです」
「すみません、ちょっと、お手洗いに……」
「あ、自分も」
そういうことらしい……。
「普通に考えたら高価なポーションを水みたいにがぶ飲みしながら歩き回るなんて正気の沙汰じゃねえんだけどよ」
「あの在庫をみたらまあ、考えついちゃうよねえ。あははっ」
カールさんはあきれ顔だし、メリンダさんは大笑いしている。きっと冒険者の中でもそんなことをする人なんていないってことなんだ。い、良いじゃないですかいっぱいあるんですし!?
「まあ、神殿とシロ坊の権威も示せたし、腐った王族はいなくなったし……近隣諸国の代表は大体この場にいるけど、もう公爵達が上手いこと話しを纏めてるし、いいところじゃねえか?」
「そうみたいですね……」
レイ公爵、ファンミル侯爵が先頭に立って各国の重鎮、代表達と話をしている。誰もかれも神話の続きが起こったのを自分の目で見て興奮気味だし、横柄な元ヘーラクレール王家が没落するのを間近で見て、胸のすく思いだったようだ。話は花が咲き、続きは外ではなく城の中でと侍従達が案内を始める。
もうこうなることは想定内で、城内は整えられていたようだった。
「マーガレッタ様もアーサー様ももう少しお付き合いくださいますよね?」
胸にシロ様を抱えたルシアナ様が少し不安げに首を傾げる。
「私、もう少しマーガレッタ様とお話がしたかったんです」
確かに今日は逃げ回ってばかりでルシアナ様とゆっくり話をする暇なんてなかった。
「良いんじゃない? ゆっくりさせてもらおう。シロも一緒にお城に行くかい?」
「ジィッ! (うん! きょうは~くろーどのあたまのうえにのっちゃおー!)」
「あっ」
ルシアナ様の腕から飛び立って、シロ様はクロード様の頭の上に着地した。その姿はふわふわで……。
「とても可愛らしい王冠のようですね、シロ様」
「ジイッ! (シロがえらんだおうさまだからねーっ)」
「ありがとうございます、シロ様。頑張りますね」
とても立派な姿だった。
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