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隣国ヘーラクレール編
44 聖女候補はとてもキュートでパワフル
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「我が息子がヘーラクレール様に似ているとは……なんと身に余る光栄か」
「はい、父上。私も非常に嬉しい……必ずこの災厄を取り除き、この国に安寧を齎したい」
「うむ……!」
クロード様とレイ公爵は力強く頷きあう。きっと今のクロード様のような志は英雄ヘーラクレール様に通じるものがあるのだろう……だからシロ様はそれを似た匂いと感じ取ったんだ。
≪我が末に、勇気を≫
「!?」
聞いたことがない男の人のような声が一瞬だけ聞こえた。いつも一緒にいてくださる「みなさま」ではない別の誰か……もしかしたら英雄ヘーラクレールは死後、「みなさま」達の末席に加わったのだろうか?シロ様も「ヘーラクレールおじちゃん」と親し気に呼んでいた……「みなさま」が暮らす地で出会っていたのかもしれない。
「ジッジー? (おねえちゃん、おなまえは?)」
「ん? もしかして私の名前を尋ねられましたか?」
「ええ、シロ様が聞かれてますよ」
シロ様の言葉を通訳してルシアナ様にお伝えする。ルミナス様もなんとなくシロ様が言っていることが分かるようだった。
「私の名前はルミナス・ファンミルと申します。ファンミル家は少しだけヘーラクレール様の血を継いでおります……私も頑張ってシロ様をお守り致しますね」
「ジ、ジ、ジ、ジィ? (る、し、あ、な。ぼくおぼえたー)」
「シロ様はお可愛らしいだけでなく賢者でもあらせられたのですねー!」
「ジー! (えっへん!)」
ルシアナ様のシロ様の可愛がり方は本当に楽しそうで、見ているこちらもつい微笑んでしまいたくなるようだった。
「マーガレッタ、少し寂しい?」
「ふふ、そうね。アーサー。でも、正しい姿だって思えるのよ、不思議ね」
真っ先に私の元に来てくれて膝に乗ってくるシロ様が、ルシアナ様と楽しそうに遊んでいる。少し涼しい膝のせいだろう……そんな気持ちになるのは。
「ルシアナ様が聖女様になって下さったら良いのに……」
「そうだね、あんなにシロも懐いているのに」
私とアーサーの身勝手な呟きは神官長様に聞こえてしまったらしい。ぱぁっとお顔を輝かせて立ち上がった。
「それは妙案です!」
「し、神官長様……?」
「ルシアナ様、聖女となられるおつもりはございませんか?!」
ここにいるシロ様以外の全員が驚いて神官長様を見た。
「し、神官長様……私は幼少の頃、聖女の資格はないと選から漏れた身。今更それは無理ではございませんか?」
シロ様を撫でながらルシアナ様は寂しそうに呟いた……そうだったんだ……小さな頃に駄目だったのに今更なんて確かに嫌な話だ……私ったらとんでもないですことを口にしてしまった。早くルシアナ様に謝りたい。
それなのに、熱っぽく神官長様はお言葉を続けた。
「後ほど資格が出来ることなどよくあることです! シロ様を慈しむそのお心、私はルシアナ様には十分に聖女となられる資格があると思います……ただ、これから祈りを捧げ、修行をしていただかなければならなくなるとは思います」
なるほど、資格はあっても努力は必要なのね。へーラクレールらしいとはこういうことなのだろう。
「ディエゴ王太子のわがままに付き合うだけでも大変時間を取られるんだ。今から聖女の修行など、ルシアナにこれ以上負担をかけるわけにはいかん」
横から冷静な判断を下したのはレイ公爵だった。あのなんだか不気味さを持った王太子のわがままに振り回されているのに、聖女の修行まではルシアナ様の体調が心配だ。レイ公爵の言い分はとても正しく思えて、神官長様も肩を落とした。
「いいえ! 私、やりたいですわ! こうやってシロ様ともふもふしていれば疲れなんて吹っ飛んじゃいますもの!」
「ルシアナ、無理は良くない」
「黙って、クロード。クロードにはシロ様の癒し効果がイマイチ伝わってないようね! シロ様がこてん、と首を傾げただけでこのルシアナ、三日は寝ずに働けますわ!」
「ジュリッ! (だめ、るしあな! ねんねしないと)」
「あっ! 物の喩えでございますわ。ルシアナはいつもすやすや快眠です!」
「ジィ! (すやすや!)」
シロ様に頬擦りしながら楽しそうに目を細めるルシアナ様。なんだか本当に三日くらい働けそうな勢いがあるな、と思った。
「なんだかパワフルなご令嬢だね」
「ええ、そうねアーサー。でもとっても頼もしいです」
シロ様も楽しそうだし、ルシアナ様もやる気に満ちている。周りが気をつけてあげればルシアナ様なら良い聖女になれるのではないだろうか?
「はい、父上。私も非常に嬉しい……必ずこの災厄を取り除き、この国に安寧を齎したい」
「うむ……!」
クロード様とレイ公爵は力強く頷きあう。きっと今のクロード様のような志は英雄ヘーラクレール様に通じるものがあるのだろう……だからシロ様はそれを似た匂いと感じ取ったんだ。
≪我が末に、勇気を≫
「!?」
聞いたことがない男の人のような声が一瞬だけ聞こえた。いつも一緒にいてくださる「みなさま」ではない別の誰か……もしかしたら英雄ヘーラクレールは死後、「みなさま」達の末席に加わったのだろうか?シロ様も「ヘーラクレールおじちゃん」と親し気に呼んでいた……「みなさま」が暮らす地で出会っていたのかもしれない。
「ジッジー? (おねえちゃん、おなまえは?)」
「ん? もしかして私の名前を尋ねられましたか?」
「ええ、シロ様が聞かれてますよ」
シロ様の言葉を通訳してルシアナ様にお伝えする。ルミナス様もなんとなくシロ様が言っていることが分かるようだった。
「私の名前はルミナス・ファンミルと申します。ファンミル家は少しだけヘーラクレール様の血を継いでおります……私も頑張ってシロ様をお守り致しますね」
「ジ、ジ、ジ、ジィ? (る、し、あ、な。ぼくおぼえたー)」
「シロ様はお可愛らしいだけでなく賢者でもあらせられたのですねー!」
「ジー! (えっへん!)」
ルシアナ様のシロ様の可愛がり方は本当に楽しそうで、見ているこちらもつい微笑んでしまいたくなるようだった。
「マーガレッタ、少し寂しい?」
「ふふ、そうね。アーサー。でも、正しい姿だって思えるのよ、不思議ね」
真っ先に私の元に来てくれて膝に乗ってくるシロ様が、ルシアナ様と楽しそうに遊んでいる。少し涼しい膝のせいだろう……そんな気持ちになるのは。
「ルシアナ様が聖女様になって下さったら良いのに……」
「そうだね、あんなにシロも懐いているのに」
私とアーサーの身勝手な呟きは神官長様に聞こえてしまったらしい。ぱぁっとお顔を輝かせて立ち上がった。
「それは妙案です!」
「し、神官長様……?」
「ルシアナ様、聖女となられるおつもりはございませんか?!」
ここにいるシロ様以外の全員が驚いて神官長様を見た。
「し、神官長様……私は幼少の頃、聖女の資格はないと選から漏れた身。今更それは無理ではございませんか?」
シロ様を撫でながらルシアナ様は寂しそうに呟いた……そうだったんだ……小さな頃に駄目だったのに今更なんて確かに嫌な話だ……私ったらとんでもないですことを口にしてしまった。早くルシアナ様に謝りたい。
それなのに、熱っぽく神官長様はお言葉を続けた。
「後ほど資格が出来ることなどよくあることです! シロ様を慈しむそのお心、私はルシアナ様には十分に聖女となられる資格があると思います……ただ、これから祈りを捧げ、修行をしていただかなければならなくなるとは思います」
なるほど、資格はあっても努力は必要なのね。へーラクレールらしいとはこういうことなのだろう。
「ディエゴ王太子のわがままに付き合うだけでも大変時間を取られるんだ。今から聖女の修行など、ルシアナにこれ以上負担をかけるわけにはいかん」
横から冷静な判断を下したのはレイ公爵だった。あのなんだか不気味さを持った王太子のわがままに振り回されているのに、聖女の修行まではルシアナ様の体調が心配だ。レイ公爵の言い分はとても正しく思えて、神官長様も肩を落とした。
「いいえ! 私、やりたいですわ! こうやってシロ様ともふもふしていれば疲れなんて吹っ飛んじゃいますもの!」
「ルシアナ、無理は良くない」
「黙って、クロード。クロードにはシロ様の癒し効果がイマイチ伝わってないようね! シロ様がこてん、と首を傾げただけでこのルシアナ、三日は寝ずに働けますわ!」
「ジュリッ! (だめ、るしあな! ねんねしないと)」
「あっ! 物の喩えでございますわ。ルシアナはいつもすやすや快眠です!」
「ジィ! (すやすや!)」
シロ様に頬擦りしながら楽しそうに目を細めるルシアナ様。なんだか本当に三日くらい働けそうな勢いがあるな、と思った。
「なんだかパワフルなご令嬢だね」
「ええ、そうねアーサー。でもとっても頼もしいです」
シロ様も楽しそうだし、ルシアナ様もやる気に満ちている。周りが気をつけてあげればルシアナ様なら良い聖女になれるのではないだろうか?
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