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隣国ヘーラクレール編

23 私にできること

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「マーガレッタちゃん、それより先に作って欲しい物があるわ」
「マーガレッタさん、お願いします、ごほっごほっ」
「ミランダさん? トリルさん??」

 タイミングが良いのか悪いのか、王家の人達が引き上げて行ってすぐに街に情報収集に出ていたミランダさんとトリルさんが小走りに帰ってきた。二人とも息を切らして、咳込んでいる。よっぽど急いで戻ってきたみたいだった。

「そんなに緊急事件なんですか!?」

 驚いて駆け寄ってみると何か様子が違った。

「街、酷いわ」
「空気が悪いです。神殿の周りは空気が澄んでいますが、平民の……特に下町はかなりひどかったです。私達、マーガレッタさんにもらった毒消しの飴を食べてても咳が止まらなくて……歌うどころじゃないですよ」
「そ、そんなに……!」

 二人ともこくりと大きく頷いた。

「ジーッ!(おにいちゃん、おねえちゃん! わわっ、むらさきのどろどろだらけ! あっちいけっどろどろっ)」
「シロ様!?」
「きゃっ」
「うわっ」

 シロ様が小さな羽をぱたぱたと羽ばたかせる。小さな羽が起す風は確かに小さかったはずなのに、メリンダさんとトリルさんの髪の毛はまるで突風に吹かれたみたいに舞い踊り、トリルさんの愛用の帽子まで吹き飛んでしまった。

「ジジッ!(どろどろ、とんでった!)」
「わ……凄い。嫌な感じがなくなったわ」
「ん、んん~~あ、あ~~~♪ 声の調子も戻りました! シロ様流石です!」
「ジッ!(えっへん!)」

 す、凄い……シロ様はやっぱり凄い!

「ジジッ(まーがれったがいっぱいたすけてくれたから、できるようになったよ。ありがとう!)」
「すごいです、シロ様!」

 ふわふわで丸くて白い胸をポンと張ってしろ様も嬉しそうだ。

「ありがとう、シロちゃん。でも街が酷いのよ……シロちゃんの風はすごいけれど、あんな広い街を全部きれいにするのはまだ無理よね」
「ジ……(ごめんなさい……もっとおおきくならなくちゃむりです)」
「何か対策をしないと、今でもほどんどの人が咳をしてる。このまま悪化したらまずいよ」

 どうしよう……きっと私達がいる神殿の空気が澄んでいるのはシロ様がいることと、祈りを捧げている神官様達のお陰だ。タニア王女と引き離すとシロ様はもう神獣としての力を取り戻し始めている。きっとこの調子で行けばすぐにこの国にかかる瘴気を払う力を得るに違いない。
 シロ様が大きくなるまで、少しの間でももたせることができれば……。

「私に何かできることは……」

 私は聖女じゃなくて薬師だ。薬師に出来ることはポーションを作ること、それだけ……。

「そうよ、ポーションを作って配れば良いんだ」
「ん?」
「私にできることだわ」

 よし、と拳を握り締める。早速アーサーと神官長様に相談してみよう、きっと二人とも協力してくれるはず。メリンダさんとトリルさんは不思議そうな顔をしていたけれど、きっと二人もすぐにわかってくれるはず。

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