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70 俺の願い

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「ナナ様は恐ろしい」

 すぐに俺はポツンになった。良いけど……。横にはずっとフォーリがいてくれるし、尻尾を撫でさせてくれるし……。

「王様って孤独なもんさ、ナナちゃん」

「お、俺……王様になんかならないも「ストップ!それ以上言わない!」」

 フォーリが俺の口をパッと塞いだ。あ、うん……城中の亡霊の皆さんがすんごい目で見てる。

 まさか王にならぬとは言いますまいな?
 王はナナちゃん様に決まっていますぞ?
 さあさあ……はよう政策を決めましょうぞ。まずはグレイデールの併合ですぞ!

「圧力すんごいじゃん……」

「うん……」

 ほとんど亡霊なんて見えないはずなのに、動物の勘と髭がピリピリすると言いながら、正確にフォーリに皆の意思が伝わっている。

「やらない、なんて言ったら酷い事が起こると思うぞ」

「そうかも……」

 なんか知らないけど、亡霊さんの力が強くなってるんだよね。今まではいるだけで何にも出来なかったのに、今は音を立てたり物を少し動かしたりも出来るからポルターガイスト的な事が起こりそう……落ち着いて落ち着いて!

「そういえばグレイアッシュはこうだけど、グレイデールの方はどうだと思う?フォーリ」

「おんなじだと思う。確か歴史的に同じくらいに国が出来てるだろう?どこの国でも暗殺やら謀殺やらは起こってるはずだし、死んだ人の数もいっぱいいると思う……うーんもしかしたらこっちより酷いかも?」

 確かお城にグレイデールからの使者がずっと待機してたはず。

「ナナ様はこちらより我らがグレイデール王の直系!早く国へお戻りいただきたく!」

「なにおう!?ナナ様をお連れしたのはこのグレイアッシュ!ナナ様はグレイアッシュ王より寵を賜りし方!我がグレイアッシュにお留まりいただくのが最上!」

 この城の人は俺を畏れつつも、グレイデールには負けたくないと思ってるみたい……複雑だなあ。

「まあ行ってみりゃ分かるんじゃね?」

「そう……だね」

 ちょっと怖いけれど、きっと向こうのお城にも話の分かる亡霊さんがいっぱいいるよね!……そう、いっぱいね……。

「きっとナナちゃんが向こうを見学してるうちに、ナナちゃんの敵を皆がやっつけておいてくれるんじゃない?」

 おう!任せておけ、我が王よ!
 わたくし、現在の後宮の女どもが気に入らないのよね
 いらん画策をしておる者が多い……腕が鳴るわい

「あーーーでも殺しはあんまりよくないよ!罪は罪になるんだから……」

「生かしておいても罪を重ねる悪人を止めてやるのもまた優しさだぜ!俺良い事言った!」

「フォーリ……口が上手いね」

 ふむ、でもフォーリのいう事って一理ある。この先何十人もの命を奪うはずだった人を先に殺してしまえば絶対数で死人は減る訳だけれども……うーん、被らなくてもいい罪を人にかぶせるのはなあ……。

 ぬははは!もはや何百人とやった我らよ!今更一人二人増えた所で変わらんわ!
 それもそうね、もっともっと無実の人間を殺してきたものね。
 自らの小さき願望の為に汚してきた手じゃ、ナナちゃん様が気にする事などないわ

「そういう事じゃないんだけどなあ……」

 うーん……上手く言えないや。俺もフォーリくらい頭が回れば色々説得できるのかなぁ?

「良いじゃん。ナナちゃんは死にたくない。俺も死んでほしくない。皆も死んでほしくないって思ってる。それだけだよ」

「……うん、ありがとう」

 王だとか難しい事は良く分からないけれど、俺は死にたくないしみんなが喜んでくれることをしてみたいと思う。

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