【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

文字の大きさ
上 下
109 / 139

109 フラグではない

しおりを挟む
「新皇帝、ばんざーい!!」

「アレッシュ様ー!」

 アレッシュ様は24歳で皇帝になり、ラムシェーブルは前皇帝になってアイリス領に移り住んだ。と、言ってもアイリス領は王都の隣なので何かあればすぐに意見を求めて飛んでくる人が多い。
 ソレイユ様は母として王宮に残る事になった。

「結局ディエス様は父上と一緒かぁ」

「はは……」

 戴冠式でアレッシュ様が頬を膨らませた。皇帝陛下が何やってんの。

「1人だったら、と最初から言われていたではないか」

 ふ、と鼻で笑うラムも十分に大人気ない。

「スローライフする為に引退する父上に言われたくないです!全く」

 歴代の中でもかなり早い交代だ。ラムはまだまだ皇帝としてやっていける年齢なんだけど、俺のわがままに付き合う形になった。

「妃を大切にして何が悪い?」

「うわっ!出たー惚気」

 アレッシュ様ですら引いているけど、この人の血を君も継いでるんだぞ、と言いたい。

「素敵ではありませんか?ねえ、ディエス様」

「はは……」

 ルータベーガ様も立派な王妃ぶりだ。しかしやはり色々不安なのでソレイユ様が側について下さると言う事だ。

「ルーはそりゃ大事だけどさあ、ディエス様は私の初恋なんだよぉ~特別なんだよ~」

 と、言いつつもアレッシュ様の執着はルータベーガ様に向いている。このままいけば側妃は迎えないだろうな。

「ディエス様ほどの美人ならば是非来て頂きたいですが」

「俺はもうおじさんだよ。美人って顔じゃない」

 何を言ってるんだか。ルータベーガ様もお目目が悪いのかな?

「ディエス様。これ以上王宮女性を敵に回したくなければその可愛いお口を閉じてくださいませ!」

「ひゃい?!」

 何故かルータベーガ様に怒られた、おかしいぞ。

「ディエス様並みの側妃なんているはずがないから、側妃は無しだなぁ」

 なんてアレッシュ様まで言っているけれど、俺くらいの奴なんてそこらにいるだろう?って言おうとしたらなんか睨まれたから黙ってる。
 ルータベーガ様はやり手の王妃になるだろう。

 因みにイーライ様とウィルフィルド様はもう帝国にいない。それぞれ東の国と西の国の王女へ婿入りしてしまった。どうやってその国の情報を知り得たのか知らないけれど、当然ラムに

「私は東国シャザーネの王女ネーネ様と結婚します」

「私は西国ルドンの王女アノセアン様と結婚します」

 2人仲良く言い出した。流石のラムも目を白黒したし、俺なんて

「はあ?!変なキノコでも食べたの?!」

 なんて頭の調子をお伺いしてしまった程だ。しかし、2人に届いた釣書を見ると確かに求婚されていた。そしてよくよく思い返してみると、あの俺が死にかけた時、神様が教えてくれたディエス不在の未来で、イーライ様とウィルフィルド様が立ち上がった国がそこだった。
 だから、きっと何かあったのだろう。二国にお受けできそうです、と打診の返事を送るとお二人はさっさと自分で荷物を纏めて東西に行ってしまった。

「ライ、またここでね?」

「うん、ウィル。どっちが先に中央に着くか競争だよ?」

 なんてとっても不穏当な発言をしてから出て行ったので、俺もラムもソレイユ様もアレッシュ様も大量に冷や汗をかいた。

「ま、まさかとは思いますが、領土を奪いながら帝国でまた会おうなんて言ってませんよね?」

 見送りに来ていたクロードも青い顔で俺達に尋ねてくるが、ま、まさかね……?
 セイリオスがちっちゃな携帯ソロバンを持ち出してパチパチと何か試算をして

「5年以内に動きがあれば、その可能性が大いにあるかと……」

 俺達の顔色の悪さは悪化の一途を辿ったけれど、賽は投げられてしまった……。どうしよう、とんでもない猛獣を野に放ってしまったのではないだろうか?

「ねーねーディエスはぁやっぱり王様が好きなのー?」

「だってお父様とけっこんしたんだもんねー」

 なんて無邪気に聞いていた頃が懐かしいよ。それに俺、何で答えたっけ?

「そうですねー。やっぱり帝国くらい領土の大きな王様は頼り甲斐があるかなー?」

「じゃーライは帝国よりもっと大きな国の王様になる!」

「ウィルも!そして僕達がおっきな国の王様になるから、僕達と結婚してぇー」

「はは……その時1人でしたらね?」

 わーい!と抱き付いて来たのはあれは5歳くらいの時だったかなぁ?

まさかね?俺のせいじゃないよね??



しおりを挟む
感想 261

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

オメガバα✕αBL漫画の邪魔者Ωに転生したはずなのに気付いた時には主人公αに求愛されてました

和泉臨音
BL
 落ちぶれた公爵家に生まれたミルドリッヒは無自覚に前世知識を活かすことで両親を支え、優秀なαに成長するだろうと王子ヒューベリオンの側近兼友人候補として抜擢された。  大好きな家族の元を離れ頑張るミルドリッヒに次第に心を開くヒューベリオン。ミルドリッヒも王子として頑張るヒューベリオンに次第に魅かれていく。  このまま王子の側近として出世コースを歩むかと思ったミルドリッヒだが、成長してもαの特徴が表れず王城での立場が微妙になった頃、ヒューベリオンが抜擢した騎士アレスを見て自分が何者かを思い出した。  ミルドリッヒはヒューベリオンとアレス、α二人の禁断の恋を邪魔するΩ令息だったのだ。   転生していたことに気付かず前世スキルを発動したことでキャラ設定が大きく変わってしまった邪魔者Ωが、それによって救われたα達に好かれる話。  元自己評価の低い王太子α ✕ 公爵令息Ω。  

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

処理中です...