【完結】廃棄王子、側妃として売られる。社畜はスローライフに戻りたいが離して貰えません!

鏑木 うりこ

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65 一生懸命全否定!

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 俺達が料理長から提案された雑穀クッキーの試食をしているとラムの執務机の下の隠し通路の蓋がガタリと動いて人の手がにゅっと出てきた。

「うぎゃっ……!」

 びっくりしてクッキーを全部落としそうになったが

「ディエス様……緊急報告です……!」

「メ、メイドちゃん?!」

 俺が「あの二人はデキてるんじゃないか?!」疑惑の検証に付き合ってくれている密偵メイドのクリスチーネだ。

「報告書を……あと私、リゼロ様にスカウトされたので諜報部の方に移籍したいのですが良いですか?」

「あ、報告書はありがと……クリスチーネがそうしたいなら良いよ」

「ありがとうございます!ではまた後で!」

「う、うん」

 俺の密偵がリゼロに取られた……まあ、危ない事させられなきゃ良いなぁ。さて、報告書とやらを見てみると……。

「え、お、お、お……おわぁ……?!」

 つい今しがた、執務室の扉の前にいる騎士団長のクロードがラムと俺がイチャイチャしているのが羨ましいと悶えていると書かれている。俺は、俺はーーーー!

「だ、断じてイチャイチャなんてしてないし!!」

「?」

「ラ、ラムが両手が塞がってて!仕事しながらだから!こ、効率とかだし!!あーんとかしてないし!!」

「中々美味いな。もう一枚」

「いや!食わせたりしないし!」

「?!」

「そんなことしてないしーーーー!!」

 騒ぐ俺と何故か知らんがガッカリするラムで仕事は捗らなかった。し、仕方がなかったんだよ!クッキーの試食はしなきゃいけないし、でも仕事も遅れるわけにもいかないし、イチャイチャなんてしてねーし!!

「断じてちがあああああう!!」

「え、何が違うので……?」

「あ……な、なんでもないです……ごめん」

 入ってきたセイリオスに驚かれてしまったけれど、俺はそんなつもりは全くなかったんだ!ラムもちゃんと自分で食べなさい!なんかもっと寄越せって感じの目で見てきても駄目ッ!

「ええと……?大丈夫、ですか?ディエス様?」

「だ、大丈夫、大丈夫問題ない!今日はね、あの雑穀のレシピの試作品が~」

 セイリオスと3人で書類をみたり、試作品をつまんだりした。

「じゃあ試作品を他の人にも食べさせてみて欲しい」

「分かりました」

 かなりの枚数が入ったクッキーを持たせて通常業務に戻って貰った。今年が冷夏になるかもしれないという話は俺やラム、セイリオスと上層の数人だけで対策を取っている最中だ。あまり話を広げて、混乱を起こすのも良くないと思い、関係各所にすらまだ伏せている。
 農業関係の部署は全員あわただしく動いているけれど、なるべく騒ぎにならないようにしてくれと通達はしてある。余分な買い占めとか良くないから市場やいろんなものを見据えてからの発表になるだろう。

 いや、そんなことより俺はイチャイチャしてないし、業務上の都合でだから、絶対そうだから!仕方がなくだから!と誰も見ていないし誰も聞いていないけれど、俺は脳内で一生懸命否定していた。




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