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66 密偵メイド、暗躍する!
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私は密偵メイド、クリスチーネ!ちょっぴり殿方同士の恋愛を観察するのが大好きな18歳の女子よ!今日は朝から陛下と私の観察対象のアイリスの君ことディエス様のイチャイチャを見れてやる気がぐんと補充された上に嫉妬に打ち震えて血涙さえ流しそうなクロード騎士団長を見れて私の気力は満タンだわ!
「あ、あーん……だと?!」
小さな声も聞き逃さない、それが私!私達!!
そして出来るメイドはその上を行くっ!!
「クリスチーネ、コレよ。料理長から貰って来たわ!」
「ありがとう、ケイトリーゼ。流石よ」
そして私はしらっとした顔で騎士団長に近づくの。
「あの、騎士団長様。側妃様より言伝なのですが」
「……なんだ」
私は料理長から貰ってきて可愛くパッケージされたクッキーを騎士団長様に差し出す。騎士団長様から全てを爆殺するほどの殺気が漏れ出ているけれど、私は、負けない!
「ディエス様の……いえ、陛下からのご指示なのですが、この「例の夏の件に関する」このクッキーを試食し、感想を述べよと言う事です。気心の知れた騎士団員ではなく、文官の方に必ず!手ずから食べて頂き!どうであったか感想を貰うようにと!厳命でございます!」
ちょっとだけウソを言った。でもディエス様なら許してくださる。
「何故私が、文官共に?しかも食わせろと?貴様、私は暇人ではない……「陛下の厳命でございます」……うっ」
叶わぬ想いに身を焦がし、色々問題を起こしているクロード騎士団長ですが、彼はとても根はまじめで優秀な方であり、王家の、特に陛下に忠誠を誓っている方です。
「陛下の、厳命でございます」
「……あい分かった」
私の勝利の瞬間である。そして可愛らしくラッピングされたクッキーを無理やり持たせて……騎士団長は第二資料室へ消えた。
私達は知っている。第二資料室は陛下の執務室へ行く途中にこじんまりとした細い通路の先にある、とっても目立たない特に重要な書類など一つも置いていない資料室だという事を!更に最近私達で埃一つなくきれいに掃除もしている事を!
「あーあーこちらクリスチーヌ。第一ミッションコンプリート、どうぞ」
「了解、クリスチーヌ。次は私がやります」
「オーケーケイトリーゼ。健闘を祈る」
廊下の端と端で双眼鏡を覗きながら読唇術で会話する私達。
「ほどほどにしておくんだぞ」
「大丈夫です、ヘマはしませんって」
扉の前を守る衛兵さんに苦笑いをされてしまいました……へへへ。
さて、私は密偵メイドのケイトリーゼでございます。こちらも料理長から預かったクッキーの包みを片手に執務室から出てくる宰相のセイリオス様を待っております。あっと出てきました!今日も圧倒的イケメン!イケメンでございますが、私達はアイリスの君の方が好きなので、無様なマネはしませんわ。
ディエス様の良い所は意外と言葉遣いが荒く庶民的な上に自分では隠しているつもりなので甘やかすのが上手な所で……おっと、可愛い上司の語りは後にしましょう。
すっと進みでて、セイリオス様の横に近づきます。正面は不敬ですからね。
「アイリスの君より言付かっております」
「……聞こう」
あ、疑いましたね?そりゃそうです。扉の中で散々話し合ったのに、出てきた途端言伝っておかしい物ね。でも、頭のいい人って勘違いしてくれるの、私知っているわ。
「「例の夏の対策」用のクッキーを試食していただきたいとのことです。文官ではなく武官の意見を聞くようにと」
「……ふむ。気心の知れた部下だと私に慮って本音を言えないという事ですか……。まあこの件は公にしていませんしね、秘密裡でもあるという事ですね」
私は何も言わずに深々とお辞儀をする。そんな感じだと頭のいい人は更に勝手に誤解してくれる。
「分かりました」
と、答えてくれる。やっぱり頭のいい人は違うなあ。そして頭をあげてから、ちらりと第二資料室へ続く廊下を見て、またぱっと頭を下げる。頭のいい人は……。
「どうかしましたか?」
やっぱり頭のいい人は違うなあ!
「あ、あの……あの通路の向こうに大きな犬が入って行ったように見えまして……私、怖くて」
大きな犬でぴくりと眉が動くから、アタリなのだわ。はっきり言うけど王城の中に大きな犬なんて入り込む訳ないのにね!
「分かりました、それも確認しておきましょう」
「私、犬が苦手なので……さ、下がらせていただきますね……」
「ええ、そうなさってください」
もう一度ペコリとお辞儀をして、第二資料室へ向かうセイリオス様の背中を見送った。心なしか足取りが軽くて速いわよねうふふー!
「君達ねえ……」
衛兵さんに窘められちゃった。
「でもきっとディエス様の為になるわ」
「なるかなあ?」
「なりますとも!是非ともあの第二資料室に誰も近づかないようにしててくださいね!」
「……分かったよ……全く!」
私はクリスチーヌと合流して計画が上手く行ったとハイタッチをしたわ。勿論いつもより長めの時間がたってから暗黒オーラが消えてキラキラのイケメンになった騎士団長様とお疲れでもぽわぽわの優しい感じになった宰相様が微妙な距離感で二人並んで出て来たから大成功だった訳よ。
「なあラム。第二資料室にベッドの設置を求める書類が来たんだけどどうしてかなあ?」
「資料を寝転がって読みたい奴がいるんだろう」
「あーなるほど!それちょっとわかるけど、第二資料室って読まなきゃいけない資料あったっけ?」
「何が必要になるか分からないからな。それよりそこのクッキーを取ってくれ」
「ん?これ気に入ったのかあ?まあ美味いよなあ」
「ん」
「あ、はいはい。ホレ食え」
「ん」
「あ、あーん……だと?!」
小さな声も聞き逃さない、それが私!私達!!
そして出来るメイドはその上を行くっ!!
「クリスチーネ、コレよ。料理長から貰って来たわ!」
「ありがとう、ケイトリーゼ。流石よ」
そして私はしらっとした顔で騎士団長に近づくの。
「あの、騎士団長様。側妃様より言伝なのですが」
「……なんだ」
私は料理長から貰ってきて可愛くパッケージされたクッキーを騎士団長様に差し出す。騎士団長様から全てを爆殺するほどの殺気が漏れ出ているけれど、私は、負けない!
「ディエス様の……いえ、陛下からのご指示なのですが、この「例の夏の件に関する」このクッキーを試食し、感想を述べよと言う事です。気心の知れた騎士団員ではなく、文官の方に必ず!手ずから食べて頂き!どうであったか感想を貰うようにと!厳命でございます!」
ちょっとだけウソを言った。でもディエス様なら許してくださる。
「何故私が、文官共に?しかも食わせろと?貴様、私は暇人ではない……「陛下の厳命でございます」……うっ」
叶わぬ想いに身を焦がし、色々問題を起こしているクロード騎士団長ですが、彼はとても根はまじめで優秀な方であり、王家の、特に陛下に忠誠を誓っている方です。
「陛下の、厳命でございます」
「……あい分かった」
私の勝利の瞬間である。そして可愛らしくラッピングされたクッキーを無理やり持たせて……騎士団長は第二資料室へ消えた。
私達は知っている。第二資料室は陛下の執務室へ行く途中にこじんまりとした細い通路の先にある、とっても目立たない特に重要な書類など一つも置いていない資料室だという事を!更に最近私達で埃一つなくきれいに掃除もしている事を!
「あーあーこちらクリスチーヌ。第一ミッションコンプリート、どうぞ」
「了解、クリスチーヌ。次は私がやります」
「オーケーケイトリーゼ。健闘を祈る」
廊下の端と端で双眼鏡を覗きながら読唇術で会話する私達。
「ほどほどにしておくんだぞ」
「大丈夫です、ヘマはしませんって」
扉の前を守る衛兵さんに苦笑いをされてしまいました……へへへ。
さて、私は密偵メイドのケイトリーゼでございます。こちらも料理長から預かったクッキーの包みを片手に執務室から出てくる宰相のセイリオス様を待っております。あっと出てきました!今日も圧倒的イケメン!イケメンでございますが、私達はアイリスの君の方が好きなので、無様なマネはしませんわ。
ディエス様の良い所は意外と言葉遣いが荒く庶民的な上に自分では隠しているつもりなので甘やかすのが上手な所で……おっと、可愛い上司の語りは後にしましょう。
すっと進みでて、セイリオス様の横に近づきます。正面は不敬ですからね。
「アイリスの君より言付かっております」
「……聞こう」
あ、疑いましたね?そりゃそうです。扉の中で散々話し合ったのに、出てきた途端言伝っておかしい物ね。でも、頭のいい人って勘違いしてくれるの、私知っているわ。
「「例の夏の対策」用のクッキーを試食していただきたいとのことです。文官ではなく武官の意見を聞くようにと」
「……ふむ。気心の知れた部下だと私に慮って本音を言えないという事ですか……。まあこの件は公にしていませんしね、秘密裡でもあるという事ですね」
私は何も言わずに深々とお辞儀をする。そんな感じだと頭のいい人は更に勝手に誤解してくれる。
「分かりました」
と、答えてくれる。やっぱり頭のいい人は違うなあ。そして頭をあげてから、ちらりと第二資料室へ続く廊下を見て、またぱっと頭を下げる。頭のいい人は……。
「どうかしましたか?」
やっぱり頭のいい人は違うなあ!
「あ、あの……あの通路の向こうに大きな犬が入って行ったように見えまして……私、怖くて」
大きな犬でぴくりと眉が動くから、アタリなのだわ。はっきり言うけど王城の中に大きな犬なんて入り込む訳ないのにね!
「分かりました、それも確認しておきましょう」
「私、犬が苦手なので……さ、下がらせていただきますね……」
「ええ、そうなさってください」
もう一度ペコリとお辞儀をして、第二資料室へ向かうセイリオス様の背中を見送った。心なしか足取りが軽くて速いわよねうふふー!
「君達ねえ……」
衛兵さんに窘められちゃった。
「でもきっとディエス様の為になるわ」
「なるかなあ?」
「なりますとも!是非ともあの第二資料室に誰も近づかないようにしててくださいね!」
「……分かったよ……全く!」
私はクリスチーヌと合流して計画が上手く行ったとハイタッチをしたわ。勿論いつもより長めの時間がたってから暗黒オーラが消えてキラキラのイケメンになった騎士団長様とお疲れでもぽわぽわの優しい感じになった宰相様が微妙な距離感で二人並んで出て来たから大成功だった訳よ。
「なあラム。第二資料室にベッドの設置を求める書類が来たんだけどどうしてかなあ?」
「資料を寝転がって読みたい奴がいるんだろう」
「あーなるほど!それちょっとわかるけど、第二資料室って読まなきゃいけない資料あったっけ?」
「何が必要になるか分からないからな。それよりそこのクッキーを取ってくれ」
「ん?これ気に入ったのかあ?まあ美味いよなあ」
「ん」
「あ、はいはい。ホレ食え」
「ん」
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