37 / 139
37 日頃のディエス
しおりを挟む
ラムに友達はいない。だから俺と24時間べったりくっついている。引き離そうとした事もあったが無駄だったから諦めた。そんな非効率なことを俺は選択しない、と言うか面倒だからしない。
「ラム。俺、下町の酒場とかで酒飲んでみたい」
「……酒ならもっと高級で美味いものがあるだろう。何故下町に行きたがる?」
俺、この世界に来てからあちこち行った事無いんだよ。だからどうなってるか見たいんだけど?
「良いよ、じゃあ俺一人で行くから」
付き合いが悪いとは言わない。だって俺がやってみたい事であってラムがしたい事じゃない。
俺は執務室の壁をかさかさと触っている。あと本棚!本棚の中の一冊が鍵になっててそれを「ガコン!」ってしたら、本棚が動いて秘密の通路が現れるんだろ??
ワクワクしながら確かめたのに本は全部普通の本だった……。俺の求めていた「ガコン!」はどこをどう触っても現れない……おかしい、王様のお城って絶対緊急脱出用の抜け道があるだろ?絶対あるよな!?何かの虫みたいにカサコソと壁を這いまわっていると、ため息をつきながらラムが折れた。
「……私の執務机の床だ」
「え?本当にあるんだ!」
ラムの机の下の床板が一枚ぽこっと取れて中に下へ降りる階段が見えた。
「そうだよ!これだよ、これええ!城の外に繋がってる??」
「ああ、外壁まで繋がっているらしいが中は複雑だぞ」
「行ってみる!」
すげー!ファンタジーっぽい!!俺はラムの足元から梯子を降り始めた。
「誰か、風呂の用意をしておけ。あと少ししたら西の廃井戸に縄梯子を持って行くぞ」
「ふえええ……俺ぇ、俺ぇ!死ぬかと思ったぁーーー!」
蜘蛛の巣と臭い泥に塗れた俺は上から差し込んだ光にマジ泣きしながら拝んだ。俺の感覚では丸一日は暗くて汚い通路の中を彷徨っていたけれど、時間にしたら30分くらいだったらしい……。
俺は暗闇の迷路みたいになった通路で立派な迷子になっていた。
「だから複雑だと言ったんだ。一人で地図もなしに抜けられるほど簡単な場所じゃない」
「うう……反省した。次からはラムも行こう」
「……」
呆れ顔をされたが、俺は別の所から怒られた。
「側妃ディエス様、陛下を下町に連れて行こうとしないでください。警備するこちらの身にもなって!」
「えーーーー!」
俺の前には騎士のランス……いや、本当は帝国諜報機関の外部主任を務めるリゼロが立っていてガミガミとお小言を貰っていた。あの小さな町に送られた俺についてくる予定だった本物の騎士のランスはなんとリゼロから大金を貰ってとんずら、最初からランスに化けたリゼロがついてきていたらしい。
最初はランスとそっくりな顔と行動をしていたけれど、一緒に行く騎士達はあまりランスと交流がなかったのを利用して少しづつ変装をラムの顔に寄せて行ったらしい。
「あの時も大変でした……陛下自ら騎士のふりをして見に行くなど……あーもー思い出したくない!」
「それに比べたら夜にちょーっと抜け出して酒盛りくらい……」
「駄目ですっ!」
「良いじゃん……何のために通路があると思ってんだよ……」
「緊急脱出用です!緊急でもなんでもないでしょ!」
「ちぇー」
リゼロは頭が固いなあ。しかし俺は怒られながらも迷子になりながらも何度も何度もあの通路を行き来してとうとう城の外へ出ることを覚えたのだ!
「松明を用意してさ、蜘蛛の巣を焼き払いながら進むんだ。そんで靴は長めのブーツを履けば泥水が溜まっててもなんとかなるんだ!」
「そうか、ディエスは賢いな」
「だろう!」
俺はなんかサバイバルも出来るんじゃないか!?少し馬鹿にされている気がしないでもないが、慣れて来るとなかなか楽しかった。
「よし、ラム。今晩城を抜け出して飲みに行くぞ」
「分かった」
珍しく乗ってきたその日の夜、二人で通路を歩いて外へ出る扉を開けたら
「中々お早いお着きですね。これなら賊が城へ入っても即座に逃げ出せるでしょう、安心いたしました」
「ぎゃあ!」
目の前にリゼロが青筋を立てながら立っていて、揃って馬車に詰め込まれ強制送還されてしまった。ちくしょう!
「ラム。俺、下町の酒場とかで酒飲んでみたい」
「……酒ならもっと高級で美味いものがあるだろう。何故下町に行きたがる?」
俺、この世界に来てからあちこち行った事無いんだよ。だからどうなってるか見たいんだけど?
「良いよ、じゃあ俺一人で行くから」
付き合いが悪いとは言わない。だって俺がやってみたい事であってラムがしたい事じゃない。
俺は執務室の壁をかさかさと触っている。あと本棚!本棚の中の一冊が鍵になっててそれを「ガコン!」ってしたら、本棚が動いて秘密の通路が現れるんだろ??
ワクワクしながら確かめたのに本は全部普通の本だった……。俺の求めていた「ガコン!」はどこをどう触っても現れない……おかしい、王様のお城って絶対緊急脱出用の抜け道があるだろ?絶対あるよな!?何かの虫みたいにカサコソと壁を這いまわっていると、ため息をつきながらラムが折れた。
「……私の執務机の床だ」
「え?本当にあるんだ!」
ラムの机の下の床板が一枚ぽこっと取れて中に下へ降りる階段が見えた。
「そうだよ!これだよ、これええ!城の外に繋がってる??」
「ああ、外壁まで繋がっているらしいが中は複雑だぞ」
「行ってみる!」
すげー!ファンタジーっぽい!!俺はラムの足元から梯子を降り始めた。
「誰か、風呂の用意をしておけ。あと少ししたら西の廃井戸に縄梯子を持って行くぞ」
「ふえええ……俺ぇ、俺ぇ!死ぬかと思ったぁーーー!」
蜘蛛の巣と臭い泥に塗れた俺は上から差し込んだ光にマジ泣きしながら拝んだ。俺の感覚では丸一日は暗くて汚い通路の中を彷徨っていたけれど、時間にしたら30分くらいだったらしい……。
俺は暗闇の迷路みたいになった通路で立派な迷子になっていた。
「だから複雑だと言ったんだ。一人で地図もなしに抜けられるほど簡単な場所じゃない」
「うう……反省した。次からはラムも行こう」
「……」
呆れ顔をされたが、俺は別の所から怒られた。
「側妃ディエス様、陛下を下町に連れて行こうとしないでください。警備するこちらの身にもなって!」
「えーーーー!」
俺の前には騎士のランス……いや、本当は帝国諜報機関の外部主任を務めるリゼロが立っていてガミガミとお小言を貰っていた。あの小さな町に送られた俺についてくる予定だった本物の騎士のランスはなんとリゼロから大金を貰ってとんずら、最初からランスに化けたリゼロがついてきていたらしい。
最初はランスとそっくりな顔と行動をしていたけれど、一緒に行く騎士達はあまりランスと交流がなかったのを利用して少しづつ変装をラムの顔に寄せて行ったらしい。
「あの時も大変でした……陛下自ら騎士のふりをして見に行くなど……あーもー思い出したくない!」
「それに比べたら夜にちょーっと抜け出して酒盛りくらい……」
「駄目ですっ!」
「良いじゃん……何のために通路があると思ってんだよ……」
「緊急脱出用です!緊急でもなんでもないでしょ!」
「ちぇー」
リゼロは頭が固いなあ。しかし俺は怒られながらも迷子になりながらも何度も何度もあの通路を行き来してとうとう城の外へ出ることを覚えたのだ!
「松明を用意してさ、蜘蛛の巣を焼き払いながら進むんだ。そんで靴は長めのブーツを履けば泥水が溜まっててもなんとかなるんだ!」
「そうか、ディエスは賢いな」
「だろう!」
俺はなんかサバイバルも出来るんじゃないか!?少し馬鹿にされている気がしないでもないが、慣れて来るとなかなか楽しかった。
「よし、ラム。今晩城を抜け出して飲みに行くぞ」
「分かった」
珍しく乗ってきたその日の夜、二人で通路を歩いて外へ出る扉を開けたら
「中々お早いお着きですね。これなら賊が城へ入っても即座に逃げ出せるでしょう、安心いたしました」
「ぎゃあ!」
目の前にリゼロが青筋を立てながら立っていて、揃って馬車に詰め込まれ強制送還されてしまった。ちくしょう!
549
お気に入りに追加
7,468
あなたにおすすめの小説
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる