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36 たった二つだけ
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「……やめるにゃん……むにゅ……」
「く、くくっくくくっ!本当に言いおった!」
「……」
俺は確かに昼寝をしていた。そしてむず痒さに堪らなくなり起きたら目の前に鳥の羽根を持ったラムがいた。
「く、くく……「やめるにゃん」……くくくっ……」
マジで、マジでレーツィアはそんな事を寝ている俺に仕込んでいたのか?!
「本当に……くくくっ……」
「笑い過ぎ……」
「レーツィア嬢は本当に面白い……」
レーツィアの覚えがめでたくて良かったよ。俺のおでこには怒りの交差点が何個も浮かび上がっているはずだ。ちくしょうめ!!
おちおち昼寝も出来なくなった!
「んな事してんなら仕事しろよ!終わったのか?」
「勿論だ。お前のソロバンとやらは中々便利だな。文官達がこぞって欲しがっておる」
「今までオール筆算はねぇよな……」
国家予算から何から何まで筆算とか小学生か!なんか魂的な物が出るかと思ったよね、面倒臭すぎて。
「作ってやれば良いじゃないか」
「おいおい、な」
この似非ソロバン、ラムがどっかの商会と組んでめちゃくちゃ儲けたとか俺が知るのはだいぶ後の話だ。
「俺にも利益還元があっても然るべき!!」
と、食い下がったら
「たまにお前に渡していた小遣いがソレだが?」
「え?あ、うん……?そうなの」
それにしては少ないような?聞いた話だともっともっと儲かっているとかなんとか……。
「そう……なのかな?」
そのずっと後、やっぱり騙されていた事を知るんだけどな!!
「あのクソ野郎!!」
「ほう?夫に向かってその口の利きよう、今すぐお仕置きして欲しいのだな?」
「は?!いや、ない。ないし!ちょっ、ラム!やめ、わ、悪かった、ごめん、悪かったから!!あーーーっ!」
慣れたんだ。
俺は俺に言い聞かせている。
「ぁ……ぅん……」
「痛みはないな?」
最初はあんなに痛くて苦しくて辛かったのに、今は割とすんなり受け入れている。
「う……うん」
そして意外と気を使って俺の体の調子を聞いてくる。圧迫感はあるけれど、最初の方みたいに裂ける、切れるという感じはしないから、体が対応してしまったんだろう……もしかしたら変形したのか……怖い……自分の体がラムのせいで作り替えられているような気がしてとても怖い。
「どうした?」
「な、なんでも……ない」
耳元で囁くラムの声。優しいような甘いような思わず身をすくめてしまいそうな、こんな響く声だったか?ずくりと体の奥に埋め込まれた熱が大きくなった気がする。おかしい、今日はおかしい。
「ディエス」
ラムは俺の名前しか呼ばない。俺の名前だけ呼んで、その前後の事は察しろとそんな顔でふんぞり返っている。でもそれが許される地位にいるヤツだ、俺だって本当は分かっている。ラムに、ラムシェーブル陛下にそんな口を利いてはいけない事くらい。
「ディエス」
「……大丈夫、痛くない……よ」
「なら、良い」
そんな偉い奴なのに、ラムはなんだかんだで俺に気を使ってくれるけれど優しくはないと思う。本当に優しいなら俺が嫌だと言えば毎日しないはずなのに、根元までずっぽり埋め込んでから優しい声をかけてくる。
ラムは手に入った物しか大切にしない。ラムの過去に何があったかは分からない。しかし、今のラムに親は居ないし兄弟姉妹もいない。皇帝の血筋はソレイユ様が産んだ子供達だけ。血が遠い者はいるらしいが……間違いなく消されたんだろう。
ラムがそうしたのかどうかは分からないが、どちらにしろもう二度とラムの手には戻ってこない者達。
「ディエス……」
「ん」
俺の体を引き寄せて抱きしめる。ラムは偉い奴なのに、ラムの手の中にあるものはソレイユ様と俺のたった二つだけだった。
「く、くくっくくくっ!本当に言いおった!」
「……」
俺は確かに昼寝をしていた。そしてむず痒さに堪らなくなり起きたら目の前に鳥の羽根を持ったラムがいた。
「く、くく……「やめるにゃん」……くくくっ……」
マジで、マジでレーツィアはそんな事を寝ている俺に仕込んでいたのか?!
「本当に……くくくっ……」
「笑い過ぎ……」
「レーツィア嬢は本当に面白い……」
レーツィアの覚えがめでたくて良かったよ。俺のおでこには怒りの交差点が何個も浮かび上がっているはずだ。ちくしょうめ!!
おちおち昼寝も出来なくなった!
「んな事してんなら仕事しろよ!終わったのか?」
「勿論だ。お前のソロバンとやらは中々便利だな。文官達がこぞって欲しがっておる」
「今までオール筆算はねぇよな……」
国家予算から何から何まで筆算とか小学生か!なんか魂的な物が出るかと思ったよね、面倒臭すぎて。
「作ってやれば良いじゃないか」
「おいおい、な」
この似非ソロバン、ラムがどっかの商会と組んでめちゃくちゃ儲けたとか俺が知るのはだいぶ後の話だ。
「俺にも利益還元があっても然るべき!!」
と、食い下がったら
「たまにお前に渡していた小遣いがソレだが?」
「え?あ、うん……?そうなの」
それにしては少ないような?聞いた話だともっともっと儲かっているとかなんとか……。
「そう……なのかな?」
そのずっと後、やっぱり騙されていた事を知るんだけどな!!
「あのクソ野郎!!」
「ほう?夫に向かってその口の利きよう、今すぐお仕置きして欲しいのだな?」
「は?!いや、ない。ないし!ちょっ、ラム!やめ、わ、悪かった、ごめん、悪かったから!!あーーーっ!」
慣れたんだ。
俺は俺に言い聞かせている。
「ぁ……ぅん……」
「痛みはないな?」
最初はあんなに痛くて苦しくて辛かったのに、今は割とすんなり受け入れている。
「う……うん」
そして意外と気を使って俺の体の調子を聞いてくる。圧迫感はあるけれど、最初の方みたいに裂ける、切れるという感じはしないから、体が対応してしまったんだろう……もしかしたら変形したのか……怖い……自分の体がラムのせいで作り替えられているような気がしてとても怖い。
「どうした?」
「な、なんでも……ない」
耳元で囁くラムの声。優しいような甘いような思わず身をすくめてしまいそうな、こんな響く声だったか?ずくりと体の奥に埋め込まれた熱が大きくなった気がする。おかしい、今日はおかしい。
「ディエス」
ラムは俺の名前しか呼ばない。俺の名前だけ呼んで、その前後の事は察しろとそんな顔でふんぞり返っている。でもそれが許される地位にいるヤツだ、俺だって本当は分かっている。ラムに、ラムシェーブル陛下にそんな口を利いてはいけない事くらい。
「ディエス」
「……大丈夫、痛くない……よ」
「なら、良い」
そんな偉い奴なのに、ラムはなんだかんだで俺に気を使ってくれるけれど優しくはないと思う。本当に優しいなら俺が嫌だと言えば毎日しないはずなのに、根元までずっぽり埋め込んでから優しい声をかけてくる。
ラムは手に入った物しか大切にしない。ラムの過去に何があったかは分からない。しかし、今のラムに親は居ないし兄弟姉妹もいない。皇帝の血筋はソレイユ様が産んだ子供達だけ。血が遠い者はいるらしいが……間違いなく消されたんだろう。
ラムがそうしたのかどうかは分からないが、どちらにしろもう二度とラムの手には戻ってこない者達。
「ディエス……」
「ん」
俺の体を引き寄せて抱きしめる。ラムは偉い奴なのに、ラムの手の中にあるものはソレイユ様と俺のたった二つだけだった。
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