13 / 139
13 我が最大の福音よ
しおりを挟む
綺麗な馬車に乗せられて、俺は売られてゆく。レーツィアにも俺がディエスじゃない事を伝えている。
「ディエスじゃないのなら私が言う事分かるわね?」
と、前置きをしてから事の真相を教えてくれた。やはり男爵令嬢ミリアーヌはエイダン派の重鎮……いや、宰相一派から送られた令嬢モドキであった。ディエスを篭絡し、その後ろ盾であるレーツィアの公爵家から引き離すために一芝居打ったという所だ。
「私はこう見えてディエスの事を気に入っていたから、ディエスを王にしてあげたかった……でも我がヘッジ公爵家でそれは許されなかった……」
レーツィアの実家である公爵家がそうと決めた、ならばどうする事も出来なかったという事か。
「そうか……じゃあ、仕方がない。今までありがとう、レーツィア。俺はあんまり覚えてないけど、君の顔を見るとなんだが心が暖かくなるし、ぴょんぴょん弾むよ。ディエスは馬鹿だけどやっぱり君が好きだったみたいだ」
レーツィアは大きくて丸い瞳を更に大きく開いてから、極上の笑みを浮かべてくれた。
「私も、私もディエスの事が大好きだったわ!可愛い私のディエス、幸せになんて虫のいい事は言えない。でも、一つくらいいい事を見つけられる事を祈ってるわ」
「本当にありがとう、レーツィア」
レーツィア・ヘッジ公爵令嬢は本当に心も美しい公爵令嬢だった。
「俺に付き合って飛ばされて戻ってきたマーキスとクリスを何とか保護してやってくれないか?それだけが心残りだ」
そう言うとまた悲しそうな顔をしてから、約束してくれた。
「貴方は……こらから大変なのは貴方なのに、どうして騎士の心配なんて……でも良いわ、それくらい大丈夫よ。安心してちょうだい」
「ありがとう、これで綺麗さっぱり売られる事ができるよ」
「良い事?せいぜい高値で売りつけるのよ。なんなら初夜に短剣で切り掛かっても良いんだからね?」
「はは!気に入らない顔ならボコボコにしてやるよ!」
出来もしない夢想にひとしきり笑い合う。
「……どうして、婚約破棄の前に貴方に入れ替わらなかったのかしら……そうすればディエスはこの国でゆっくり過ごせた……」
「中の人が変わっても?」
「神とは時に酷い采配をなさるものね……」
レーツィアが言う酷いは何を指すのか、俺が帝国へ売られる事か、はたまた罠にかかって婚約破棄を叫んだことか、中身が入れ替わった事か……この身分に生まれたのにこんな風に育てられた事か……すべてかもしれない。
「時は巻き戻せないものだ」
「我らは只人なのですものね」
そしてレーツィアは帰って行った。きっと今生の別れになるだろう。ディエスはなんて素敵な女性に好きになって貰えたのか、彼女がいた事こそがディエス最大の福音だった。
「ざまぁが見たい……ね。神とは時に酷い采配をする」
レーツィアの言葉を繰り返す。それでも神は神であり、我々は人であるのだった。
「ディエスじゃないのなら私が言う事分かるわね?」
と、前置きをしてから事の真相を教えてくれた。やはり男爵令嬢ミリアーヌはエイダン派の重鎮……いや、宰相一派から送られた令嬢モドキであった。ディエスを篭絡し、その後ろ盾であるレーツィアの公爵家から引き離すために一芝居打ったという所だ。
「私はこう見えてディエスの事を気に入っていたから、ディエスを王にしてあげたかった……でも我がヘッジ公爵家でそれは許されなかった……」
レーツィアの実家である公爵家がそうと決めた、ならばどうする事も出来なかったという事か。
「そうか……じゃあ、仕方がない。今までありがとう、レーツィア。俺はあんまり覚えてないけど、君の顔を見るとなんだが心が暖かくなるし、ぴょんぴょん弾むよ。ディエスは馬鹿だけどやっぱり君が好きだったみたいだ」
レーツィアは大きくて丸い瞳を更に大きく開いてから、極上の笑みを浮かべてくれた。
「私も、私もディエスの事が大好きだったわ!可愛い私のディエス、幸せになんて虫のいい事は言えない。でも、一つくらいいい事を見つけられる事を祈ってるわ」
「本当にありがとう、レーツィア」
レーツィア・ヘッジ公爵令嬢は本当に心も美しい公爵令嬢だった。
「俺に付き合って飛ばされて戻ってきたマーキスとクリスを何とか保護してやってくれないか?それだけが心残りだ」
そう言うとまた悲しそうな顔をしてから、約束してくれた。
「貴方は……こらから大変なのは貴方なのに、どうして騎士の心配なんて……でも良いわ、それくらい大丈夫よ。安心してちょうだい」
「ありがとう、これで綺麗さっぱり売られる事ができるよ」
「良い事?せいぜい高値で売りつけるのよ。なんなら初夜に短剣で切り掛かっても良いんだからね?」
「はは!気に入らない顔ならボコボコにしてやるよ!」
出来もしない夢想にひとしきり笑い合う。
「……どうして、婚約破棄の前に貴方に入れ替わらなかったのかしら……そうすればディエスはこの国でゆっくり過ごせた……」
「中の人が変わっても?」
「神とは時に酷い采配をなさるものね……」
レーツィアが言う酷いは何を指すのか、俺が帝国へ売られる事か、はたまた罠にかかって婚約破棄を叫んだことか、中身が入れ替わった事か……この身分に生まれたのにこんな風に育てられた事か……すべてかもしれない。
「時は巻き戻せないものだ」
「我らは只人なのですものね」
そしてレーツィアは帰って行った。きっと今生の別れになるだろう。ディエスはなんて素敵な女性に好きになって貰えたのか、彼女がいた事こそがディエス最大の福音だった。
「ざまぁが見たい……ね。神とは時に酷い采配をする」
レーツィアの言葉を繰り返す。それでも神は神であり、我々は人であるのだった。
1,034
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる