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14 飼っておいて正解だった(宰相視点
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ディエスという第一王子の扱いに宰相は困っていた。中々出来ぬ世継ぎにイライラし、美女と名高い子爵の娘をほぼ無理やり王の側妃へとあてがった。美しい紫の髪に聡明な青い目の令嬢。小さい頃から婚約者がいて仲睦まじいと聞いてはいたが、婚約者も所詮子爵の身分。王命には逆らえない。
金と権力で口を閉じさせ連れてくれば、王はすぐ夢中になった。若い令嬢を可愛い可愛いと年甲斐もなく行く晩も通いつめ、こちらの予想通りすぐに子供を身ごもった。そして周囲の期待通りに男子を出産する。
「これで血は繋がる」
男の子はディエスと名付けられ、母親と同じ紫の髪に、王家の血を現す金の瞳をしていた。色合いも王族らしくて素晴らしい。期待以上の赤子の誕生にほっと胸を撫でおろす。ディエス王子は特に才覚に秀でた所は見つからないが、5歳の時に同じ年のヘッジ公爵令嬢に惚れられる。
「わたくし、ディエスさまのこんやくしゃになりとうございます!」
「ぼくもレーツィアのことすきです」
側妃が子爵の出だ、後ろ盾が欲しい所。なんとちょうど良いかとその婚約は了承され、ヘッジ公爵令嬢はそこから王子妃教育を、そして一緒にディエス王太子も勉強を始めた。
しかし、面倒な事に正妃が妊娠し、男子を出産したのだ。その子はエイダンと名付けられ、ディエス王太子とは6歳差。こちらは茶色の髪に薄茶の瞳という現王と同じ色合いを受け継ぐ……顔の造形は美女である子爵令嬢の血を濃く受け継いだディエス王太子の方が数段優れているが、現王に似ているのはエイダン王子であり……彼の後ろ盾は非常に強力だった。正妃は金も人脈もある公爵家の出である。
ディエス王子は後ろ盾が弱い……。
臣下は割れた。そして私はエイダン王子派についたのだ。
エイダン王子が生れてから、ディエス王子の教育は……ほぼしなくて良い事になり、わざと無能王子を作る事になる。ヘッジ公爵にだけは暫く伏せたが、後に明かして協力も取り付けた。ただ、公爵令嬢はディエス王子を好いているようで、見捨てたくないと駄々を捏ねているようだった。
しかし、たかが令嬢。当主である公爵が決めれば何も出来ないのだ。
そうしてディエス王子は廃嫡される。遠くの領地へ「療養」に出した後、私はとても驚いたのだ。
「ディエス王子を我が元へ」
そういう手紙がたくさん舞い込んできたのだった。
「どういう……そういえばアレは見目が……良いな」
馬鹿の無能だが、傍において眺めて……夜のオモチャには良いのかもしれん。いや、無能だからこそ良いのだろう。私は素早く手紙に返事を出す。今小さな領地にいる事、たくさんの申し出がある事。
「見極めてください、そして一番の高値を付けた方にお譲りしましょう」と。
ディエス達は気づいていなかったが、あの半年はディエスがどこに売られるか決める為の時間でもあったのだ。そうして多額の金を積んだ南の大帝国の皇帝がその身を譲り受けることに決まったのだった。
「帝国との縁も出来、金も手に入った。あの無能を飼っておいて損はなかったな」
そう、ほくそ笑む。
金と権力で口を閉じさせ連れてくれば、王はすぐ夢中になった。若い令嬢を可愛い可愛いと年甲斐もなく行く晩も通いつめ、こちらの予想通りすぐに子供を身ごもった。そして周囲の期待通りに男子を出産する。
「これで血は繋がる」
男の子はディエスと名付けられ、母親と同じ紫の髪に、王家の血を現す金の瞳をしていた。色合いも王族らしくて素晴らしい。期待以上の赤子の誕生にほっと胸を撫でおろす。ディエス王子は特に才覚に秀でた所は見つからないが、5歳の時に同じ年のヘッジ公爵令嬢に惚れられる。
「わたくし、ディエスさまのこんやくしゃになりとうございます!」
「ぼくもレーツィアのことすきです」
側妃が子爵の出だ、後ろ盾が欲しい所。なんとちょうど良いかとその婚約は了承され、ヘッジ公爵令嬢はそこから王子妃教育を、そして一緒にディエス王太子も勉強を始めた。
しかし、面倒な事に正妃が妊娠し、男子を出産したのだ。その子はエイダンと名付けられ、ディエス王太子とは6歳差。こちらは茶色の髪に薄茶の瞳という現王と同じ色合いを受け継ぐ……顔の造形は美女である子爵令嬢の血を濃く受け継いだディエス王太子の方が数段優れているが、現王に似ているのはエイダン王子であり……彼の後ろ盾は非常に強力だった。正妃は金も人脈もある公爵家の出である。
ディエス王子は後ろ盾が弱い……。
臣下は割れた。そして私はエイダン王子派についたのだ。
エイダン王子が生れてから、ディエス王子の教育は……ほぼしなくて良い事になり、わざと無能王子を作る事になる。ヘッジ公爵にだけは暫く伏せたが、後に明かして協力も取り付けた。ただ、公爵令嬢はディエス王子を好いているようで、見捨てたくないと駄々を捏ねているようだった。
しかし、たかが令嬢。当主である公爵が決めれば何も出来ないのだ。
そうしてディエス王子は廃嫡される。遠くの領地へ「療養」に出した後、私はとても驚いたのだ。
「ディエス王子を我が元へ」
そういう手紙がたくさん舞い込んできたのだった。
「どういう……そういえばアレは見目が……良いな」
馬鹿の無能だが、傍において眺めて……夜のオモチャには良いのかもしれん。いや、無能だからこそ良いのだろう。私は素早く手紙に返事を出す。今小さな領地にいる事、たくさんの申し出がある事。
「見極めてください、そして一番の高値を付けた方にお譲りしましょう」と。
ディエス達は気づいていなかったが、あの半年はディエスがどこに売られるか決める為の時間でもあったのだ。そうして多額の金を積んだ南の大帝国の皇帝がその身を譲り受けることに決まったのだった。
「帝国との縁も出来、金も手に入った。あの無能を飼っておいて損はなかったな」
そう、ほくそ笑む。
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