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3.君は嵐のように僕の心を乱す
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そこから説明が必要なのか、と肩を落とす。うんざりしながらひとつずつ順番に着方を教えていく。僕も大して背が高いわけではないけれど、小柄な鈴音ではズボンの裾をだいぶ引きずってしまうようだった。何回かロールアップすると、鈴音の足の裏が見えた。女の子の足ってこんなに小さいんだと驚く。縦の長さだけじゃなくて、横幅や厚みもそんなになく、ころんとしていて可愛らしい。
「タクミ、これだと動きづらいよ。あついし。どうして着なきゃいけないんだ」
「人間は服を着るんだよ。裸で外になんか出たら、捕まるよ」
「ニンゲンって面倒な生き物だな」
ぱたぱたとTシャツの裾を揺すって、涼を取ろうとする鈴音。動かす度にへそが見えて、慌てて鈴音の手を掴んだ。
「鈴音、これから外出たらそれもやっちゃだめだから」
「えー、あついよお。どうしてだめなんだ?」
「鈴音は今、すっごく可愛い女の子なの。そんな子がお腹とか見せたりしたら……とにかく、あぶないんだよ!」
「タクミ、可愛いって言ったか?」
瞳を輝かせて詰め寄ってくる鈴音を見て、しまったな、と思った。
「そうだよ、鈴音は世間一般的に見て、可愛い。で、可愛い女の子が無防備だったりすると良からぬことを考える男が世の中にはいっぱいいるの。僕みたいに、ただでごはん与えてくれる人間のほうが貴重だと思ったほうがいいよ」
「そうか。でも、タクミが守ってくれるだろ? それに、鈴音はタクミが大好きだから、いっぱい撫でてくれて構わない。タクミだけは、トクベツに許す」
胸のあたりにぐりぐりと顔を擦りつけてくる鈴音。ふりふりと揺れる尾のような髪に誘われるように手を伸ばすと、鈴音が満面の笑みで見上げてきた。とくり、と跳ね上がった心臓に、僕は気づかないふりをした。
「タクミ、これだと動きづらいよ。あついし。どうして着なきゃいけないんだ」
「人間は服を着るんだよ。裸で外になんか出たら、捕まるよ」
「ニンゲンって面倒な生き物だな」
ぱたぱたとTシャツの裾を揺すって、涼を取ろうとする鈴音。動かす度にへそが見えて、慌てて鈴音の手を掴んだ。
「鈴音、これから外出たらそれもやっちゃだめだから」
「えー、あついよお。どうしてだめなんだ?」
「鈴音は今、すっごく可愛い女の子なの。そんな子がお腹とか見せたりしたら……とにかく、あぶないんだよ!」
「タクミ、可愛いって言ったか?」
瞳を輝かせて詰め寄ってくる鈴音を見て、しまったな、と思った。
「そうだよ、鈴音は世間一般的に見て、可愛い。で、可愛い女の子が無防備だったりすると良からぬことを考える男が世の中にはいっぱいいるの。僕みたいに、ただでごはん与えてくれる人間のほうが貴重だと思ったほうがいいよ」
「そうか。でも、タクミが守ってくれるだろ? それに、鈴音はタクミが大好きだから、いっぱい撫でてくれて構わない。タクミだけは、トクベツに許す」
胸のあたりにぐりぐりと顔を擦りつけてくる鈴音。ふりふりと揺れる尾のような髪に誘われるように手を伸ばすと、鈴音が満面の笑みで見上げてきた。とくり、と跳ね上がった心臓に、僕は気づかないふりをした。
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