魔王国の宰相

佐伯アルト

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Ⅲ 帝魔戦争

8節 戦後譚 ④ (R18)

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「んっ……ここは?」
「やあ、ようやくのお目覚めかな。おはよう」

 テミスが目を開けると、そこには祖国を荒らした憎き、被害を聞いた限りそれほどでもなくなった、あの男が脚を組んで座っていた。そして、自分が拘束されていることに気づく。

「なっ、なんだこれは⁉︎」

 腕は天井から垂らされた縄に吊るされ、足はそれぞれ鎖で繋がれた錠が嵌められていた。拘束を解こうともがくが、しっかり固定されていて動けない。

「逃げられないよ。無駄な抵抗はやめたまえ」

 彼、エイジが椅子から立ち、歩み寄って来る。テミスもやや落ち着きを取り戻し、状況を把握しようとする。

「ここは何処だ……今は、何時だ……」
「ここは魔王城地下一階の牢で、大体夜の十時頃。時差を考慮すると、寝ていたのは六時間強かな?」

 まだ、大して時間は経っていない。そして、攫われ眠らされる直後のことまで思い出す。

 場所と時間と状況も理解した。次は、自分の体の状態を確認する。ヴィクトリアやレガリアなどの武装は、全て取り上げられているようだ。今の装備は、鎧の下にインナー代わりに着ていたワンピースのみ。彼の言葉通り、抵抗は無駄らしい。

 とはいえ、体は異様に楽だった。戦闘のダメージや鎧の反動は無く、そして六時間も吊るされた割には苦痛がない。となると……と、ここで甘えた結論に至ってしまう。だが、そんなはずはなかろうと首を振り、兎も角反抗する。

「私をどうするつもりだ!」
「そうだねぇ、もう予想はついてるんじゃないかな?」

 魔王国の宰相は、外套とグローブを取り、姫の真正面に立つ。

「キミ、魔王国に屈しないか?」
「ッ! ふざけるな! 誰が、我が祖国を荒らした貴様らなどに!」

 思い出した。攫った直後、そんなことを言っていた。当然拒絶する。

「そうか、やっぱりそうなるか……。拷問は嫌なんだけどね、仕方ないか」

 そう言うと、彼は慈しむように、美姫の頬に手を添える。その感触は、不快ではない。だが、この人を受け入れるわけにもいかない。テミスは複雑な感情を抱く。

「貴女は芯の強い女性だ。そして、オレは知っている。意思の堅い人に、ただの苦痛を与えたところで決して屈しやしないと。先刻の戦いでもそうだった、君は折れなかった。だから、オレが与えるのは苦痛じゃあない。辱めだよ」

「なんだと⁉︎ くっ……敵に辱められるくらいならば、いっそ殺せ‼︎」

 そう皇女が吐き捨てると、彼は一瞬驚いた表情をし、そしてニヤリと笑った。

「悪いが、そうはできない。なにせキミは、美しいからね。殺すのは勿体ない」
「なら、舌を噛み切るまでだ!」
「おっと危ない!」

 すると彼は何処からか布を取り出し、彼女に噛ませた。

「んー! んー!」

「そういうことをするのも、おおよそ想定済みだ。まあ、間に合わなかったとしても、魔術を掛けて回復させたんだけど。それから、一ついいことを教えてやろう。舌を噛み切っても、人は死なんぞ? 噛み切った舌や出血が喉に詰まって窒息するからであって、舌がないと息が出来ないとか失血死したりなんてことはない。むしろ、滅茶苦茶痛い思いした挙句、キミのだ~い好きな食事の味がわからなくなるだけ。何の意味も無い」

 そんな雑学を示しながら、軽く身震いしていた。どのような苦痛なのか想像してしまったらしい。つくづく向いていなさそうだ。

「さて、いくらかしたら外してあげよう。だが、自害しようだなんて思うなよ。苦痛が増すだけだからな。自害など、相当の覚悟がいるはずだからね」

 それでも視線は、目前の敵を睨めつけたままだ。

「ふむ、やはり投降の意思はなさそうだね。では始めるが、その前に二つほど確認だ」

 猿轡を外す。姫騎士は再び舌を噛もうとするが、やはり彼の言う通り無駄なことだろうと諦め、質問に答えることにした。

「やはり貴様は、このようなことを平気でするのか。見所があると思ったが、失望したぞ」
「おおっと、それはすまないことをしたね。悪いけど、オレも戦の準備やらで相当ストレスが溜まってんだ」

「この下衆が……!」
「では、まず一つ。キミに恋人はいるかな?」

 顎に手を当てながら訊く彼の質問の内容に、テミスは戸惑う。

「……フン、いませんね。もう少し後なら、許婚でもいたでしょうけど」

 何故そんなことを訊くのか、まさか……と思うが、即棄却。目の前にいるのは、血も涙もない悪漢に違いないのだから。

「ほう、ならその辺りは心配ないな。ボクは人の女に手は出さない主義なんだ。では二つ目。君は処女か?」

 テミスの思考が固まる。

__今、彼は、なんと言った? 人の女に……いや、ともかく次の質問に……て、なんだこの質問⁉︎__

「さあ、どうでしょうね」
「答える気はない……と。デリカシーの無い発言であることは認めるが、嘘でも処女と言えばいいものを。そしたら、手加減してあげたのに……」

 そう言うと後ろに回り込み、軽く抱きしめ、耳元で囁く。彼女の体は、軽く震えた。遂に、始まるのかと身構える。

「本当に、屈しないんだね? 今ならまだ間に合うよ? 大人しくしてくれれば、こんなことしなくて済むんだ」
「はっ、好きにするがいい。私は誇り高き帝国の姫騎士! 貴様ら魔王国になど、決して屈しない‼︎」
「……ホントの本当に、いいの?」

 いざ触れようかという直前に、手が止まる。こんなことはしたくないとばかりに、だいぶ躊躇しているようだ。

「ふ、ふん。どうした、来ないのか」

 再三の確認に焦らされ、業を煮やしたかテミスがエイジを煽る。

「へぇ、欲しいんだ? まさか、こういうシチュエーションを実は期待していたりとか?」

 エイジも負けじと言い返す。対するテミスは、焦ったように顔を赤らめた。

「ま、まさか! そんなことがあるか!」
「……ま、だよね」

 その返答に、少々悲しそうに目線を落とした。

__……むーッ! なんなんだコイツ!__

 調子が狂って仕方ない。彼には、会ってからずっと情緒をメチャクチャにされっぱなしだ。

「そう、なら効果もあるだろうね。じゃあ、始めるよ」

 だが、問答はここまで。いよいよ彼は手をテミスの乳房へと動かすと、撫で始めた。

「うっ……くっ……」

 服の上からとはいえ、胸を触られることへの恥辱と、不思議な感覚に声が漏れる。徐々に体は熱を帯び、心臓が動悸していく。暫く撫で回された後、今度は軽く揉まれ始めた。そして、数分間揉んだかと思うと、突然彼は手を止めて、正面に回りこみ、短剣を取り出す。

「はぁ……はぁっ……それで、どうするつもりだ……?」
「こうするのさ。よっと」

 彼はテミスの纏う服を裂き始めた。肌に傷一つつけることなく丁寧に、下着以外を全て取り除く。すると、彼女の綺麗な体のラインが顕となった。筋肉の筋が見えるほど鍛え上げられ、引き締まっているが、出るところは出ている。均整の取れた美しい体つきだ。

「もう、後戻りはできないからね」

 エイジは見惚れかけながらも、最後の警告をすると、彼も服を脱いで上半身裸になり、また後ろから密着して、下着越しに触り始める。

「んっ……んっ……」

 声を堪えているが、触られたことで胸は敏感になり、否が応でも興奮が増していく。息は軽く乱れ、素肌で密着している為に、相手の男を感じてしまう。身を捩れば、その感覚は更に強く。

 また数分間胸を揉まれ続け、体中に、前のちょっとした違和感とは異なる、快楽が流れ始める。すると彼は唐突に手を止めて、片手を下に滑らすと、下着の上から筋をなぞる。そこを数度往復すると、今度は陰核を中指の腹で擦り始めた。

「ふぅっ……んんっ……」

 敏感になった身体の、特に敏感なところを触られ、軽く身を捩らせる。撫でられるたびに、快楽がゾクゾクと背中を上っていく。抵抗も、逃げることさえできなくて、声を抑えるのが難しくなってきた。

「おや? 濡れてるね。いいのかな? 憎んでいるはずの敵に触られて、感じちゃって」

 耳元で、奥に響く、低い声での言葉責め。近い顔からの匂いも強い。もう片方の手は、口に指を入れてきていて。五感で相手を感じてしまう。

「かんじて、なんて…いなっ…………あっ……」

 つい、甘い声が溢れてしまった。すると、彼は遂に下着を切り、取り去ってしまう。これで、彼女の身を包むものはなくなった。カタチの良い胸や臀部も、全てが晒される。

「あー、そうそう。オレ実は、インキュバスの力を持っているんだよね。だからさ……それを口実に逃げてもいいよ。オレのポリシー的に、行為にはそういった能力を使わないとしても、ね」

 テミスは、身を守るものが何もない、生まれたままの姿にさせられた。そして、彼の手の全てが、無防備な皮膚に当たってしまう。

「ふ……うぁ……あぁっ……」

 乳房の全てが、直に撫で回される。服や下着の上から触られるのとは全く異なる感触が、脳を蕩けさせていく。体温、手のシワさえ感じ取れるほどに、敏感に。

「ひぁっ! ひゃうぅ⁉︎」

 彼に耳を甘噛みされ、乳頭を摘まれて、変な声が口を衝く。

「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 今度は先っぽの敏感なところばかりを摘まれ、しごかれ、責められる。目の前で蹂躙されていても、なす術などなく。指が動くたび流れるその強い刺激に、彼女は身体をくねらせることしかできない。

 そして遂に彼の手が、女性の一番大事なところに添えられる。蜜壺は既に濡れそぼっていて、愛液が滴り、足を伝い、床には水溜りができていた。そのためか、指はなんの抵抗もなく、すんなりと穴に入っていく。

「あっ、あっ、あーっ……!」

 今まで誰にも侵されたことのない膣を、指が掻き分けていく。今まで躰をじっくり責められて、敏感になり過ぎた膣壁。そこを指が擦る度に、身体が震え、甘い声はとうに我慢などできなくなっていた。

「やっ……やぁぁ……」

 指は弱点を探るように、壁のあらゆるところを擦る。

「どうしたんだ…? 甘い声……、出ちゃってるよ……?」

 責めているエイジでさえも呼吸を乱し、愛撫している女性を気持ちよくしようと、指を丁寧に動かしていく。それにテミスは、自分で興奮してくれているのが嬉しい、という思いを抱いてしまった瞬間、感覚がガラリと変わってしまった。

「やっ…! それっ……ダメッ!」

 右手でナカを擦っていたとき、手持ち無沙汰だった左手が、下腹部の突起、女の子の弱点に添えられる。そして、先と一転、摘まれ激しく責め立てられる。

「やっ……あっあっあっ……らめ…イクッ! イッ……く、あああぁぁァ‼︎」

 限界まで高まった快楽が弾け、身体が跳ねる。そして暫く、ピクピクと悶える。

「ハッ……ハッ……はぁぁぁぁぁぁ……」
「あーあ、イッちゃった。ダメじゃないか。屈しないんじゃなかったっけ?」
「あっ、甘イキ、しただけだ…! まだ、屈してない!」

 蕩けながらも必死に抗うその様に、エイジの嗜虐心はくすぐられ、いじわるしたくなってしまう。

「そうかそうか、じゃあ、もっと責めないとね?」
「えっ…まって……ちょっと、やすませ__ぃやぁん!」

 エイジは、今度は正面に回り込んで、やや屈んで乳首に吸い付き。舐めたり、吸ったり、甘噛みしていく。そして右手でもう片方の胸を、左手でクリを優しく責める。指とは違う、温かく湿った、少しざらざらとした感覚が敏感な突起を撫でるたび、先ほどより強い快楽が身体を貫く。

「ひぁっ! いまっ…イッたばかりで……びんか……ふあぁァーー⁉︎」

 絶頂直後で感度が高まっていたためか、テミスは胸だけで達してしまったようだ。

「ハァーッ…ハァーッ……ハァッ………」

 息を大きく乱す皇女。その隙にエイジは首筋にキス、からの鎖骨あたりを甘噛みする。

「ふふっ、分かっちゃった。テミス、キミ、自慰をしたことはあるんだね? だって、処女にしてはだいぶほぐれてるし、よく感じてる。……しかも、そこそこの頻度のようだなぁ。感度って、何度もいじって開発しないと上がらないもの。生真面目な騎士さんが、こんなんでいいのかい?」
「わ、私の発散方法は鍛錬だ! そのような、ふしだらな行為など……など……」

 テミスは先ほどとは違った意味で顔を赤らめ、目を逸らす。

「じゃあ、少し激しくても大丈夫かな? よっと」
「きゃあ!」

 足元の鎖の固定が解除される。すると、足がやや前上に引っ張られ、宙吊りに。どうやら鎖も天井まで繋がっていたようだが、そんなことよりも、なかなかに屈辱的な体勢だ。

 今度エイジは彼女の両足の間に入ると、やや屈んで、股に顔を近づける。そして、指で割れ目を広げた。

「綺麗なピンク色だね。あーあ、ビチョビチョで、いやらしくヒクヒクしちゃってるよ。この欲しがりちゃんめ」
「いやっ……そんなとこ……見ないで…!」

 ほんの数秒間だが、彼女にとっては、何分も見られているかのように感じられた。そして、彼の顔がさらに息が当たる程までに近づき、舌が割れ目に軽く触れる。

「ひああ!」

 撫でられた瞬間、身体が跳ねた。さらに顔が近づき、ついに彼は割れ目にキスをした。そのまま中に舌を挿れていく。

「んああぁぁ……!」

 女性の一番大事で一番敏感なところが、今まで全く感じたことのない感覚で蹂躙されていく。彼は舐めるだけでなく、汁を啜り、クリトリスを歯で甘く噛んだり、吸ったり、舌先で弄んだり包んだりしていく。その度に、ピチャビチャといやらしい水音がする。その快楽に、テミスは手を強く握りしめ、歯を食いしばり、目を固く閉ざして耐えようとする。しかし、そんなことに意味はなく、無力にも腰を震わすことしかできない。寧ろ、目を閉じることで、耳や下半身の感覚に敏感になってしまい、逆効果であった。

「いやっ! またっ……くるっ! 深いの、きちゃうーー!!!」

 甲高い声で絶叫。強張り痙攣すると同時に、透明な汁が勢いよく噴き出してしまった。

「んっ……はぁっ、はぁっ……やぁぁ……」

 何度か絶頂したことで皇女の体の力が抜けたことを確認した宰相は、脅威はないと判断し、彼女の拘束を解錠した。

 今の彼女は、床にへたり込んで、頬を上気させ、目は潤み、胸は大きく上下し、湿った荒い息を吐いている。蜜壺からは、絶えず粘り気を帯びた液が滴り、身体は汗、涙、そして唾液などで濡れ、淫靡な光沢を映す。これは、完全にサカっている。このような状態の女が目の前にいたのならば、誰とて非常に情欲をそそられることだろう。

「本当に…屈する気は、ないんだね? 本番、することになっちゃうよ……?」
「ここまできて……んっ……屈する…もの、か……あぁ…ん………」

 残念ながら、最早その言葉に説得力など無い。彼女の顔はトロトロに蕩け、物欲しそうな上目遣いで。先程までの姫騎士の凛々しさなど微塵も残っておらず、そこにはただ一人の発情した女、否、メスがいるだけだった。

「場所、移そうか。相応しい場所に、ね」

 そう言うと、エイジはテミスをお姫様抱っこし、人目につかないよう最短距離かつ超速で、地下牢から外に出る。そこから城の壁に所々にある突起を足場に、四階の宰相の自室へと窓から入る。そして、ベッドにお姫様を放り投げた。

「きゃあ!」

 放り投げられたテミスは、ベッドで二回ほど軽くバウンドして収まった。いきなりのことで驚いたが、もうそういうことをするのだと分かっているので、起き上がらず、行為が始まるのを待っている。

 その彼女に、ちょうど窓から月の光が当たる。滑らかで引き締まった黄金比とも言えるような女体が薄明かりに照らされ、非常に幻想的だ。その光景は、名画になっていたかもしれない。その本人が発情し、犯されるのを今か今かと待ち侘びていなければ、だが。

 ベッドに寝そべり、ドキドキしながら待っている彼女に影がさす。その影は彼女に覆い被さり、唇を塞いだ。

「んっ…チュッ…………ぷはっ……なぜ、キスしたのですか?」
「オレはキスすらしていないのに、体を交わらせるのは嫌だからだ。順番通りに、ね」

 意外とロマンチストなところに驚く。拘束されて辱められる、強姦のはずなのに優しく丁寧に愛撫し、乱暴なことはせず、行為が嫌なら屈するという逃げ道も用意してある。さらに、ここに至るまでに再三再四投降を勧告して、犯すのを躊躇ってすらいた。非常に紳士的なレイプだった。そしていまや受け入れてしまっていることで、殆ど和姦となっている。

「最後の警告だよ。君が魔王国に屈しないというのなら、このまま無理矢理犯す」

 遂に、彼も全ての服を脱いだ。

「んっ……」

 それに対し彼女は、指で秘部を軽く広げ、期待するように目を見つめて応えた。

 彼の肉棒が秘部にあてがわれる。そして、膜をゆっくり貫いた。

「……っく、ああっ…!」

 彼女の中は、トロトロに蕩けきっており、挿入されただけで軽い絶頂を迎える。痛みはほとんど感じず、少しの違和感と、大きな快楽で全身が満たされた。少しでも快楽に耐えるため、シーツを全力で掴む。対するエイジは気遣うように、熱すぎる中をゆっくりと奥まで進んでいく。

「ぜんぶ、入った……?」
「ちょっと待ってね……」
「……なにを?」

 彼は相手のお腹に手を当て、魔術を発動させた。

「妊娠させたら悪いからね、避妊用の魔術だ」

 そういうところまできちんとしている。もう彼女は彼を信頼し切り、なんの抵抗もなく身を委ねた。

「もう大丈夫か? 動くぞ……」
「うん……きてぇ」

 ゆっくりと抽送が始まる。彼女はシーツから手を離し、手と足を彼の体に絡めた。

「あっ……あっ……! ひれつ……! げどぉ! さいてー……にゃああぁぁぁ、それ、しゅきぃ」

 一定のリズムで腰が打ち付けられ、突かれる度に彼女から甘えた声が出る。二人は正常位で行為し、長く目が合うと、テミス自らキスをした。拘束しての辱めのレイプなどどこかに行き、そこではただの恋人同士のような営みがなされていた。

 もう彼女の顔は幸せそうだ。全身が多幸感と快楽に支配されている。しかし、彼女はあることを忘れていた。そして彼は、どのようにして為すか、愛撫していた間、理性を飛ばすことなくずっと考えていたのだ。

 頬を撫で、胸を揉み、キスをして、的確に弱点を責め続けるエイジ。テミスもそれを求め受け入れ、共に昂り、抽送も速くなっていく。

 そして遂に、テミスの中で快楽が最高潮まで高まり、果てに__

「くる…イクッ……イクッ、イッちゃっ__……えっ…⁉︎」

 唐突に、彼の腰が止まった。絶頂の直前で刺激がなくなったことで混乱し、頭がおかしくなりそうだ。蕩け切った思考が冷めて元に戻っていき、彼女は寸止めされたことに気付いた。

「えっ……なんでっ……⁉︎」

 震え、泣きそうな声で問う。

「テミス、魔王国に屈しろ。もしお前が屈しないなら……お前をイかせてあげない」
「!!?」

 最悪のタイミングで、最悪の選択肢を突きつける。押してためなら引いてみろとはこのことだ。ただ乱暴にレイプされるだけなら耐えられるが、イチャイチャと、愛あるセックスをした上で寸止めと、この選択肢だ。最高潮まで高まってのお預けは、今の彼女にとって最大級の苦痛だ。

「わっ、わたしは………」

 イきたいし、ほとんど彼と魔王国を認めてしまっている。しかし、最後に残った矜持が、決断を渋らせる。

「ふふっ、どうするんだ? うり、うり」
「いやっ……やめ…んあああ……っく、イけ、ないぃぃ……! いじわるしないでぇぇ」

 奥の弱いところをグリグリと責められるが、攻めが絶妙で、本当の直前、最悪のタイミングで止められる。発散できず暴れる快楽による苦痛と矜持の板挟みになり、決断できず、ぐちゃぐちゃに泣きじゃくるテミス。それがエイジの嗜虐心を煽り、責めが更に非道くなる。そして、遂に__

「くっしゅる! くっぷくひましゅ! だかりゃ……イかせてぇ‼︎」

 遂に折れてしまった。絶頂させて貰えるよう、泣きながら懇願する。

「よしよし。じゃあ、思いっきり逝かせてあげよう!」
「あっ、あっ、ハああああァァァ!!?」

 今までとは全然違う激しさで弱点を突かれ、寸止めで溜まりに溜まった快楽と合わさって__

「ダメッ、ダメッ、らめぇ! イクッ! イクッ! イッッッくうううゥゥゥ!!!」

 彼女の快楽は大爆発を起こした。



「ハアアァァァ…………ハアアァァァ…………ハアアァァァ………」

 絶頂した直後、テミスは体を大きく仰け反らせ、爪を立てながらエイジの体を力一杯抱きしめた。暫く経っても身体の痙攣が止まらず、胸も大きく上下していた。意識も混濁したかのように曖昧だったので、壊れてしまっていないか、エイジは相当不安だった。

「だ、大丈夫か? やり過ぎちまった……」
「うぁ………あぁ……はい、だいじょうぶ…です……。………ああ、遂に、屈してしまったぁ……チュッ…」

 うっとりとした表情で見つめ合い、また唇を重ねる。テミスは多幸感に包まれて、快楽の余韻に浸る。手を恋人のように繋いで、首筋に顔を埋め、舐め、匂いを嗅ぎ、頬擦りして。彼の感覚すべてを体に刻むように、堪能する。そんな甘々の姫騎士ちゃんに、彼の槍は再び怒張する。

「ところで、オレ、まだ満足してないんだけど……いいよね? 後二、三回、させてもらおうか」
「えっ、まっ、待ってください! まだ、だめ……ああああぁっ!」

 エイジが満足し、テミスが疲れて寝落ちするまで小一時間ほど、甘々イチャイチャな行為は続いたのだった。
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