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第二章 失恋
4:ドレス選び
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「リリカは、キャサリンに比べて顔が質素だし醜いそばかすもあるから、顔に目が行かない様に胸元に大きなリボンをつけるのはどうかしら?」
リリカは、ローズとキャサリンと三人で、ドレスを仕立てに来ている。
贔屓にしている店で、馴染の店員は驚いた顔で見ていた。
リリカのドレスについて、ローズがこれ程までに熱心に前向きな意見を言うのは、初めてだったのだ。
本当は、社交界デビューにのためのドレスは、もう既に仕立て終えていた。
しかし、リリカのドレスはとても地味なものだったため、改めて仕立て直しに来たのだ。
リリカとキャサリンの物を選ぶ買い物には、一応リリカも連れて行かれる。
しかしいつもリリカは蚊帳の外で、この苦痛な時間が過ぎるのを待っているのだが、今日は別の意味での苦痛も伴っていた。
初めてのローズの干渉は、今のリリカには煩わしい以外の何者でもない。
(私に良いところに嫁がせて、自分の保険にしたいのがみえみえよ)
いつもは無心を心がけるのだが、傷心のリリカは心の中でローズへ悪態をつく。
隠さずに、表情にも嫌悪の色をはっきりと出している。
「キャサリン、リリカのドレスの仕立て直しに付き合ってくれるなんて、なんて優しい子なのかしら。リリカはこんなに可愛くて優しい妹がいて幸せね。双子なのにこんなに違うなんて……。さあキャサリン、あなたの素敵なセンスで、リリカにアドバイスをしてやって頂戴!」
キャサリンが、付いて来たいと自分から申し出て来て、ローズは上機嫌だ。
(お母様と二人きりの空間なんて間がもたないから、キャサリンも来てくれて良かったわ……)
リリカがそう思うように、キャサリンの存在が室内の空気を柔らかくしてくれているのは、間違いなかった。
「お姉様、私も一緒に選ばせてもらっても良いかしら?」
「ええ、勿論よ」
(どうぞいつも通り、二人で話してさっさと勝手に決めて頂戴……)
リリカはそう思いながら答えた。
リリカはまだ、このような煌びやかで明るい所にいる気分では決してなくて、早く帰りたくて仕方がないのだ。
「お母様、お姉様には大きなリボンやアクセサリーよりも、小柄で品のある物の方が似合うと思うわ」
「あらそうかしら? 顔が質素だから服が豪華な方が良いかと思ったのだけれど」
「ちぐはぐだと悪目立ちして敬遠されるわ」
「あら、それもそうね。やっぱりキャサリンは賢いわね。確かにそっちの方が、太っているリリカには痩せて見えるし良いわね!」
ローズは、キャサリンと一緒に和気あいあいとドレスを選ぶことが出来て、とてもご機嫌だ。
「お姉様は、これとこれはどちらが良いと思う?」
ボーッとしていたリリカは、急に話をふられてすぐに返答が出来なかった。
ローズとキャサリンの会話に呼ばれることは、最近ではほぼなかったので、話をまったく聞いていなかったのだ。
(そう言えば、昔はよくキャサリンが声を掛けてくれていたわね。私も仲間に入れようとして……)
ボーッとそんな昔のことを思い出していると、リリカの思考はローズの声に遮られた。
「ほら、せっかくキャサリンが選んでくれているのよ! さっさと質問に答えなさい! 本当にとろい子ね」
ローズの発言で一気に現実に引き戻されたリリカは、心に黒いモヤが一気にかかる。
「任せるわ」
それだけを言って、リリカは壁際へ行った。
それ以降は〝我関せず〟を貫くこととしたのだ。
「お姉様のドレスなのに……」
リリカが聴覚をシャットダウンする直前に、キャサリンのそんな声が聞こえた気がしたのだった……
リリカは、ローズとキャサリンと三人で、ドレスを仕立てに来ている。
贔屓にしている店で、馴染の店員は驚いた顔で見ていた。
リリカのドレスについて、ローズがこれ程までに熱心に前向きな意見を言うのは、初めてだったのだ。
本当は、社交界デビューにのためのドレスは、もう既に仕立て終えていた。
しかし、リリカのドレスはとても地味なものだったため、改めて仕立て直しに来たのだ。
リリカとキャサリンの物を選ぶ買い物には、一応リリカも連れて行かれる。
しかしいつもリリカは蚊帳の外で、この苦痛な時間が過ぎるのを待っているのだが、今日は別の意味での苦痛も伴っていた。
初めてのローズの干渉は、今のリリカには煩わしい以外の何者でもない。
(私に良いところに嫁がせて、自分の保険にしたいのがみえみえよ)
いつもは無心を心がけるのだが、傷心のリリカは心の中でローズへ悪態をつく。
隠さずに、表情にも嫌悪の色をはっきりと出している。
「キャサリン、リリカのドレスの仕立て直しに付き合ってくれるなんて、なんて優しい子なのかしら。リリカはこんなに可愛くて優しい妹がいて幸せね。双子なのにこんなに違うなんて……。さあキャサリン、あなたの素敵なセンスで、リリカにアドバイスをしてやって頂戴!」
キャサリンが、付いて来たいと自分から申し出て来て、ローズは上機嫌だ。
(お母様と二人きりの空間なんて間がもたないから、キャサリンも来てくれて良かったわ……)
リリカがそう思うように、キャサリンの存在が室内の空気を柔らかくしてくれているのは、間違いなかった。
「お姉様、私も一緒に選ばせてもらっても良いかしら?」
「ええ、勿論よ」
(どうぞいつも通り、二人で話してさっさと勝手に決めて頂戴……)
リリカはそう思いながら答えた。
リリカはまだ、このような煌びやかで明るい所にいる気分では決してなくて、早く帰りたくて仕方がないのだ。
「お母様、お姉様には大きなリボンやアクセサリーよりも、小柄で品のある物の方が似合うと思うわ」
「あらそうかしら? 顔が質素だから服が豪華な方が良いかと思ったのだけれど」
「ちぐはぐだと悪目立ちして敬遠されるわ」
「あら、それもそうね。やっぱりキャサリンは賢いわね。確かにそっちの方が、太っているリリカには痩せて見えるし良いわね!」
ローズは、キャサリンと一緒に和気あいあいとドレスを選ぶことが出来て、とてもご機嫌だ。
「お姉様は、これとこれはどちらが良いと思う?」
ボーッとしていたリリカは、急に話をふられてすぐに返答が出来なかった。
ローズとキャサリンの会話に呼ばれることは、最近ではほぼなかったので、話をまったく聞いていなかったのだ。
(そう言えば、昔はよくキャサリンが声を掛けてくれていたわね。私も仲間に入れようとして……)
ボーッとそんな昔のことを思い出していると、リリカの思考はローズの声に遮られた。
「ほら、せっかくキャサリンが選んでくれているのよ! さっさと質問に答えなさい! 本当にとろい子ね」
ローズの発言で一気に現実に引き戻されたリリカは、心に黒いモヤが一気にかかる。
「任せるわ」
それだけを言って、リリカは壁際へ行った。
それ以降は〝我関せず〟を貫くこととしたのだ。
「お姉様のドレスなのに……」
リリカが聴覚をシャットダウンする直前に、キャサリンのそんな声が聞こえた気がしたのだった……
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