短い話たち

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禁煙

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「これが最後の1本か…」
これを吸い終わったら禁煙する。心ゆくまで味わおう。
そう思い火をつける。
一服。
二服。
三服。
煙草はフィルターを焦がし始めた。
「熱っ」
私は煙草を口から離そうとしたが口が開かない。
「熱っ!熱っ!」
私は煙草を引き抜こうともがいたが煙草の火はすでに私の頭を燃やしていた。
そのまま火は私を食いつくしてようやく消えた。

私は煙のように天に昇り下界を見た。
するとあちこちで人が燃えていた。
まるで焚き火のような火が点在している。
するとほとんど燃えかすになった焚き火から、半透明な人間が現れては、みんな煙のように天に昇って来る。
私はその中のひとりをつかまえて聞いてみた。
「まさかあなたも煙草を?」
すると相手は私の問いの語尾を聞かずに
「そうなんです。これで最後だと思って吸ってたら煙草が離れなくなって」
「燃えた?」
「そうみたいです」
「これが最後って、あなたも禁煙を?」
「えぇ、なんでご存知なんですか?」
「いや、私も禁煙しようと思って最後の一服に火をつけたら、あなたとおんなじになって」
「ここにいる?」
「そうなんです」
「ほら」
私は下界を指差した。
「ね?あちこちで燃えてるでしょ?」
そしてその指を上に上げた。
「あら?」
指に沿って上がって来た人が自分の姿を見て驚いている。
私は声をかけた。
「あなたも禁煙志願者ですか?」
「えぇ、なぜご存知で?」
私はまた、経緯を説明した。
そんなこんなで、あちこちから昇って来る半透明な人々に次々事情を聞いたら、みんなおんなじだった。

「しかしなんで禁煙志願者ばかり燃えるんだ?」

すると遥か下から声がした。
「最後の一服の一服って美味いんだよなぁ」

どうも地球の声のようだ。
また煙草の煙のように人が昇って来る。
見渡すと青い空に煙のような雲が浮かんでる。
そのうち雲は増えて、地球に水を掛けるだろう。
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