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幼少期
40 マックスの評価(国王視点)
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クラウスの息子、マックスは我たちを置いてさっさと部屋に戻ってしまった。
曰く、「これからは大人の時間、夜を知らない子供な自分はこれで失礼します」とのことだったが、これだけ話せる人間を子供として扱うなど土台無理な話よ。
「クックック、本当に面白かったな、お前の息子は」
「大変失礼いたしました」
「いやいや、よい。確かに拙い点はあったが、あの年ならば上々。というより、満点以上であろう」
「ですね。陛下への受け答え、手土産を用意していた点、公と私の使い分け、どれをとっても貴族学園入学前の年齢とは思えませんでしたな」
「ふむ。我が思うにおそらくマックスは転生者なのだろう」
「「転生者?」」
「ふむ、其方らが知らんのも無理はないな。王家に伝わることで、この世界にはこことは違った世界の記憶を持って生まれるものがいるらしいのだ」
「聞いたことがございませんな」
「私も寡聞にして」
宰相とクラウスがそう答えるが、そもそも自分に前世の記憶があるなどと言い出しても奇異の眼で見られるだけ、誰だって隠すだろうよ。
「5代前の国王がそうだったらしく、手記を残して居ったよ。前世ではただの勤め人だったそうだが、気づいたら国王教育を受けていて大変だったと」
「5代前というと、貴族学園の設立者ですな」
「うむ、学園という制度もここではない世界で実際に経験したものを下地にしたそうだ」
「なるほど」
「ん、どうした? クラウス」
宰相は我の説明に納得しているが、クラウスの方は何やら考え込んでしまっている。
「……陛下。私は、マックスにどう向き合えばよいのでしょう?」
「ふむ、我も転生者を見たのは初めてだが、何も特別なことをする必要はあるまい。良いことをしたら褒め、悪いことをしたら叱る。正しい道を進めるように尽力し、悪い道に進もうとすれば正せば良いだけよ」
「……そのようなことで良いのですか?」
「なに、前世の記憶があるといっても普通の子供と変わらんよ。……ま、このような菓子を手土産にしたり、ダンジョンを攻略したりはするだろうがな」
確かに今以外に生きた記憶があれば、他の人間よりもあらゆる点で有利なことには違いはあるまい。
だが、世界が違えばルールも違う……決して有利なだけでは終わらんのは先祖の手記でわかっている。
「確かに、マックスは年の割に優れているとは思っていたのです」
「別に転生者だから優れているわけではなかろう。優れているのはマックスが努力した証だ。それは褒めてやらねばならんだろう」
そう、転生して記憶を保持しているからと言って何の努力もなしに、なし得ることなど何一つないのだ。
体の動かし方、知識の吸収、ルールの定義、覚えることや確かめることは山のようにあり、それは記憶を持たないその他の子供と何ら変わりはない。
「……そう……ですな。確かにここ以外の記憶を持っているからと言って、マックスが努力しなかったわけではありません。それは、父親である私が確かに確認しています」
「うむ、努力も必要なら、試行錯誤も必要。いくら前世の記憶があろうと、人間として破綻しておれば人は付いてこんし、法律や暗黙の了解など学ぶことはいくらでもあろう」
「ですね。確かに少し特別に考えすぎていたのかもしれません。私はマックスがゲルハルディ伯爵を名乗ってもおかしくないように、きちんと教育することにしましょう」
「うむ。ま、今の時点でもそれなりに見どころがあるがな」
「そうですか?」
クラウスが不思議そうに見てくるが、先ほどまでの会話でもこちらを不快にさせないようにしようという気づかいは感じられた。
「うむ。マックスはな、我が国王であることや、我の容姿について、特に褒めることはせなんだ。褒めたのは酒のコレクターだということくらいか?」
「確かにそうです、それが?」
「国王であることは褒めることではなかろう……ま、血筋を褒めてくる輩は多いのが現実だがな。それに、皆が褒める我の容姿も我自身は特に気遣っているわけではない」
成りあがった者や血筋以外に何も持たないものほど、遺伝で受け継いだものを褒めたがる。
だが、努力して自分の力で手に入れたものを褒められた方が人はうれしいものだ。
「確かにそうですな。私も宰相という地位についていますが、それなりに努力してなったもの。それを父親が宰相だったから、などと言われれば業腹ものです」
「うむ、父を尊敬する気持ちはあれど、父の功績のおかげでそうなっていると言われるのは複雑なものだ。その辺の機微を分かっていて、あえて褒めなかったのであろう」
「……そこまで、考えていますかね?」
「考えておるか、おらんかは本人にしかわからんことよ。嘘もつけるしな。重要なのは国王である我の不興を買わなかったということよ」
曰く、「これからは大人の時間、夜を知らない子供な自分はこれで失礼します」とのことだったが、これだけ話せる人間を子供として扱うなど土台無理な話よ。
「クックック、本当に面白かったな、お前の息子は」
「大変失礼いたしました」
「いやいや、よい。確かに拙い点はあったが、あの年ならば上々。というより、満点以上であろう」
「ですね。陛下への受け答え、手土産を用意していた点、公と私の使い分け、どれをとっても貴族学園入学前の年齢とは思えませんでしたな」
「ふむ。我が思うにおそらくマックスは転生者なのだろう」
「「転生者?」」
「ふむ、其方らが知らんのも無理はないな。王家に伝わることで、この世界にはこことは違った世界の記憶を持って生まれるものがいるらしいのだ」
「聞いたことがございませんな」
「私も寡聞にして」
宰相とクラウスがそう答えるが、そもそも自分に前世の記憶があるなどと言い出しても奇異の眼で見られるだけ、誰だって隠すだろうよ。
「5代前の国王がそうだったらしく、手記を残して居ったよ。前世ではただの勤め人だったそうだが、気づいたら国王教育を受けていて大変だったと」
「5代前というと、貴族学園の設立者ですな」
「うむ、学園という制度もここではない世界で実際に経験したものを下地にしたそうだ」
「なるほど」
「ん、どうした? クラウス」
宰相は我の説明に納得しているが、クラウスの方は何やら考え込んでしまっている。
「……陛下。私は、マックスにどう向き合えばよいのでしょう?」
「ふむ、我も転生者を見たのは初めてだが、何も特別なことをする必要はあるまい。良いことをしたら褒め、悪いことをしたら叱る。正しい道を進めるように尽力し、悪い道に進もうとすれば正せば良いだけよ」
「……そのようなことで良いのですか?」
「なに、前世の記憶があるといっても普通の子供と変わらんよ。……ま、このような菓子を手土産にしたり、ダンジョンを攻略したりはするだろうがな」
確かに今以外に生きた記憶があれば、他の人間よりもあらゆる点で有利なことには違いはあるまい。
だが、世界が違えばルールも違う……決して有利なだけでは終わらんのは先祖の手記でわかっている。
「確かに、マックスは年の割に優れているとは思っていたのです」
「別に転生者だから優れているわけではなかろう。優れているのはマックスが努力した証だ。それは褒めてやらねばならんだろう」
そう、転生して記憶を保持しているからと言って何の努力もなしに、なし得ることなど何一つないのだ。
体の動かし方、知識の吸収、ルールの定義、覚えることや確かめることは山のようにあり、それは記憶を持たないその他の子供と何ら変わりはない。
「……そう……ですな。確かにここ以外の記憶を持っているからと言って、マックスが努力しなかったわけではありません。それは、父親である私が確かに確認しています」
「うむ、努力も必要なら、試行錯誤も必要。いくら前世の記憶があろうと、人間として破綻しておれば人は付いてこんし、法律や暗黙の了解など学ぶことはいくらでもあろう」
「ですね。確かに少し特別に考えすぎていたのかもしれません。私はマックスがゲルハルディ伯爵を名乗ってもおかしくないように、きちんと教育することにしましょう」
「うむ。ま、今の時点でもそれなりに見どころがあるがな」
「そうですか?」
クラウスが不思議そうに見てくるが、先ほどまでの会話でもこちらを不快にさせないようにしようという気づかいは感じられた。
「うむ。マックスはな、我が国王であることや、我の容姿について、特に褒めることはせなんだ。褒めたのは酒のコレクターだということくらいか?」
「確かにそうです、それが?」
「国王であることは褒めることではなかろう……ま、血筋を褒めてくる輩は多いのが現実だがな。それに、皆が褒める我の容姿も我自身は特に気遣っているわけではない」
成りあがった者や血筋以外に何も持たないものほど、遺伝で受け継いだものを褒めたがる。
だが、努力して自分の力で手に入れたものを褒められた方が人はうれしいものだ。
「確かにそうですな。私も宰相という地位についていますが、それなりに努力してなったもの。それを父親が宰相だったから、などと言われれば業腹ものです」
「うむ、父を尊敬する気持ちはあれど、父の功績のおかげでそうなっていると言われるのは複雑なものだ。その辺の機微を分かっていて、あえて褒めなかったのであろう」
「……そこまで、考えていますかね?」
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