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第一章、聖女編/Ⅰ、旅立ちと覚醒
14★世界一美しい私の弟【姉視点】
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「泊めてもらっちまって悪ぃな」
買ってきた荷物を古い椅子に置きながら、弟は照れくさそうに笑った。
「何言ってるの、家族でしょ」
いつでもジュキちゃんが泊まれるようにベッドが二つある部屋を借りたのに、彼はこの一年間、一度もこの部屋に泊まっていないのだ! 依頼を受けてほかの街を旅しているなら構わない。でもさして広くもない領都内に滞在するのに、わざわざパーティメンバーと宿を取るなんて!
朝出かける前、水につけておいた乾燥豆と一緒に、少量の干し肉と根菜を鍋にかけてスープを作る。
「ねえちゃん、俺、精霊力を封じやがった聖女ってやつが何者か突き止めたいんだ」
小さな木のテーブルに洗いたての布をかけながら、ジュキちゃんが決意を秘めた声で言った。分かってる。彼の聖王国行きを止める権利は、私にはない。
だって私はあの日、あの場所にいたんだもの。聖女と名乗った瑠璃色の髪の女が、生まれたばかりの弟に「祝福」とやらを授けるところを見ていたのだ。
「聖女ってのがよく分かんねえけど、聖ラピースラ王国に行きゃあ手がかりがつかめるかもしれねぇ」
彼は布に包んで戸棚にしまってあったパンを取り出して、テーブルに並べながら話した。
「聖女や聖人っていうのは本来、帝都にある聖魔法教会本部で亡くなった人を列聖するの。生きている人を聖女と呼ぶなんて聖ラピースラ王国くらいよ」
自分たちの祖先であるラピースラ・アッズーリに祈りを捧げる聖ラピースラ王国の信仰は独特で、人族の中でも異端とされてる。聖魔法教会本部ではラピースラ・アッズーリを、聖魔法修道院で信仰に生きた一人の修道女としてしか扱っていない。
「聖女って名乗った瑠璃色の髪の女は―― 嘘をついていない限り、聖ラピースラの人間か」
ジュキちゃんは虚空をにらみながら、低い声でつぶやいた。弟は時おり、私の知らない表情を見せる。ただひたすら純粋な少年と思っていつくしんできたけれど、魔法を使えず苦しんだり、人と違う姿から差別を受けたりするうち、優しかった彼の心の底にも怒りや悲しみは溜まっていたのだろう。
「さあ、いただきましょ!」
鍋から皿にスープを取り分けると、私はつとめて明るい声を出した。
「ねえちゃんの手料理、久し振りだな!」
私たちは小さな食卓で向かい合って、静かに食前の祈りを唱えた。
それから他愛ない話で笑いあいながら、質素な食事をとった。それはこの上なく幸せなひとときだった。
「ねえちゃん、多分びっくりすると思うけど――」
食後しばらくしてから弟は、本来の精霊力が戻ったと同時に、彼の姿も封印が解けたことを打ち明けてくれた。今は魔法で隠しているという。
「えーっ、見せてよぉ!」
彼が本来、成長すべきだった姿が見られると聞いて目を輝かせる私に、
「きっともう、ひとには見えない姿だよ」
彼は悲しげにほほ笑んで、ベッドの上で服を脱ぎ下着姿になった。私は部屋の反対側の壁ぎわに置いたベッドに腰かけて、彼を見守る。長く息を吐いて自身の身体にかけた魔法を解き、精霊力を解放しているようだ。
目を伏せた彼のまわりをきらきらと銀色の光が舞い始めて、
「まぶし――」
私は思わず目を閉じた。
光が収まったのが分かってそっと目を開く。私の目に飛び込んできたのは、神話をモチーフにした絵画から抜け出してきたかのような神秘的な姿。波打つ銀髪は腰より長く、白いシーツの上で波打っている。肩からは水晶のように透明な角が生え、背中からは真っ白い翼が伸びていた。
「綺麗――」
それが弟であることも忘れて、私はつぶやいていた。世界一美しい絵画を前に、身動きが取れなくなったみたいに。
やわらかい銀髪がちょっときつい目元を隠しているせいか、胸の上を波打ち落ちてゆくせいか、彼は少年にも少女にも見えた。本当に美しい人に性別なんて関係ないんだなと、私は思った。
「やっぱり―― 怖いよな?」
彼の声で私は我に返った。
「家族の姿がいきなりこんなに変わっちまうって、受け入れがたいだろ?」
いけない、まじまじと見つめすぎて不安にさせてしまった。
「ジュキちゃん、怖いなんてとんでもないわ」
私はベッドから立ち上がって弟に近付くと、光をまとった銀髪にそっと指をからめた。
「――なんて綺麗なの……」
「でも竜眼ひらいたら、どう思うかな……」
わずかにかすれた声で不安そうに言うと同時に、彼の白い胸に刻まれた傷がゆっくりとひらいた。
「わぁ、かっこいい!」
思わず歓声を上げる私。
「こっちのおめめは金色なのね!」
「マジでこの姿、バケモンだと思わねぇの?」
意外そうな顔で見上げる弟を、私はまた抱きしめた。
「私のかわいいジュキちゃんが、さらにかっこよくなっちゃったわ!」
「――本気で言ってるでしょ」
私の胸につぶされながら、くぐもった声で訊くジュキちゃん。
「当たり前じゃない」
変な質問にちょっと驚いてその顔を見ると、
「あのな、実は竜眼から視ると、ねえちゃんの言葉と感情が完全に一致してるのが分かるんだ。俺に気を使ってるわけじゃねぇって」
「家族に気を使ってどうすんのよ」
「――よかった……」
彼は心底、安堵したように笑った。私も母も、繊細で身体の弱かったジュキちゃんを、かわいいかわいい言いまくって甘やかして育ててきた自覚がある。だからきっと彼は、私から化け物扱いなんてされたら、生きて行けないくらい絶望してしまうんだろう。
「俺、思うんだ。もし瑠璃色の髪のニセ聖女が俺の精霊力を封じなかったら、本来この姿に成長してたはずじゃん」
どこか遠くを見て語りだした彼の髪を、編み込みしてみる私。どうやら気付いていないらしいジュキちゃんは、真面目な顔で話している。
「いくら魔力があってもここまで他人と違う姿だったら、やっぱりイーヴォたちにいじめられたのかもなって」
外見がどうあれこの子の、特に幼いころの優しすぎる性質は、悪ガキどもの恰好の的だったと思うのよね。
「ちょっ……ねえちゃん! 俺の髪で遊んでるだろ?」
「そうよ~。せっかく長くなったんだもん!」
私は小さい頃、本当は妹が欲しかった。まあ生まれたのは妹並みにかわいい弟だったからいいんだけど。
「ねえちゃん自分はポニーテールしかしないくせに」
「うっ…… 私はポニテが似合うきれいなお姉さんだからいいのよ!」
「はぁ」
ため息つきつつ、聖ラピースラ王国で護衛任務についたらしばらくは会えなくなるのが分かっているからか、ジュキちゃんはそれ以上抵抗せずに私の好きにさせてくれた。結局、優しいのよね。
「できたわーっ」
耳横の編み込みが愛らしくて、これはもはや妹ね!
「じゃ、そろそろいいだろ。伸びた髪切るからナイフ貸してよ」
う~ん、しゃべると男の子ね……
「長いのも神秘的な雰囲気で似合ってるのに」
口をとがらせる私に、
「やだよ、邪魔くせぇ」
「しょうがないわね」
私は鏡台の引き出しからナイフを取ってきた。
「ねえちゃんに切らせてよ。ジュキちゃんせっかく綺麗な顔してるんだから、髪型だって気を使ったらいいのに」
指先でちょんっとやわらかいほっぺたを突っつくと、ちょっぴり恥ずかしそうに目をそらした。
「だってくせっ毛なんだもん。どんな髪型にしたって変わんねぇよ」
「くせっ毛でもかっこよくできるわよ」
私は呪文を唱えると、ベッドの上に風の結界を張った。一応私も竜人族。簡単な生活魔法なら一通り使えるのだ。
水魔法でジュキちゃんの髪を湿らせると、まるで絹糸の束のようにつややかな銀髪をカットし始めた。刃が蝶のごとく舞うたびに、白銀の糸が細い雨みたいに降りそそぐ。
「すげぇな、ねえちゃん。なんでもできるんだな」
私の素人らしからぬナイフさばきに感心するジュキちゃん。結構結構、姉を敬いなさ~い!
「あとは風魔法で乾かして―― 完成! くせっ毛をいかしたショートウルフカットよ」
「ショ…… なんだって?」
あらあら嫌ね、田舎者は。
私は弟を鏡台の前に連れてゆき、
「かっこよくなったでしょ? ジュキちゃんはかわいい顔してるし、やさしくていい子だから絶対モテるわよ!」
力説する私に、彼はぱたぱた手を振りながら、
「いやー、胸の真ん中にでっけぇ目ん玉ついてるし、下半身は全部うろこに覆われてるし、こんなバケモン好きになる女の子なんかいないって」
「そんなことないわよ! ジュキちゃんは私の自慢の弟なんだから!」
ぷーっと頬をふくらませた私を指さして、ジュキちゃんは笑い出した。
「またねえちゃんの『姉バカ』が発動してる!」
「姉バカじゃないわよっ!」
ジュキちゃんはまったく信じていなかったが、今回ばかりは私の言葉が正しかったのだ。護衛依頼を引き受けるために訪れた聖ラピースラ王国で、彼は運命の相手と出会うことになる――。
-----------------
次回は幕間です。ジュキエーレが生まれた日のこと、彼の子供時代にあったことが姉視点で語られます。が、幕間なのでストーリーだけ気になる方は飛ばしても筋は追えます!
魔法の使えなかったジュキエーレが村の人からどう思われていたか、またこの世界の宗教の教義など気になる方はのぞいてみてくださいね!
当作品はカクヨムコンで先行公開中です。ありがたいことに感想もたくさんいただいているので、気になる方はのぞいてみてね。
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「何言ってるの、家族でしょ」
いつでもジュキちゃんが泊まれるようにベッドが二つある部屋を借りたのに、彼はこの一年間、一度もこの部屋に泊まっていないのだ! 依頼を受けてほかの街を旅しているなら構わない。でもさして広くもない領都内に滞在するのに、わざわざパーティメンバーと宿を取るなんて!
朝出かける前、水につけておいた乾燥豆と一緒に、少量の干し肉と根菜を鍋にかけてスープを作る。
「ねえちゃん、俺、精霊力を封じやがった聖女ってやつが何者か突き止めたいんだ」
小さな木のテーブルに洗いたての布をかけながら、ジュキちゃんが決意を秘めた声で言った。分かってる。彼の聖王国行きを止める権利は、私にはない。
だって私はあの日、あの場所にいたんだもの。聖女と名乗った瑠璃色の髪の女が、生まれたばかりの弟に「祝福」とやらを授けるところを見ていたのだ。
「聖女ってのがよく分かんねえけど、聖ラピースラ王国に行きゃあ手がかりがつかめるかもしれねぇ」
彼は布に包んで戸棚にしまってあったパンを取り出して、テーブルに並べながら話した。
「聖女や聖人っていうのは本来、帝都にある聖魔法教会本部で亡くなった人を列聖するの。生きている人を聖女と呼ぶなんて聖ラピースラ王国くらいよ」
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「聖女って名乗った瑠璃色の髪の女は―― 嘘をついていない限り、聖ラピースラの人間か」
ジュキちゃんは虚空をにらみながら、低い声でつぶやいた。弟は時おり、私の知らない表情を見せる。ただひたすら純粋な少年と思っていつくしんできたけれど、魔法を使えず苦しんだり、人と違う姿から差別を受けたりするうち、優しかった彼の心の底にも怒りや悲しみは溜まっていたのだろう。
「さあ、いただきましょ!」
鍋から皿にスープを取り分けると、私はつとめて明るい声を出した。
「ねえちゃんの手料理、久し振りだな!」
私たちは小さな食卓で向かい合って、静かに食前の祈りを唱えた。
それから他愛ない話で笑いあいながら、質素な食事をとった。それはこの上なく幸せなひとときだった。
「ねえちゃん、多分びっくりすると思うけど――」
食後しばらくしてから弟は、本来の精霊力が戻ったと同時に、彼の姿も封印が解けたことを打ち明けてくれた。今は魔法で隠しているという。
「えーっ、見せてよぉ!」
彼が本来、成長すべきだった姿が見られると聞いて目を輝かせる私に、
「きっともう、ひとには見えない姿だよ」
彼は悲しげにほほ笑んで、ベッドの上で服を脱ぎ下着姿になった。私は部屋の反対側の壁ぎわに置いたベッドに腰かけて、彼を見守る。長く息を吐いて自身の身体にかけた魔法を解き、精霊力を解放しているようだ。
目を伏せた彼のまわりをきらきらと銀色の光が舞い始めて、
「まぶし――」
私は思わず目を閉じた。
光が収まったのが分かってそっと目を開く。私の目に飛び込んできたのは、神話をモチーフにした絵画から抜け出してきたかのような神秘的な姿。波打つ銀髪は腰より長く、白いシーツの上で波打っている。肩からは水晶のように透明な角が生え、背中からは真っ白い翼が伸びていた。
「綺麗――」
それが弟であることも忘れて、私はつぶやいていた。世界一美しい絵画を前に、身動きが取れなくなったみたいに。
やわらかい銀髪がちょっときつい目元を隠しているせいか、胸の上を波打ち落ちてゆくせいか、彼は少年にも少女にも見えた。本当に美しい人に性別なんて関係ないんだなと、私は思った。
「やっぱり―― 怖いよな?」
彼の声で私は我に返った。
「家族の姿がいきなりこんなに変わっちまうって、受け入れがたいだろ?」
いけない、まじまじと見つめすぎて不安にさせてしまった。
「ジュキちゃん、怖いなんてとんでもないわ」
私はベッドから立ち上がって弟に近付くと、光をまとった銀髪にそっと指をからめた。
「――なんて綺麗なの……」
「でも竜眼ひらいたら、どう思うかな……」
わずかにかすれた声で不安そうに言うと同時に、彼の白い胸に刻まれた傷がゆっくりとひらいた。
「わぁ、かっこいい!」
思わず歓声を上げる私。
「こっちのおめめは金色なのね!」
「マジでこの姿、バケモンだと思わねぇの?」
意外そうな顔で見上げる弟を、私はまた抱きしめた。
「私のかわいいジュキちゃんが、さらにかっこよくなっちゃったわ!」
「――本気で言ってるでしょ」
私の胸につぶされながら、くぐもった声で訊くジュキちゃん。
「当たり前じゃない」
変な質問にちょっと驚いてその顔を見ると、
「あのな、実は竜眼から視ると、ねえちゃんの言葉と感情が完全に一致してるのが分かるんだ。俺に気を使ってるわけじゃねぇって」
「家族に気を使ってどうすんのよ」
「――よかった……」
彼は心底、安堵したように笑った。私も母も、繊細で身体の弱かったジュキちゃんを、かわいいかわいい言いまくって甘やかして育ててきた自覚がある。だからきっと彼は、私から化け物扱いなんてされたら、生きて行けないくらい絶望してしまうんだろう。
「俺、思うんだ。もし瑠璃色の髪のニセ聖女が俺の精霊力を封じなかったら、本来この姿に成長してたはずじゃん」
どこか遠くを見て語りだした彼の髪を、編み込みしてみる私。どうやら気付いていないらしいジュキちゃんは、真面目な顔で話している。
「いくら魔力があってもここまで他人と違う姿だったら、やっぱりイーヴォたちにいじめられたのかもなって」
外見がどうあれこの子の、特に幼いころの優しすぎる性質は、悪ガキどもの恰好の的だったと思うのよね。
「ちょっ……ねえちゃん! 俺の髪で遊んでるだろ?」
「そうよ~。せっかく長くなったんだもん!」
私は小さい頃、本当は妹が欲しかった。まあ生まれたのは妹並みにかわいい弟だったからいいんだけど。
「ねえちゃん自分はポニーテールしかしないくせに」
「うっ…… 私はポニテが似合うきれいなお姉さんだからいいのよ!」
「はぁ」
ため息つきつつ、聖ラピースラ王国で護衛任務についたらしばらくは会えなくなるのが分かっているからか、ジュキちゃんはそれ以上抵抗せずに私の好きにさせてくれた。結局、優しいのよね。
「できたわーっ」
耳横の編み込みが愛らしくて、これはもはや妹ね!
「じゃ、そろそろいいだろ。伸びた髪切るからナイフ貸してよ」
う~ん、しゃべると男の子ね……
「長いのも神秘的な雰囲気で似合ってるのに」
口をとがらせる私に、
「やだよ、邪魔くせぇ」
「しょうがないわね」
私は鏡台の引き出しからナイフを取ってきた。
「ねえちゃんに切らせてよ。ジュキちゃんせっかく綺麗な顔してるんだから、髪型だって気を使ったらいいのに」
指先でちょんっとやわらかいほっぺたを突っつくと、ちょっぴり恥ずかしそうに目をそらした。
「だってくせっ毛なんだもん。どんな髪型にしたって変わんねぇよ」
「くせっ毛でもかっこよくできるわよ」
私は呪文を唱えると、ベッドの上に風の結界を張った。一応私も竜人族。簡単な生活魔法なら一通り使えるのだ。
水魔法でジュキちゃんの髪を湿らせると、まるで絹糸の束のようにつややかな銀髪をカットし始めた。刃が蝶のごとく舞うたびに、白銀の糸が細い雨みたいに降りそそぐ。
「すげぇな、ねえちゃん。なんでもできるんだな」
私の素人らしからぬナイフさばきに感心するジュキちゃん。結構結構、姉を敬いなさ~い!
「あとは風魔法で乾かして―― 完成! くせっ毛をいかしたショートウルフカットよ」
「ショ…… なんだって?」
あらあら嫌ね、田舎者は。
私は弟を鏡台の前に連れてゆき、
「かっこよくなったでしょ? ジュキちゃんはかわいい顔してるし、やさしくていい子だから絶対モテるわよ!」
力説する私に、彼はぱたぱた手を振りながら、
「いやー、胸の真ん中にでっけぇ目ん玉ついてるし、下半身は全部うろこに覆われてるし、こんなバケモン好きになる女の子なんかいないって」
「そんなことないわよ! ジュキちゃんは私の自慢の弟なんだから!」
ぷーっと頬をふくらませた私を指さして、ジュキちゃんは笑い出した。
「またねえちゃんの『姉バカ』が発動してる!」
「姉バカじゃないわよっ!」
ジュキちゃんはまったく信じていなかったが、今回ばかりは私の言葉が正しかったのだ。護衛依頼を引き受けるために訪れた聖ラピースラ王国で、彼は運命の相手と出会うことになる――。
-----------------
次回は幕間です。ジュキエーレが生まれた日のこと、彼の子供時代にあったことが姉視点で語られます。が、幕間なのでストーリーだけ気になる方は飛ばしても筋は追えます!
魔法の使えなかったジュキエーレが村の人からどう思われていたか、またこの世界の宗教の教義など気になる方はのぞいてみてくださいね!
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