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初恋の味はチョコレート・クッキー
番外編〖第3話〗
しおりを挟む『こっちきて。サボろ?自転車ニケツしよ。風きれるよ。こんな田舎お巡りさんもいないから』
『サボるって、いいの?』
『毎日じゃなければいいんじゃない?』
二人で下った坂道。お腹に回された手が以外にもヒヤッとつめたい。生きている人か疑うほど。こんな儚い、切ない女の子だと今更気づいた。知らなかった。俺って見る目無かったんだな。多少可愛くて寝れれば良かったんだ。
『あー、腹減った。げ、財布ねぇ!ロッカーに置いてきた!』
沙羅が、うふふと笑って鞄を開ける。
『はらぺこの君にこれをあげましょう。チョコレート・クッキー。半分コ』
沙羅はクッキーを割る。不恰好に二つに割れたクッキー。沙羅は迷わず大きい半分を俺に差し出した。
『いいよ。沙羅が食えよ』
『あんた図体でかいんだからこんくらいおやつにもならないでしょ。いいから、食べて。坂道、気持ち良かった。対向車来たとき死ぬかと思ったけど』
『あれは怖かったな』
あの瞬間、生きることを諦めても良いと思った。恋の始まりは人を狂わせるのかな、なんて思ったりした。今は嫌だ。死んでも良いなんて絶対に思わない。だって、そうだろ?未来が、待っているのに。
『俺さ、あのまま──』
『はい。言わない。何となく想像はつくよ。私もさ、ユミくんにしがみついて、天国行きなら、それもそうで仕方ないなって、ずっと好きだったから。ユミくんのこと。久しぶりに頬っぺたが風で冷たかった。ありがとう。最高の一日だった』
『終わり、なのか?沙羅』
少しの沈黙が怖い。沙羅の顔が悲しそうに変わっていく。沙羅は無理をして笑っているように見えた。何がいけない?俺、何か間違ったのか?最高の一日だった。財布忘れるポカはしたけど、お陰で、チョコレート・クッキーを沙羅と半分できた。
『だって、ユミくん彼女いるじゃない。本田さん』
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