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初恋の味はチョコレート・クッキー

番外編〖最終話〗───完

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俺は即、美里にLINEした。返事は5分かからないうちに帰ってきた。あっさりとしたもので、ことの成り行きを見守っていた沙羅はもちろん俺も拍子抜けした。

『こんなもの?一緒に寝たのに』

『俺は美里と一緒になら天国に行っても良いかな、なんて思わないし、たくさん一緒に思い出をつくりたいとも、学校を抜け出して坂道を下りたいとも思わないよ』

 全部、沙羅だから。そう言い終わるか終わらないかのとき、沙羅は俺にキスをした。チョコレート・クッキーの名残。香ばしくて、甘くて、少し苦い。今日の俺たちみたいだ。

『よそ見は、しないで』

 俺の目をみてそう言う沙羅はいじらしくて可愛くて、俺は沙羅を抱きしめた。初めて俺は誰かを胸にだいて『いとしい』と思った。

 たった一日、されど一日。それは未来への階段みたいなものだ。一歩一歩の積み重ね。今、沙羅は巫女姿で、社務所で母さんとお守りを売っている。貧血は月に一回血液内科にかかっている。

──────────

『この神社の恋愛成就のお守り、良いらしいよ』

『可愛いー!ヤバい!』

 遠ざかる女の子の黄色い声。

『あんな頃もあったね』

『動くな動くな。赤ちゃんがいるから沙羅、身体キツいだろ。無理しなくて良い。母さんに変わってもらうといいよ』

 元気に産まれてくる。きっと。名前はユラになる?

 ユミとサラ、だからユラ。

 俺さ、ユミじゃん?母さんユリ、父さんオミ。だからユミなのかなって。

 二人の半分を、子どもに分けるみたいに。まあ、沙羅がなんと言おうと、外野も含めて、俺が一番あいしてるのは、沙羅なんだけどね。


────────────〖完〗
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