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空の素顔【第24話】──②
しおりを挟む泥と垢まみれの身体を丁寧に洗ってやると青白い病人のような肌が浮かんだ。所々石を投げられたせいで打ち身になっている。髪も丁寧に洗ってやる。よく濡らしてから優しく指で梳き、石鹸で綺麗にした。腰よりある真っ直ぐで、長く、つやのある黒い髪。
「軽く、目をつぶって」
「ん!」
泥と垢で造作さえ解らない子供を洗う。お湯で泡を流してやると、あらわになる整った白い顔。大きな黒目がちな瞳と長い睫毛。林檎のように色づいた唇。目が合うと、首を少しかしげて恥ずかしそうに笑う。
まずい、女子だ。赤い林檎の口元。大きな瞳に生え揃った睫毛。まだ童女いえども、狛井家の跡継ぎが館の浮浪児の女子と風呂に入り、肌を手で洗ってやるとは、あってはならない。
立ち上がり、甘えるように、自分の身体を洗う蒼の腕に、空は腕を絡ませた。いつの間にか『そうにいちゃん』と呼ばれている。ふとはらりと凝った髪がほどけた長い黒髪から覗く性器にほっとした。
ずっと空はにこにこしている。『信頼』『好意』だけで蒼を見つめる瞳が切ない。髪を洗ってやっただけではないか。なのに、何故こんな無防備に笑う?そして、今、蒼はこんな小さな、まだいたいけな、少年とも呼べない者に不可思議な感情を抱いた。慈愛、と思いたかった。けれど違う。哀しいいとしさだ。もう、これ以上傷つく必要はない。俺が空をまもってやる、と。
「そうにいちゃん、お湯には入っちゃだめなの?」
立ち上がり、甘えるように、自分の身体を洗う蒼の腕に、空は腕を絡ませた。いつの間にか『そうにいちゃん』と呼ばれている。
空は清らかな花のようだが、可憐で儚気な色気がある。長い髪を身体に纏い、
「背中を洗ってあげる!」
と肌を滑る空の指の感覚には、蒼には変な趣味はないがゾクッと肌が粟立った。
「お風呂すごいね!お花が浮いてるよ!初めて!冬至の柚子湯しか入ったことないよ。ありがとう、そうにいちゃん」
「空が嬉しいならそれでいいよ」
蒼は、口では平然としてるが身体はそうではなかった。簡単に言えば、空に欲情している自分がいた。抱きしめたい。頬に触れたい。優しく髪を梳き、匂いを楽しみ、口づけたい。それから、それから………?相手は童子じゃないかと、蒼は俯く。
【つづく】
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