私の運命の番様~ネガティブキャンペーンを吹き飛ばせ!~

猫石

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不埒者の身柄確保とペガサス警ら隊(聞き捨て習いない言葉を聞いたっ!)

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「お嬢さん、大丈夫ですか? 突然の事で怖かったでしょう。ご安心ください、獣人の彼は、しっかり確保していますから。」
「確保?」
「そう。ほら、あっちで縛られている、あれです」
「あっちのあれ、ですか?」
 ペガサス下半身の獣人の騎士様数名に囲まれたまま、ほら、ここから覗き見て、と彼らの隙間から、中通りと言われる、ほどほどに広い道路を挟んで反対側にいる星座をさせられた獣人さんを見た私は、その姿に、ふる……っと全身を震わせた。
 (わぁお、まじ……イケメェン……)

 さて、ここまでのお話を要約すれば。
 お店番をしていたところ、突然現れた獣人にタックルするように腰に抱き着かれ、そのまま床に押し倒されたかと思ったら、どんな人か、どんなお顔かもわからないままクンクンスンスン滅茶苦茶嗅がれて前後喪失になった(ただし獣人の素敵ポイントである、お耳と尻尾のふさふさ具合は確認済)私を助けるために警ら隊を呼んでくれたお客さんは、また後日来るわね、御愁傷様……と、心から哀れんだ顔をしながら出て行き、何やらお香をたかれて失神した獣人男性は、私と引き離された後、縄で縛り上げられ店から引っ張り出され、『覚醒』魔法で叩き起こされた後、衆目が集める中、石畳の上に正座させられたようだ。
 今も数名の警ら隊にぐるっと囲まれ、上からギラギラと睨みを利かせられ、肉食獣系の獣人の特徴である大きなお耳はぺしょっと金と黒の斑の髪に沿うように倒れ伏せ、おおっくてふさふさのしっぽも地面に這い蹲っている。
 が、しかし。そんな情けない姿でもなお、隠せないイけてるお顔!
 ぱっちり大きいけれど、眦は野性的でツンとつり上がっている黒目勝ちの目元も、お日様に当たれば金色に見える無造作に一つに結ばれた髪の毛も。
 素肌にそれっぽいテクスチャーでも張り付けてんのか!? けしからん! と、その隙間にお金を突っ込みたくなるようなお洋服と軽装鎧に包まれた細マッチョなお体も、全てが本当に性癖全面降伏レベルのイケメンだ。
 きゅ~ん、と、胸の奥が甘く疼くようである。
(前世の推しにちょっと似てるところも素敵~)
 両の手を組み、つい拝んでしまった私の視界が、綺麗なお馬さんの体で遮られた。
「あ、あの……」
 お相手の御尊顔をもうちょっと見たいんですけど?
 と言おうと見上げると、ぎょっとしたペガサス獣人さん、慌てて騎士服のポケットを探る。
「大丈夫ですか? すみません。自分を襲った相手を確認するなんて、怖かったでしょう? さ、これで涙を拭いてください」
 ものすごく心配顔のペガサス獣人さんにそっとハンカチを差し出された。
(あ、感動して涙出てしまったのが、怖くて泣いたと思われてる~)
「あ、ありがとうございます」
 ハンカチを受け取って目元を拭った私に、ペガサス獣人さんは申し訳なさそうに膝を折り、目線を近づけてから訪ねてくれた。
「ところで、お嬢さん。お名前を聞かせて頂いても?」
 近づけば、かっこいいガチムチマッチョの人間体上半身に、それは美しいペガサス下半身の警ら騎士が、それはそれは申し訳なさそうに、優しげな笑顔で訪ねてくれたため、とりあえず煩悩を押し留めて私は頭を下げた。
「あ、助けていただいたのに、お礼が遅れて申し訳ありません。私の名前はキルシェです。キルシェ・ボンボニール。この店を営んでおります」
「キルシェさんですね、なるほど。本人確認のため、腕輪の確認をさせていただいても?」 
「は、はい」
 私は、銀色のシンプルな腕輪のついた左の腕を差し出した。
 この腕輪は、この世界の人間ならだれもが持つ『命運の腕輪』だ。
 どういうシステムかは知らないが、日本で言うところの、パスポートとマイナン〇ーカードと銀行のカードが一緒くたになったもので、国境や王都、それにそれらに付随する建物の入場許可を取ったり、お店でかざせばお会計が出来たり(銀行から振り落とされる感じ)、自分のステータスも確認できる代物だ。
 そんな素晴らしい腕輪に、警ら騎士様は自らのお馬の体に取りつけていた鞄から出した水晶の板をかざし、うんうん、と頷いてから私を見た。
「確認できました、ご協力ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそありがとうございます」
「それで、彼の処遇ですが、一般的な例を申し上げますと、貴女は彼に対し、番感情・関係の強要及び婦女暴行未遂、また、押し倒したことによる傷害事件として被害届を出す権利があります。その場合、彼は『番認識阻害剤』を投薬の上、王都追放になり、貴女の前に二度と現れることはありません。それでよろしいでしょうか?」
「……へ?」
 私は目をまん丸くして、警ら騎士様を見るしかなかった。
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