私の運命の番様~ネガティブキャンペーンを吹き飛ばせ!~

猫石

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国際獣人番法ならびに国際番保護法…だと?(なんじゃそりゃー!)

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「何かわからないことがありましたか? レディ」
 そう言われ、私は慌ててペガサス警ら騎士様を問いただした。
「聞き捨てならない言葉がたくさんありました! もう一回宜しいですか!?」
「どのあたりでしょう?」
「全部! 全部ですぅ!」
 おや? と首をひねった警ら騎士様は、胸のポケットから一冊の小さな冊子を取り出すと、パラパラとページをめくり、とあるページで止まると、そこを何度か読み返し、パタンとそれを閉じてポケットに戻して私を見た。
「あの獣人の彼は、この国の生まれではありませんでした。このルフォート・フォーマには、『冒険の拠点』と申請して一階層への出入りが許されていました。が、此方は二階層、その時点で『入場許可の下りていない階層への不法侵入』が適応されます。そして、彼は獣人の性である『番』という言葉を盾に、あなたのお店に不法侵入し、貴女に対し、番感情と番関係を強要しました。『国際獣人番法』第十七条に抵触します。また、貴女を押し倒したことによる『婦女暴行未遂』、それにより貴方が怪我を負ったため『傷害罪』が適応され、これにより貴女は『国際獣人番法』第一条第五号の『番保護法』の第八条にある『番被害者』になります。ですから、貴女は彼に対し『番認識阻害剤』を強制投薬出来る権利を得ました。貴女は彼に対し『番になる事を断固拒否』し、即時接近禁止命令を執行できる許可を得たのです」
「……は、あ? えっと……?」
 私は混乱しながらきく。
「国際獣人番法とか、番保護法って……何ですか?」
「まさか、番法を存じないのですか? 世界でもっとも有名な法律ですよ!? 特にこのルフォート・フォーマでは、小さな子供でも知っている話です」
「……え?」
 信じられない、と言った顔で私を見るペガサス警ら騎士様に、本当に知らない私は少々慌てた。
「す、すみません……こちらに来たのは最近なもので……」
 嘘はついてない! 空から落ちてきたのはつい一年前だからと開き直ってそう言うと、警ら騎士様はう~ん、頭を悩ませ始めた。
(しまったぁ~。この人たち、空来種対応不可公務員耳飾りなしだから、下手に話せないし……)
 と、目の前の職務に忠実で親切な人が、私がこの国に来て最初に習った『只より高い物はない、自衛は大事、無知は罪。何かあったら空来種お悩み相談係、通称耳飾り隊を頼ること!』という教えを思い出し、言うべきか言わざるべきか悩む。
「えぇと、じつは……」
 そして、考えてもらちが明かないと、自己紹介を兼ね、空来種であることを話そうとわずかに決心を固めた時だった。
「失礼します、レディ」
 首を傾げながら、頭の中で言われた言葉を整理しようと頑張っていると、私にそれらの説明をしてくれた警ら騎士さまと同じ形だが、胸につけたキラキラの飾りが多く、濃い色の騎士服を着た黒い獣耳には目印の耳飾り、そして背後には黒くてしなやかな長い尻尾をゆらゆらと揺らす、イケオジな壮年男性が近づいてきた。
「簡単に言うと、あの獣人は貴女に『運命の相手』という言葉を盾に突然抱き着き、怪我をさせた。被害者の貴女はそんな彼に対し、危険でもある番の本能を押さえたうえ、二度と近づくなと言える立場という事です」
 にこっと笑った壮年の男性は、静かに微笑んだ。
「どうしますか?」
 その言葉に、私はなるほど、と頷きながら、例の彼のいる方を見た。
 警ら騎士様がいるために彼を見ることが出来ないなぁと少し体を左右に動かしていると、壮年の男性がペガサス警ら騎士様たちに少し隙間を作るように指示してくれた。
「……」
 そっと人体×サラブレッドの混ざり合った素敵筋肉の隙間からそちらを見ると、あちらはあちらで、同じく警ら騎士様に何かを言われているのか、めそめそと泣いて訴えているようである。
「彼は、なんといっているのですか?」
「番と一度話をさせてくれ、と言っていますね」
 彼を見つめながら聞いてみると、壮年の警ら騎士様が私と同じ方を見て答えてくれた。
「あなたは……。そう、ですね。彼と話してみますか? ただし、話は騎士団の駐在地で、お二人の間には強固な格子で隔て、二人きりにならない環境で、という条件下になりますが」
「それは、何故ですか?」
「貴女はそうでないようですが、一般的に『番だ』と言われた被害者側は、『番認識阻害薬』の投薬を即決してしまうほど『番への執着』が恐ろしいものだという認識だからです」
 顔を上げた私に、黒い獣のお耳をお持ちの壮年の警ら騎士様はにこっと笑った。
「どう、なさいますか?」
 少しだけ悩んだ私は、ひとつ、頷いた。
「お話してみたいです、お願いできますか?」
「わかりました。では、第二階層騎士団駐在基地へご足労頂きましょう」
 はい、と、私は頷くと、壮年の警ら騎士様は低く吼え、すると道路の反対側にいた彼を取り囲んでいた警ら騎士様たちが、彼を縛り上げたロープを握り、引きずるようにして駐在地に歩き出したのだった。

 ☆☆☆
 しまった、彼の事を書くのが次回になってしまいました!
 ちなみにペガサス警ら騎士様の上司の壮年男性はクロヒョウの獣人です!
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