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まさか私が巻き込まれることになろうとは(神様、グッジョブ!)
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「見つけた! 僕の運命の番! 愛してるよっ!」
「え? は? お客さん!? まってください、きゃー! 一体何なんですか!?」
甘い香りのするお菓子の包みを抱えた私は、それを潰さないように、落とさないように注意しながら、突然のタックルに耐え……られず、床に押し倒された。
抵抗空しく手から離れ、ベしょ……っ、と悲しい音を立てて落ちてしまった紙の包みを遠くに見てから、私の腰に張り付く何かを確認する。
(はわ……こ、これは!)
金褐色に見える、ふわふわの大きなお耳は、とってもご機嫌さんなのかピンッと立ち、でっかくてふっさふさの大きなしっぽは、ぶんぶんと扇風機の様に振り回されていて。
(……獣人……? あぁ、なるほど。しゃあ、これがあの……)
自分の腰に張り付く、ご機嫌な獣人の特徴を見て、押し倒されているにもかかわらず、私は何故かものすごく冷静に考えた。
(運命の番事故か……)
この世界はいわゆる異世界だ。
その名もプラタチスーナ。
世界樹の木を中心に、四つの国と四つの種族が存在する、全知全能の神様が作っファンタジーな異世界だ。
ちなみに四つの種族とは、人、獣人、花樹人、鳥人で、人を基本にそれぞれ体にその種族名を冠した特徴を持つ。
そんな不思議世界の住人である私もまたちょっと変わり種で、『人』ではあるものの、その根本は『空来種』と言われる異世界から来た人間、いわゆる異世界転移人なのだ。
なんじゃそりゃ? と言われるだろうが、私は前世? 日本でいわゆる限界社畜女だった。
それなりに楽しい学生時代を経て、それなりにクソみたいな社会人生活を、それなりに普通にこなしていた。
準社畜みたいな生活も、推しである仮想現実アイドル(けもみみ)の現金自動支払機になるためなら、ことさら頑張ってやつていられた。
が、通勤中。
推しの配信に間に合うように、ご機嫌で帰宅していた私の脳天に、でっかくて重いなにかにクリティカルヒットし、不運にも私のアラサーな人生に幕を閉じた……と思ったら、目の前に現れた水晶の柱にしか見えない自称神様にごめんね、まちがって殺しちゃったと謝られ、好きなスキルと好きな姿で自分の管理する世界に転生させてあ~げる♪ と至極軽~く言われたのだ。
適当である。
(好きな格好かぁ)
まだ頭部に受けた衝撃で死にボケていた私は、なんとなく、幼い頃にものすごく大好きだった、ふわふわプリティな魔法少女を想像した。
すると早とちりの神様は、その想像を素早く察知! そのキャラクターの容姿のまま転生させてくれたのだ。
変なところで有能である。
加えて、特殊スキル『毎日すこぶる元気』と『美味しいお菓子万歳』、それから『招き猫もびっくり! あげあげ商売繁盛』という、生きていくうえで全く……とは言わないが、特別ではないけど、あると嬉しい。そんなにチートっぽくみえるお気楽スキルをくれたのである。
そして。
「じゃ、頑張ってね!」
そんな適当なご挨拶と笑顔とともに、今いた世界は暗転し、次に目が覚めたら、大空をスカイダイビングをさせられたのである。気が付いたら大空に投げ飛ばされていたとか、本当に意味が解らない。
後に聞いた話で、この世界に『異世界転移』した人間はもれなく『レッツスカイダイビング!』をさせられたうえで、新天地に降り立つらしい。
異世界転移の最初の試練か!? と正直神様のおつむを疑った。
ま、ペガサスボディのイケメン獣人様に助けてもらったけどね!
大地に落ちた、これでもかと憤慨すれど、目の前に神様はおらず、怒りを飲み込むだけ飲み込む仕方なかった私。
ちなみに、空から人が落ちて来るから、私たちみたいな異世界転移者は『空来種』と呼ばれているらしい。
あぁ、そうですか、どうでもいいです、そんな情報。
まぁそんなわけで。新天地に文字通り空から降り立った私は、この世界の4つの国の一つ、北の大国『ルフォート・フォーマ』の王都にて、空来種特権で店舗兼自宅と支度金までいただいて、第二階層である庶民街で、毎日お菓子を焼きながら、楽しく暮らし始めたわけだ。
適当スキルのおかげで本当に商売繁盛! だったしね。
楽しく、穏やかで、平穏な生活だったわけよ。
今の今まではな。
そんな、日々を穏やかに楽しく暮らしていた私のかわゆいお店『ミラクル☆ホイップ★シュガー』に『見つけた! 僕の運命の番!』という叫び声と共に1人の獣人が飛び込んで来たのはつい1時間前。
現在は、警ら隊に囲まれて、耳も尻尾もしゅん……と垂らし、小さく縮こまっている。
「……運命の番、かぁ」
ぼそっと私は口の中で呟いた。
それは、前世? でも、此方の世界でも、魂の片割れ、運命の恋人と言われる獣人にとってはまさに至宝ともいえる特別な相手の事であり、ともすれば、獣人を拉致監禁などの凶行に走らせるやべぇ本能の事なのだ。
だが、私はその言葉に実はかなりドキドキしていた。
(やばい! 私、このイケメン獣人に溺愛されちゃうの?! それって、なんのご褒美?)
と。
だって私は、年齢=彼氏いない歴の、悲しい干物女だったからだ。
☆☆☆
新作です。
アンチ番物がすごい多いなぁと思い、何となく書き始めました
不定期更新の勢い作品です(笑)
お楽しみいただけると幸いです
「え? は? お客さん!? まってください、きゃー! 一体何なんですか!?」
甘い香りのするお菓子の包みを抱えた私は、それを潰さないように、落とさないように注意しながら、突然のタックルに耐え……られず、床に押し倒された。
抵抗空しく手から離れ、ベしょ……っ、と悲しい音を立てて落ちてしまった紙の包みを遠くに見てから、私の腰に張り付く何かを確認する。
(はわ……こ、これは!)
金褐色に見える、ふわふわの大きなお耳は、とってもご機嫌さんなのかピンッと立ち、でっかくてふっさふさの大きなしっぽは、ぶんぶんと扇風機の様に振り回されていて。
(……獣人……? あぁ、なるほど。しゃあ、これがあの……)
自分の腰に張り付く、ご機嫌な獣人の特徴を見て、押し倒されているにもかかわらず、私は何故かものすごく冷静に考えた。
(運命の番事故か……)
この世界はいわゆる異世界だ。
その名もプラタチスーナ。
世界樹の木を中心に、四つの国と四つの種族が存在する、全知全能の神様が作っファンタジーな異世界だ。
ちなみに四つの種族とは、人、獣人、花樹人、鳥人で、人を基本にそれぞれ体にその種族名を冠した特徴を持つ。
そんな不思議世界の住人である私もまたちょっと変わり種で、『人』ではあるものの、その根本は『空来種』と言われる異世界から来た人間、いわゆる異世界転移人なのだ。
なんじゃそりゃ? と言われるだろうが、私は前世? 日本でいわゆる限界社畜女だった。
それなりに楽しい学生時代を経て、それなりにクソみたいな社会人生活を、それなりに普通にこなしていた。
準社畜みたいな生活も、推しである仮想現実アイドル(けもみみ)の現金自動支払機になるためなら、ことさら頑張ってやつていられた。
が、通勤中。
推しの配信に間に合うように、ご機嫌で帰宅していた私の脳天に、でっかくて重いなにかにクリティカルヒットし、不運にも私のアラサーな人生に幕を閉じた……と思ったら、目の前に現れた水晶の柱にしか見えない自称神様にごめんね、まちがって殺しちゃったと謝られ、好きなスキルと好きな姿で自分の管理する世界に転生させてあ~げる♪ と至極軽~く言われたのだ。
適当である。
(好きな格好かぁ)
まだ頭部に受けた衝撃で死にボケていた私は、なんとなく、幼い頃にものすごく大好きだった、ふわふわプリティな魔法少女を想像した。
すると早とちりの神様は、その想像を素早く察知! そのキャラクターの容姿のまま転生させてくれたのだ。
変なところで有能である。
加えて、特殊スキル『毎日すこぶる元気』と『美味しいお菓子万歳』、それから『招き猫もびっくり! あげあげ商売繁盛』という、生きていくうえで全く……とは言わないが、特別ではないけど、あると嬉しい。そんなにチートっぽくみえるお気楽スキルをくれたのである。
そして。
「じゃ、頑張ってね!」
そんな適当なご挨拶と笑顔とともに、今いた世界は暗転し、次に目が覚めたら、大空をスカイダイビングをさせられたのである。気が付いたら大空に投げ飛ばされていたとか、本当に意味が解らない。
後に聞いた話で、この世界に『異世界転移』した人間はもれなく『レッツスカイダイビング!』をさせられたうえで、新天地に降り立つらしい。
異世界転移の最初の試練か!? と正直神様のおつむを疑った。
ま、ペガサスボディのイケメン獣人様に助けてもらったけどね!
大地に落ちた、これでもかと憤慨すれど、目の前に神様はおらず、怒りを飲み込むだけ飲み込む仕方なかった私。
ちなみに、空から人が落ちて来るから、私たちみたいな異世界転移者は『空来種』と呼ばれているらしい。
あぁ、そうですか、どうでもいいです、そんな情報。
まぁそんなわけで。新天地に文字通り空から降り立った私は、この世界の4つの国の一つ、北の大国『ルフォート・フォーマ』の王都にて、空来種特権で店舗兼自宅と支度金までいただいて、第二階層である庶民街で、毎日お菓子を焼きながら、楽しく暮らし始めたわけだ。
適当スキルのおかげで本当に商売繁盛! だったしね。
楽しく、穏やかで、平穏な生活だったわけよ。
今の今まではな。
そんな、日々を穏やかに楽しく暮らしていた私のかわゆいお店『ミラクル☆ホイップ★シュガー』に『見つけた! 僕の運命の番!』という叫び声と共に1人の獣人が飛び込んで来たのはつい1時間前。
現在は、警ら隊に囲まれて、耳も尻尾もしゅん……と垂らし、小さく縮こまっている。
「……運命の番、かぁ」
ぼそっと私は口の中で呟いた。
それは、前世? でも、此方の世界でも、魂の片割れ、運命の恋人と言われる獣人にとってはまさに至宝ともいえる特別な相手の事であり、ともすれば、獣人を拉致監禁などの凶行に走らせるやべぇ本能の事なのだ。
だが、私はその言葉に実はかなりドキドキしていた。
(やばい! 私、このイケメン獣人に溺愛されちゃうの?! それって、なんのご褒美?)
と。
だって私は、年齢=彼氏いない歴の、悲しい干物女だったからだ。
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