【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる

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 馬車の旅を無事に終え、エンダライン侯爵家へ帰還したパルティアを、両親たちは待ち侘びていた。

「只今戻りました!長い旅に出してくださり御礼申し上げます、お父さまお母さま」

 すっかり顔色もよくなり、旅の疲れすら見せない晴れやかな笑顔をしている。
 スーラは涙を浮かべてパルティアを抱き寄せ、美しい金色の髪をやさしく撫でると、二人をまるごとカーライルが抱きしめる。

 パルティアは両親が自分をどれほどの愛で包んでいてくれたかを痛感し、抱きしめられたままもう一度、その気持ちを言葉に表した。

わたくし、お父さまとお母さまのこどもで本当にしあわせです。生んで育ててくださって感謝しております」

 それはスーラの涙腺を刺激し、カーライルは嗚咽が止まらなくなった。

 ─セリアズ公爵様もアレクシオス様を抱きしめて目を赤くされていらしたわ。きっと今のお父さまやお母さまと同じ気持ちでいらしたのね─

 両親のあたたかさとアレクシオス、田舎町の平民の少女たちとの出逢いが、確実にパルティアを大きく成長させていた。

「そうだ、セリアズ公爵家のご令息の話を聞かせてくれないか?」
「まあ、貴方ったら!今戻ったばかりなのに休ませもしないとおっしゃるの?」

 スーラに叱られて素直に謝り頭を掻くカーライルが、なぜか可愛く見えたパルティアが吹き出してしまう。愛おしい両親に腕を伸ばしてもう一度、ぎゅうっと抱きしめた。




 湯浴みをして一休みするともう夕餉の時間である。

「久しぶりの我が家の味だわ」

と言っても料理長の我が家の味なのだが。

「そうだ!料理長にだれか紹介してもらおうかしら」

 蛇の道は蛇。
その道を歩く者に尋ねる方がよい人材に早く出会えるのではないかと思いつき、すぐ実行する。

「パルティア様、そろそろダイニングに参りませんとお時間ですわ」
「ちょっと厨房に寄りたいの」
「お食事のあと、お礼がてらまわられたらよろしいのではございませんか?」

 ニーナの言うこともごもっともである。
忘れないように何度か口の中で呟いてから、両親の待つダイニングへと足を向けた。

「ゆっくり休めたか?」

 カーライルは今度は失敗しない。
ちょっとどやっていたが、スーラもやさしく笑って見せた。

 夕餉が始まると、待ちきれなかったようにカーライルがアレクシオスのことを聞きたがる。

「アレクシオス様は私にとって得難い仲間でございますわ!同じ経験をしたことで、誰より深くわかりあえる、分かち合える同志なのですっ!」

 鼻からフンと息を吐きそうな勢いで、パルティアが言い放ったのを見て、スーラは楽しそうにころころと笑って。
カーライルは呆気にとられていた。
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