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第十一章 異界の年の瀬

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 御名手みなての儀式と言うのが、きちんと終わった後。

 タイミングよく、フィーさんがいきなり瞬間移動で僕らの前に出てきた。


「やっほー!! まさか、ここで儀式するだなんて思わなかったけど」


 と言いつつも、フィーさんのニマニマ笑顔は止まらなかった。


「……ま、そうだが。いいきっかけだったぜ?」


 ぎゅーぎゅー言うくらい、シャルロッタさんを抱きしめていらっしゃるイシャールさんの表情は、とてもご満悦でした。


「ま、ねー? とりあえず……エディには伝えたから行っておいでよ? 早くて、明日には全体公表するんじゃない?」
「そーさせてもらうわ。行くぞ、シャル」
「は……は、い」


 イシャールさんは上機嫌でも……まだまだ自分に起きた状況を受け入れられないシャルロッタさんは、ガチガチのままだ。半分抱えられるようにして……おふたりはエディオスさんのところへ行ってしまった。

 僕らは僕らで、とりあえず僕の部屋に入ったわけですが。


「……いやぁ」
「ねぇ?」
「ふゅ」


 お互いに顔を合わせたら、パチンとハイタッチするしかない!!


「凄いです!! 急展開ですね!!」
「勢いはほとんどアナ達の時と同じだけど!! まさか、そこでやるとは思わなかった!!」
「もう、婚約ですか!?」
「うん! 御名手の儀式しちゃったし!……シャルの方は、まだまだ大混乱って感じだろうけど」
「いいですねぇ……」


 結婚云々とかは、まだまだだいぶ先でも……恋人としてのお付き合いに発展したのなら良かったぁ。お互い、どれだけ片想いされていたかは……僕は知らないけど、一区切りついて良かった。


「しっかし……エディもちょっと焦るかも」


 ぽやんぽやんしていたら、フィーさんがちょっと不安そうになった。


「エディオスさんがですか?」
「従兄弟と幼馴染みそれぞれに……御名手出来ちゃったんだもん。セリカに言いたくても言えない自信になってるし……セリカも色々頑固じゃない? 身分差とかは、シャル以上に気にしてるし」
「……なんとかならないでしょうか?」
「時間もかかるし、無理に押し進めても……さっきの儀式は、出来れば自分達の納得のいく場所でしてほしいからさ?」
「イシャールさん達の場合は?」
「僕の判断で、あの勢いを止めない方がいいと思ったから」
「たしかに」


 これ以上にないってくらい……タイミングが良過ぎた。

 今頃……エディオスさんは、どんな表情でイシャールさん達の報告を聞いているのだろうか?

 慌てる? 驚く?

 どっちもあるかもしれない。セヴィルさんもきっと同席していらっしゃるようだから……驚くだろうなあ? イシャールさん達の御名手については、たしか話してなかったような??


「けど。エディもだけど……もうひと組、決まってほしいねぇ?」
「え? 僕の知っている人達ですか?」
「うん。めちゃくちゃ知ってる子」
「……誰です?」
「ちょっとその前に」


 フィーさんが、いきなり絨毯を蹴って上に跳んで……例の大きなハリセンで天井を叩けば。

 野太い声と同時に、天井の板? が外れて誰かが落ちてきた!?


「あっででで……」


 落ちてきたけど、着地は綺麗にできたその人は。

 久しぶりにお会いする……フォックスさんだった。
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