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第70話 師弟関係を結ぶ

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 嫌な予感がする。

 ものすごーく、嫌な予感がする!!

 面倒な意味で!!

 ジタバタして逃げようにも、本気の腕力で肩を掴まれているので……足しか動けん。

 睨んでも、ロイズはニヤッと笑うだけだった。


「良いこと、ですか?」


 ケントの方は、何も思いつかないのかきょとんとしているだけだった。


「ああ。こいつにも、お前にもメリットになりそうな事だ」

「は?」


 私にもメリット?

 しかし……その笑みからは、やはり面倒事しか思い浮かばん!!

 私の生返事にも、ロイズの笑みは深まるばかりだ。


「ヴィーが、ケントと師弟関係を結ぶんだ」

「……は?」

「僕が、ヴィンクスさんの弟子?」


 どこにメリットがある!?

 すぐに突っかかろうとしたが……瞬時に、私はこいつの意図を理解しようと思考を巡らせた。


(……待てよ)


 私は曲がりなりにも、A級ポーション屋を経営する錬金術師。

 かたや、ケントは新進気鋭の……新米錬金術師とも言えるが、ポーション屋としては腕の立つ人間。

 ケントが作れるのは、ポーションでも『パン』だ。

 効果の程は、私が体験した通り……A級の私のものとほとんど差はない。

 だが……『パン』がゆえに、期限などが設けられてしまう。そこに、『師匠』の手が加われば……お互いの合同開発も出来る上に、利益は少し落ちても流通を試みる神の意向に……少しは沿えるだろう。

 私がその考えに行き渡ると、ロイズも察したのか……さらに笑みを深くした。


「……良い考えだろ?」

「…………まあ、悪くはない。…………ケントはどう思う?」


 私が至った考察を伝えると……ケントは、可愛らしい顔の頬紅をさらに赤くした。


「すっごいです! 流通がうまくいけば、僕もですけど……ヴィンクスさんのお役に立つんですね!?」

「まだ仮定の部分も多いがな? この世界でのポーションは基本的に薬品。それを……加工する技術に近いものを君は持っている。共同開発出来る可能性は……ゼロではない」

「やってみたいです!!」


 やはり、前世でも今でも若い分……新しいことには乗り気な気質がある。

 私の仮説にも……意欲的に参加しようとする姿勢は、見ていて気持ちが良い。

 まだ出会って、三十分も経っていないが……彼の人柄、パンの製造技術は未熟な部分があっても本物だ。

 私も……その美味さの虜になったのは本当な部分もある。


「……この男を、師にか」


 創始の大精霊こと、ラティストにはまだ完全に信用はされていないらしいが……序盤に比べたら嫌がられていないようだ。

 何より、主人のケントが乗り気だからな?


「んじゃ、成立ってことでいいか?」


 ロイズがそう声がけしてくると……私とケントはほぼ同時に頷いた。

 その後、すぐに……ケントに与えられたスキル『オープンキッチン』とやらを見せてもらったのだが。

 テイムした、獣魔の『スライム』が魔導具化して……それがポーションパンの要になっていると思うか!?
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