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第69話 彼も転生者の事実

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(馬鹿か私はあああああああああ!!?)


 長年、秘密にしてきたことを……こうも、ポロっと口にする阿呆がいるかああ!?


「……おい、ヴィー」


 ケントが不思議に思ったことを、聞き逃すわけがない……我が幼馴染みは。

 逃げ出そうとしかけていた、私の肩を掴み……絶対逃げないように力を込めてきた!?


「……痛いが、ロイズ」

「ぜってー、お前のことだから逃げようって魂胆だろ?」


 やはり、バレていた。

 一応試みてみたが、元A級冒険者だったロイズの腕力は……老化の呪いが解けたことで、ほぼ全盛期にまで戻っていたようだ。

 つまり、めちゃくちゃ痛い!!


「え、え? じゃ……ヴィンクスさんも転生者さん?」

「……も?」


 と言うことは、トリップではなく……ケントは転生者?

 見た目は日本人だが……まあ、ラノベ設定やらなんやらで外見をいじくるのはよくある。

 私は完全にこちら寄りだが……それもまた神の都合とやらか?


「はい。僕は、諏方すわ賢斗けんとと言います。今もですが、十九歳の日本人です」

「……十九?」


 童顔ではあるが、こちらはともかく……未成年か。

 苗字の感じも完全に日本人そのもの……しかし、どう言ういじくり方で転生させられたんだ?


「よく言われます。……童顔は前世のままで」

「……まあ。私も人のことは言えんが」

「! じゃあ、ヴィンクスさんも?」

「…………ああ。香坂こうさか拓哉《たくや》。それが私の前世だ」


 今の家族にすら、打ち明けていなかった……重要な秘密の名前。

 まさか、数十年越しに披露する日が来るとは。


「……と言うことは。この男も、ケントと同じ世界からき来たのか?」

「……事情などは、さっぱり記憶がないがな」

「マジかよ」


 打ち明けたことで、ロイズの拘束もだが……ラティストからの痛い視線は、ちょっとだけゆるまったと思う。まだ完全に信頼されていないようだが。


「え? けど、ポーション屋さん経営されているんですよね?」

「そうだが?」

「僕が神様に言われたんですけど……流通が乏しいって」

「……私だけのせいじゃないからな」


 大半の貴族どもは……腐りに腐っている世情だ。

 この悪いループを打破しようとは、長年考えてはいたが……こうも、あっさりと解決に導いているケントは……私を責めたりも何もしない。

 それだけ……会ったかどうか覚えていない私よりも、神に信頼されているのだろう。


「まあ、そこはな? つか、ラティストがなんか話つけてきたとか……魔法蝶にあったが?」

「へ?」

「そうなんです! しゅっ、って感じに神様とお話ししてきたようで」

「……ま、まさか」

「…………本名は、『ラティスト=ルーア=ガージェン』だ。ケントの契約精霊をしている」


 マジで……創始の大精霊!?

 なんで、若い小僧と契約出来ているんだ!!?

 すぐに事情を聞いたら……私より恵まれた生活をしていて、嫉妬の情に駆られたが!!


「……いいこと思いついたぜ?」


 そして……ロイズが不適な笑みを浮かべた。

 無茶苦茶嫌な予感がして、もう一度逃げようとしたが……ガッチリと両肩を掴まれたので、またもや無理だった!!
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