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31-2.終焉②

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 さあ、帰ろうと言うところで、戻ってきた者がいた。

 八岐大蛇ヤマタノオロチの本体をなんとかしていたらしい、月詠つくよみが戻ってきたのだ。その表情には焦りなどはなかった。


「姉上~! そちらもなんとか出来ましたか!?」
「みのりんのお陰でなんとかなったわよん?」


 そのやり取りをしてから、月詠はこちらに降りてきた。手には何かを掴んでいた。


「……これは、私があちらで為した方法と同じですか」


 未だに消えていない、大粒の砂糖の山をどうすればいいのかとも思うが、エミらが何も言っていないのでこのままでいいかもしれない。


「兄者、向こうでもこの方法を?」
「ええ。効果は絶大でしたよ」


 須佐すさが持ったままの亡骸を月詠に差し出すと、月詠の方も手に握ったものを弟神に差し出した。


「……ほぼ同じだな」


 須佐が口にした通り、月詠が持っていた本体の方もほとんど同じ姿であった。これをどうするのか、みのりには口を挟めない。

 と思っていたら、須佐と月詠。それにエミも加わって、亡骸に向かって手をかざした。


け」
「亡け」
「亡け」


 なく、のかと思いきや、彼らの手の中にあった八岐大蛇の亡骸が。砂山が崩れるように、さらさらと粉々になりながら崩れていったのだ。


「さらに、燃えろ~~!!」


 それから、真剣な雰囲気をぶち壊すようにエミが叫んだ途端。

 須佐らが投げた、崩れていく八岐大蛇の亡骸が燃えて消えていったのだ。


『……意識だった、魂の部分はわからないけど。僕らが心配することはもうないと思うよ?』


 魂の状態である笑也えみやに冷たい手でぽんぽんと肩を叩かれたが、冷たくても穫には温かく感じた。


「……はい」


 穫の記憶にあるようでなかった、過去の八岐大蛇。

 彼に何故執着されたのかはもうわからないが。羅衣鬼らいきに聞くのもやめておこうと、穫は決めたのだ。


「帰るわよーん?」


 エミらの仕事も終わったようで、生身で長い間居てはいけない穫のために、笑也に身体がある万乗ばんじょうの本邸に帰ることになった。

 どうやって戻るかと思っていると、エミが『テレポート!』とまたハイテンションで叫んだ後に。

 一瞬の浮遊感を感じたら、咲夜さくやも羅衣鬼も慣れない移動法でその場に倒れたが、穫は笑也に支えてもらったので絨毯の上に立てた。


「穫!?」
「穫さん!!?」


 ずっと待っててくれた、佐和さわいつきが涙を流しながらこちらに駆け寄ってきた。


「無事で良かった!!」


 佐和はらしくないくらいに、穫の前で号泣するのに、穫は『ありがとう』と言いながら頭を撫でてやった。

 ひとしきり、佐和達が泣き終えてから笑也はエミに身体に戻るようにしてもらったが。

 起き上がれず、筋肉痛のようなのに襲われてしまい。痛がる様子に皆で苦笑いするのだった。
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