イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

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31-3.尾の執着(???視点)

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 *・*・*(???視点)









 はじめの記憶は朧げだった。

 八岐大蛇ヤマタノオロチとして、長い永い常世を彷徨い。意識がいくつかに分裂した。その意識でも尾の部分は、弱く、とても弱く。

 異分子として捨てられるような弱い存在であったのだ。

 あの幼いみのりと出会うまでは。


『だぁれ?』


 現世にまで流れ落ち、あまりにも様変わりした世の様子を見ていた時に、幼くも霊力が高い幼子が尾を見つけた。

 人間にしては愛らしいかんばせが特徴の女の幼子。尾のことはどうやら見えているらしい。尾は意識体なので形成している状態ではないが。


『穫~? どうしたー?』
『あ、小鬼くーん!』


 また何かが来た。妖気を感じるので人間ではないだろう。尾の見える範囲に来ると、雑鬼がいるのがわかった。

 どうやら二人は仲が良いらしい。


『何してんだ?』
『ふわふわしてるのがいたのー』
『ふわふわ??』


 雑鬼が尾の前にまで来ると、一つ目の彼は怪訝そうに尾を睨んできた。


『……あ』


 何か言いたくても、言葉を理解したばかりの尾では何も言えない。だが、何か口にしようとそれらしい言葉を紡いでみた。


『ぼ……く、は……』
『お前、妖か?』
『た……ぶん』


 言いたいことが言えると、穫の方が顔を輝かせた。


『じゃあ! お友達になってくれるの!?』
『穫……なんでもかんでも友達にしない方がいいぞ? 俺が言えたことじゃないけど』
『だって! 新しいお友達!!』
『……はぁ。とりあえず、お前……名はなさそうだな?』
『……な、い』
『かくれんぼしよう!!』


 そんな穫の願いを聞いていくうちに、尾は彼女に執着し出したのだ。笑わせたい、喜ばせたいから。欲しい、欲しい、と己の欲望が膨らみ。

 とうとう、彼女と約束をした。


『…………大事な、約束』
『うん!』


 盟約以上に、契約。

 婚姻を結ぶための、契約。

 なのに、人間は薄情だ。大人になった穫はそれをすっかりと忘れていて、天津神あまつかみらに気に入られ、イタコの男と結ばれた。

 そして、尾を、八岐大蛇の肉体を消滅させたのだから。

 また小さな意識となり、閻魔大王によってその意識体を捕らえられた尾は、もう二度と彼女の前には行けない。

 もう、とうに消滅した呪怨のように阿鼻の地獄へと堕とされるだろう。


(……ああ、穫)


 二度と、彼女とは会えないと思うと、尾は涙が流れないのに泣きたかった。
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