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28-4.呪怨と十束(呪怨視点)
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忌々しい。
憎い、憎い、憎い!!
十束、万乗の守護たる存在。
何故、あの阿鼻から抜け出せたのかは、呪怨にとってはわからない。
だが今は。
憎い十束剣が目の前にいるのだ。
たとえ己が利用された存在であれ、むしろ好都合。
あの万乗の小娘が一緒でないのは不愉快だが、まあいい。
地獄の炎で焼かれた痛みを思えば、順に屠っていくのもまた楽しみだ。
力も得ている。
現世にいた頃とは段違いに。
たしかに、彼奴らから攻撃は受けたが、それを上回る力を呪怨は得ている。
分裂した己の力を感じて、あの十束とよくわからない鬼を屠るのみ。
【とぉおつぅうかあああああああああ!?】
力が。
力が溢れ出してくる。
まばゆくはないが、おどろおどろしい何かが呪怨の内側から溢れ出てくるのだ。これはいったい何か。
ここに来る前に、呪怨の身に何があったのか。
思い出せない。思い出せないのだ。だが、悪くない、むしろ心地良く感じる。
今なら、あの時に地獄に落とされた己とはまったく違うと理解が出来た。
「くっそ……雷衝撃!!」
鬼の方が、呪怨に雷属性の攻撃をぶつけてきた。
たしかに効くが、地獄の炎程ではない。
殺せる、屠れる、今なら。
十束を、万乗を。
今なら、今ならば。
彼奴らを、逆に地獄に落とせる。
己が味わった苦痛を逆に味合わせてやれる。
そう思い、分裂した者らと共に、十束ら向かって駆け出した途端。
「………………………………失せろ」
低い。
地を這うが如く、低い声が響いた。
なんだ、と思っていると呪怨が分裂したものは塵のように消えてしまい。
残った呪怨本体も、このままだと消滅してしまいそうなくらいに、己の個を留めておくのが精一杯だった。
【ぐ……が!?】
いったい何が起きたのか。
声の正体はわかった。
十束剣だ。
己が剣を構えていたかと思えば、諦めるどころか光のない瞳で言い放った直後。
ほとばしるような力を感じて、呪怨の分裂した者らを消滅。先程切りかかってきた時とはまったく違う存在になった。
「さ、咲夜?」
鬼が十束に名付けられた名を口にすると。
十束の方は、剣を軽く振ってから顔を上げた。美しい顔が、妖しくそしてさらに美しくなっていたのだ。
「……十束の恐ろしさ。……それを目の当たりにしたいのか? 呪い無勢が」
そして、十束は先程よりは信じられない速さで呪怨の懐に入ってきたのだ。
意識が、そこで途絶えた。
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