イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
146 / 168

28-5.奪うなら(???視点)

しおりを挟む





 *・*・*(???視点)









 尾は己の内側で起きている出来事を察知した。

 地獄で取り込んだ呪怨と。

 一時的にみのりから引き剥がした、十束とつかのつるぎに守護鬼。

 彼らを一緒にする事で、穫から完全に引き剥がして、十束の方は予定通りに、尾の内側に繋ぎ止めようとしたが。

 やはり、天津神あまつかみの所有物だった剣だ。

 そう簡単に、呪いの塊だった呪怨程度では、折れるのは難しいだろう。

 だが、それでもいい。


「くふふ……こっちはもう成せた・・・


 意識を閉ざさせた穫は、尾の腕の中にいる。あれだけ、強靭な呪力の縄を解いても、尾の掛けた意識を引き離す術には抗えなかったようだ。

 強いようで、弱い。

 だが、そこがいい。

 尾の腕の中にいる穫は無防備に眠ってしまっている。

 身体に触れても、なにも反応がない。それには少しばかり不満があるが、あのように全身で尾を拒絶するのも嫌だった。


「……本当に、覚えて……ないか」


 記憶を操作するのは簡単だ。

 あの達川たちかわと言う人間とは別に、尾とて穫とは繋がりがある。穫の左にある薬指の付け根。そこに刻んでおいた八岐大蛇ヤマタノオロチの刻印は色鮮やかに、そして蠢いている。

 尾が穫を伴侶にしようとしている証だ。

 だが、拒絶の印はある。蠢いていても、証が消えそうである状態。重ね掛けしようとしても、十束との繋がりが強固であれば、尾とて下手に術を行使出来ない。

 であれば、もうひとつの方法を取るしかない、と。

 穫の身体を抱え直してから、ゆっくりと彼女の美しいかんばせに己の顔を近づけていく。


「奪われたのなら……奪うまでさ」


 だから、先に奪われた穫の唇も上書きすれば良い。

 そう思ったのだが。



 バチィイイイ!!



 身体には触れられたのに、唇に触れる手前で雷撃を落とされた。

 痛みは感じたが、痛みよりも圧迫感を感じたのだ。穫が腕から落ちて、空間に彼女を放り投げてしまったが、穫は空間に漂うどころか誰かに抱き止められていた。


「みのりんの唇を奪おうだなんて、いい度胸してるわね? 外道が!!」


 尾が身体を起こそうとしたが、その上から別の何かが尾を起き上がらせないようにと乗ってきたのだ。

 痛みに耐えていると、さらに剣の柄か何かで押し潰れさそうになる。


「この女はお前のものではない。……八岐大蛇の断片とは言え、今度こそは消滅させる!」

「す……さ」


 宿敵である素戔嗚尊すさのおのみこと

 その手にあるのは、異常な力を宿している草薙くさなぎのつるぎ

 まずい、と尾は察知した。

 呪怨と冥府の負の力を取り入れたと言うのに、この組み合わせは勝ち目があるかわからなくなってきたのだ。

 加えて、天照大神あまてらすおおみかみの方は、あの達川の男がイタコとして魂の上から神を降霊している状態。

 その魂は、怒りに満ち溢れていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

博士の愛しき発明品たち!

夏夜やもり
キャラ文芸
 近年まで、私と妹は常識的でゆるやかな日常を送っていました。  しかし、ご近所に住む博士の発明品で、世界と一緒に振り回されてしまいます!  そんなお話。あと斉藤さん。 【あらすじ】  氏名・年齢・性別などを問われたとき、かならず『ひみつ』と答える私は、本物の科学者と出会った!  博士は、その恐るべき科学力と体をなげうつ研究努力と独自理論によって、悍ましき発明品を次々生み出し、世界と私たちの日常を脅かす!  そんな博士と私と妹たちで繰り広げるS・Fの深淵を、共に覗きましょう。 **――――― 「ねえ、これ気になるんだけど?」  居間のソファーですっごい姿勢の妹が、適当に取り繕った『あらすじ』をひらひらさせる。 「なこが?」 「色々あるけどさ……SFってのはおこがましいんじゃない?」 「S・F(サイエンス・ファンキー)だから良いのだよ?」 「……イカレた科学?」 「イカした科学!」  少しだけ妹に同意しているが、それは胸にしまっておく。 「文句があるなら自分もお勧めしてよ」  私は少し唇尖らせ、妹に促す。 「んー、暇つぶしには最適! あたしや博士に興味があって、お暇な時にお読みください!」 「私は?」 「本編で邪魔ってくらい語るでしょ?」 「…………」  えっとね、私、これでも頑張ってますよ? いろいろ沸き上がる感情を抑えつつ……。                                      本編へつづく *)小説家になろうさん・エブリスタさんにも同時投稿です。

後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~

絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。 ※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

美しいものを好むはずのあやかしが選んだのは、私を殺そうとした片割れでした。でも、そのおかげで運命の人の花嫁になれました

珠宮さくら
キャラ文芸
天神林美桜の世界は、あやかしと人間が暮らしていた。人間として生まれた美桜は、しきたりの厳しい家で育ったが、どこの家も娘に生まれた者に特に厳しくすることまではしらなかった。 その言いつけを美桜は守り続けたが、片割れの妹は破り続けてばかりいた。 美しいものを好むあやかしの花嫁となれば、血に連なる一族が幸せになれることを約束される。 だけど、そんなことより妹はしきたりのせいで、似合わないもしないものしか着られないことに不満を募らせ、同じ顔の姉がいるせいだと思い込んだことで、とんでもない事が起こってしまう。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

ピアニストの転生〜コンクールで優勝した美人女子大生はおじいちゃんの転生体でした〜

花野りら
キャラ文芸
高校生ピアニストのミサオは、コンクールで美人女子大生ソフィアと出会う。 眠りながらラフマニノフを演奏する彼女は、なんと、おじいちゃんの転生体だった! 美しいピアノの旋律と幻想的なEDMがつむぎあった時、それぞれの人間ドラマが精巧なパズルのように組み合わさっていく。 ちょっぴりラブコメ、ほんのりシリアスなローファンタジー小説。

元虐げられ料理人は、帝都の大学食堂で謎を解く

逢汲彼方
キャラ文芸
 両親がおらず貧乏暮らしを余儀なくされている少女ココ。しかも弟妹はまだ幼く、ココは家計を支えるため、町の料理店で朝から晩まで必死に働いていた。  そんなある日、ココは、偶然町に来ていた医者に能力を見出され、その医者の紹介で帝都にある大学食堂で働くことになる。  大学では、一癖も二癖もある学生たちの悩みを解決し、食堂の収益を上げ、大学の一大イベント、ハロウィーンパーティでは一躍注目を集めることに。  そして気づけば、大学を揺るがす大きな事件に巻き込まれていたのだった。

処理中です...