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28-5.奪うなら(???視点)
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尾は己の内側で起きている出来事を察知した。
地獄で取り込んだ呪怨と。
一時的に穫から引き剥がした、十束剣に守護鬼。
彼らを一緒にする事で、穫から完全に引き剥がして、十束の方は予定通りに、尾の内側に繋ぎ止めようとしたが。
やはり、天津神の所有物だった剣だ。
そう簡単に、呪いの塊だった呪怨程度では、折れるのは難しいだろう。
だが、それでもいい。
「くふふ……こっちはもう成せた」
意識を閉ざさせた穫は、尾の腕の中にいる。あれだけ、強靭な呪力の縄を解いても、尾の掛けた意識を引き離す術には抗えなかったようだ。
強いようで、弱い。
だが、そこがいい。
尾の腕の中にいる穫は無防備に眠ってしまっている。
身体に触れても、なにも反応がない。それには少しばかり不満があるが、あのように全身で尾を拒絶するのも嫌だった。
「……本当に、覚えて……ないか」
記憶を操作するのは簡単だ。
あの達川と言う人間とは別に、尾とて穫とは繋がりがある。穫の左にある薬指の付け根。そこに刻んでおいた八岐大蛇の刻印は色鮮やかに、そして蠢いている。
尾が穫を伴侶にしようとしている証だ。
だが、拒絶の印はある。蠢いていても、証が消えそうである状態。重ね掛けしようとしても、十束との繋がりが強固であれば、尾とて下手に術を行使出来ない。
であれば、もうひとつの方法を取るしかない、と。
穫の身体を抱え直してから、ゆっくりと彼女の美しい顔に己の顔を近づけていく。
「奪われたのなら……奪うまでさ」
だから、先に奪われた穫の唇も上書きすれば良い。
そう思ったのだが。
バチィイイイ!!
身体には触れられたのに、唇に触れる手前で雷撃を落とされた。
痛みは感じたが、痛みよりも圧迫感を感じたのだ。穫が腕から落ちて、空間に彼女を放り投げてしまったが、穫は空間に漂うどころか誰かに抱き止められていた。
「みのりんの唇を奪おうだなんて、いい度胸してるわね? 外道が!!」
尾が身体を起こそうとしたが、その上から別の何かが尾を起き上がらせないようにと乗ってきたのだ。
痛みに耐えていると、さらに剣の柄か何かで押し潰れさそうになる。
「この女はお前のものではない。……八岐大蛇の断片とは言え、今度こそは消滅させる!」
「す……さ」
宿敵である素戔嗚尊。
その手にあるのは、異常な力を宿している草薙剣。
まずい、と尾は察知した。
呪怨と冥府の負の力を取り入れたと言うのに、この組み合わせは勝ち目があるかわからなくなってきたのだ。
加えて、天照大神の方は、あの達川の男がイタコとして魂の上から神を降霊している状態。
その魂は、怒りに満ち溢れていた。
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