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25-4.出来ないことよりも

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 *・*・*








 今、何か。

 みのりの背筋に、何か寒気のようなものを感じた。

 思わず、洗い物をしていた皿を落としそうになったが、一緒に洗っていた咲夜さくやが受け止めてくれた。


「……どうした、穫?」


 咲夜が心配そうな表情になっていると言うことは、穫の顔色も最悪かもしれない。


「…………言い難いんだけど。変な悪寒がしたの」
「……日に日に、穫の霊力は高まっている。私がいるからもあるが、例の八岐大蛇ヤマタノオロチの繋がりも関係があるだろう」
「…………やっぱり、復活しちゃうのかな?」
「……わからない。だが、大神おおみかみらが動かれているのであれば……幽世かくりよ……穫にわかりやすく言えば、地獄で何かあったのかもしれん」
「…………手伝え、ないよね?」
「呪怨の時と違って、規模が違い過ぎる。我らでは……難しい」
「うん……」


 決意はしたが、実際に対処出来るかなんて誰にもわからない。

 ほとんど訓練を受けていない一般人に等しいから。穫がどう動いたところで、余計に危機に向き合うだけだ。

 笑也えみやが一緒でも、笑也もイタコだ。エミの依代となる以外はあまり強くないと本人が言っていた。であれば、神であるエミ達に任せるしかない。

 ここで大人しく生活しているのを、個人的には歯がゆく思っても実際は何も出来ないのだ。いつき達とは違って。

 そこで穫は、この間会いに来てくれた斎達のことを思い出した。



「? どうかしたか?」
「咲夜。私……結界師の才能がなくもないんだよね?」
「……ああ。そうだが」
「本職の人に、習うのってダメかな!?」
「……あの万乗ばんじょうの当主にか?」
「もちろん、笑也さんに許可もらって。アポもとってからだけど!!」
「……私がいてもダメか?」
「出来ないままでいるのが嫌なの!」
「……そうか」


 とりあえず、笑也の部屋に行って彼に事情を話してみると。

 笑也は最初は唸っていたが、穫の本気の決意に根負けしたのか大きくため息を吐いた。


「たしかに、自衛も必要だけど。咲夜がいるのに」
「もっと、出来る事を増やしたいんです!」
「向上心は認めるよ。けど、その前に……今の穫ちゃんの霊力がどれだけ高いか確かめよう」
「?」


 許可のようなものはもらえたが、先に確認したいことがあるらしい。

 穫は笑也に部屋に上がるように言われたので、咲夜と中に入ることにした。中は少しインスタント食品のゴミでごたついていたため、羅衣鬼らいき掃除機ですぐに片付けた。
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