132 / 168
25-5.穫の力
しおりを挟む
綺麗に整えた笑也の家のリビングに、笑也は書斎から持ってきた大きな布を畳んだものを端に寄せたローテーブルがあった場所に広げた。
「穫ちゃん、これの真ん中に座って?」
広げられた布には、紫色の線で複雑な模様が描かれていた。漢字だったり、英語だったり知らない言葉だったり。
何か意味があるだろうが、笑也の言う通りにスリッパを脱いでから布の上に足を乗せる。ツルツルとした感触が靴下越しに伝わってきてとても心地が良い。しかし、楽しんでいる場合ではないので穫は気持ちをしっかりとさせてから星と丸がいくつも描いてある部分に座った。
正座の方がいいから、正座にしたが。
笑也は気にせずに、穫の前に胡座で腰掛けると穫の額に右手を乗せた。
「目を閉じて」
「はい」
穫が目を閉じると、彼は何度か深呼吸をした。
「……示せ、示せ。この者の内を」
笑也が呪文を口にした途端、穫の額が熱くなってきた。笑也の手を通じて、何か力が働いているのかもしれない。
「我、達川の次代を担う者。この者の番になる者。この者の内なる力を示せ。我らの前に示せ」
少しだけヒリヒリしてきたのに加えて、体全体も熱くなってきた。
だが、これは必要な事なので穫は少しうめいたが耐えるように頑張った。
「万乗の欠片の欠片。十束所持者。この者の内なる力……如何程か」
そして、穫は感じた。
体から、湧き上がるように感じる何かが。
穫の体だけでなく、この部屋を突き抜けてしまいそうな何かが体から溢れ出るのを。
だが、目を開けていいとは言われていないので、開けるのも我慢した。
「……閉ざせ、閉ざせ。この者の内に戻れ」
笑也が静かに、呪文を口にすると。熱かった体の火照りがすぐに消え去ってしまい、危うくその場で倒れそうになったのが笑也に抱きとめられた。
目を開けると、笑也がヨシヨシと穫の髪を撫でてくれた。
「やっぱり凄いよ。穫ちゃんは僕以上の霊力の持ち主だ」
「…………役に立て、ますかね?」
「斎さん達も多分承諾してくれるだろうけど。僕も一緒に行くよ」
「ありがとうございます……」
何も出来ないまま、じっとしているのは嫌だから。
何かしら、出来るのであればそれがいい。
穫の力は、とにかく凄いのだと分かったが実感があまり持てなかった。今まで、そう言う知識などがなかったせいもあるので。
とりあえず、笑也から連絡してくれる事になったので、体が落ち着くまでソファに腰掛けていると。
笑也から、斎が承諾してくれたとすぐに知らせてくれた。
「穫ちゃん、これの真ん中に座って?」
広げられた布には、紫色の線で複雑な模様が描かれていた。漢字だったり、英語だったり知らない言葉だったり。
何か意味があるだろうが、笑也の言う通りにスリッパを脱いでから布の上に足を乗せる。ツルツルとした感触が靴下越しに伝わってきてとても心地が良い。しかし、楽しんでいる場合ではないので穫は気持ちをしっかりとさせてから星と丸がいくつも描いてある部分に座った。
正座の方がいいから、正座にしたが。
笑也は気にせずに、穫の前に胡座で腰掛けると穫の額に右手を乗せた。
「目を閉じて」
「はい」
穫が目を閉じると、彼は何度か深呼吸をした。
「……示せ、示せ。この者の内を」
笑也が呪文を口にした途端、穫の額が熱くなってきた。笑也の手を通じて、何か力が働いているのかもしれない。
「我、達川の次代を担う者。この者の番になる者。この者の内なる力を示せ。我らの前に示せ」
少しだけヒリヒリしてきたのに加えて、体全体も熱くなってきた。
だが、これは必要な事なので穫は少しうめいたが耐えるように頑張った。
「万乗の欠片の欠片。十束所持者。この者の内なる力……如何程か」
そして、穫は感じた。
体から、湧き上がるように感じる何かが。
穫の体だけでなく、この部屋を突き抜けてしまいそうな何かが体から溢れ出るのを。
だが、目を開けていいとは言われていないので、開けるのも我慢した。
「……閉ざせ、閉ざせ。この者の内に戻れ」
笑也が静かに、呪文を口にすると。熱かった体の火照りがすぐに消え去ってしまい、危うくその場で倒れそうになったのが笑也に抱きとめられた。
目を開けると、笑也がヨシヨシと穫の髪を撫でてくれた。
「やっぱり凄いよ。穫ちゃんは僕以上の霊力の持ち主だ」
「…………役に立て、ますかね?」
「斎さん達も多分承諾してくれるだろうけど。僕も一緒に行くよ」
「ありがとうございます……」
何も出来ないまま、じっとしているのは嫌だから。
何かしら、出来るのであればそれがいい。
穫の力は、とにかく凄いのだと分かったが実感があまり持てなかった。今まで、そう言う知識などがなかったせいもあるので。
とりあえず、笑也から連絡してくれる事になったので、体が落ち着くまでソファに腰掛けていると。
笑也から、斎が承諾してくれたとすぐに知らせてくれた。
1
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
俺様当主との成り行き婚~二児の継母になりまして
澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
夜、妹のパシリでコンビニでアイスを買った帰り。
花梨は、妖魔討伐中の勇悟と出会う。
そしてその二時間後、彼と結婚をしていた。
勇悟は日光地区の氏人の当主で、一目おかれる存在だ。
さらに彼には、小学一年の娘と二歳の息子がおり、花梨は必然的に二人の母親になる。
昨日までは、両親や妹から虐げられていた花梨だが、一晩にして生活ががらりと変わった。
なぜ勇悟は花梨に結婚を申し込んだのか。
これは、家族から虐げられていた花梨が、火の神当主の勇悟と出会い、子どもたちに囲まれて幸せに暮らす物語。
※3万字程度の短編です。需要があれば長編化します。
学園戦記三国志~リュービ、二人の美少女と義兄妹の契りを結び、学園において英雄にならんとす 正史風味~
トベ・イツキ
キャラ文芸
三国志×学園群像劇!
平凡な少年・リュービは高校に入学する。
彼が入学したのは、一万人もの生徒が通うマンモス校・後漢学園。そして、その生徒会長は絶大な権力を持つという。
しかし、平凡な高校生・リュービには生徒会なんて無縁な話。そう思っていたはずが、ひょんなことから黒髪ロングの清楚系な美女とお団子ヘアーのお転婆な美少女の二人に助けられ、さらには二人が自分の妹になったことから運命は大きく動き出す。
妹になった二人の美少女の後押しを受け、リュービは謀略渦巻く生徒会の選挙戦に巻き込まれていくのであった。
学園を舞台に繰り広げられる新三国志物語ここに開幕!
このお話は、三国志を知らない人も楽しめる。三国志を知ってる人はより楽しめる。そんな作品を目指して書いてます。
今後の予定
第一章 黄巾の乱編
第二章 反トータク連合編
第三章 群雄割拠編
第四章 カント決戦編
第五章 赤壁大戦編
第六章 西校舎攻略編←今ココ
第七章 リュービ会長編
第八章 最終章
作者のtwitterアカウント↓
https://twitter.com/tobeitsuki?t=CzwbDeLBG4X83qNO3Zbijg&s=09
※このお話は2019年7月8日にサービスを終了したラノゲツクールに同タイトルで掲載していたものを小説版に書き直したものです。
※この作品は小説家になろう・カクヨムにも公開しています。

美しいものを好むはずのあやかしが選んだのは、私を殺そうとした片割れでした。でも、そのおかげで運命の人の花嫁になれました
珠宮さくら
キャラ文芸
天神林美桜の世界は、あやかしと人間が暮らしていた。人間として生まれた美桜は、しきたりの厳しい家で育ったが、どこの家も娘に生まれた者に特に厳しくすることまではしらなかった。
その言いつけを美桜は守り続けたが、片割れの妹は破り続けてばかりいた。
美しいものを好むあやかしの花嫁となれば、血に連なる一族が幸せになれることを約束される。
だけど、そんなことより妹はしきたりのせいで、似合わないもしないものしか着られないことに不満を募らせ、同じ顔の姉がいるせいだと思い込んだことで、とんでもない事が起こってしまう。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~
絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。
※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
ピアニストの転生〜コンクールで優勝した美人女子大生はおじいちゃんの転生体でした〜
花野りら
キャラ文芸
高校生ピアニストのミサオは、コンクールで美人女子大生ソフィアと出会う。
眠りながらラフマニノフを演奏する彼女は、なんと、おじいちゃんの転生体だった!
美しいピアノの旋律と幻想的なEDMがつむぎあった時、それぞれの人間ドラマが精巧なパズルのように組み合わさっていく。
ちょっぴりラブコメ、ほんのりシリアスなローファンタジー小説。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる