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第21話 あんドーナツ①

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 生地を丸めて丸めて。

 出来上がったら……ちょっと置いて。

 すると、おじいちゃんがうーんと首を曲げたのよね?


「おじいちゃんどうしたの?」

「いや……自分で言っといてなんだが。あんドーナツの仕上げがな」

「え?」

『ふむ。簡単に言うと……段蔵だんぞうはドーナツに挟むのではなく、包む方法をしたいのじゃろう』

「つつむ?」


 美濃みのさんが、あたしにもわかりやすく言ってくれているんだけど……やっぱりわかんないや。

 それがわかっているのか、美濃さんはくすくす笑うだけだ。


桜乃さくの。パンに中身があるものはわかるか?』

「なかみ?」

『簡単なのじゃと、あんぱんじゃな』

「! うん! わかる!」


 じゃあ、おじいちゃんがやりたいのは。

 ドーナツに最初から……あんこ入れたいってこと?

 はさむのとどう違うんだろう?


「包みやすいし、あと入れよりも食感が良い。店ので出してるのと同じだしな。桜乃も好きだろ?」

「! 好き!!」


 サクサクじゅわ~って言うの、大好き!!

 けど……つつむって大変なのかも。

 おじいちゃんとかおとうさんは、なんでもすぐにできるけど。


『であれば……段蔵。あんこはあちきが用意しよう』


 美濃さんが、ぱちんと指を鳴らしたら……ドーンって、台の上にあんこが入った入れ物が出てきた!!

 あと、うすくておっきなアイスの棒みたいなのも。


「これなーに?」

『包む作業には大事な道具じゃ。あんベラと言うのじゃよ』

「……あんべら」

「桜乃、それであんこ食うんじゃねぇぞ?」

「しない!」


 あんこは食べたいけど……ドーナツできるまでがまんするもん!!


「んじゃ……俺が手本見せた方がいいのか?」

『あちきもやろう』


 お手本を見せてくれるから……あたしは美濃さんのとなりで待って。

 ふたりが、めんぼうで生地を少しのばして……手に持って、あんべらであんこを取って……生地にのせた?


「おいしくなるの?」

『まあ、見ていりゃれ』


 で、ぽーんぽーんって、美濃さんは生地にのせたあんこを……とじちゃった。おまんじゅうみたい?


「……これでいいの?」

『これにも軽く発酵させれば……揚げられるのじゃよ』

「そうさ」


 おじいちゃんがどんどん、つつんでいく!! すっごぉい!!


『桜乃も少しやるか?』

「うん!」


 楽しそうだから、美濃さんに教えてもらいながらやったんだけど。

 丸めの練習以上に……むずかしくて、べちゃべちゃになったわ。


『大丈夫じゃ。直しはあちきはやろう。回数を重ねることが大事なのじゃよ』


 美濃さんは、おこらない。

 おじいちゃんも、美濃さんの前ではおこらない。

 別に、おこってほしくはないんだけど……こんなにも楽しくていいのかなあ?
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