完結 R18 わたくし単なる悪女でございましたが、なぜだか巨大ロボットを操縦しています。

にじくす まさしよ

文字の大きさ
9 / 18

6 まさかの

しおりを挟む
 キュービクルの必殺技で倒れたノウキは、意識不明になっていただけのようだ。もともとUMAの研究室に運ぶ予定だったが生体反応を確認したので、治療を施すことに。
 といっても、なにが起こるかわからないので、体中をぐるぐる巻きにして、羽は使えないように固定している状態でだけれども。

「あ、気づいた」

 目が覚めたノウキは、目の前にいる白い服を着ているメガネの美女を認識すると、なんと人語を話した。

「お前、どうしてここに……」
「はい? どちらかというと、ここはどこだーとか、お前はだれだーとか、くっ殺せーとかじゃないの?」
「は? グラス、なにふざけたことを言ってるんだ。しかもそんな下賤な庶民のような言葉遣いなど……」

 よくわからない言葉を続けながらも興奮していくノウキ。これ以上は危険だと、彼が話しかけていたDrグラスは、グサッグサッとペン型の超強力鎮静剤を彼に突き立てた。一度肌に当てれば十分なのに、これでもかと何本も。

 因みに、ドクターとノウキは別の部屋にいる。しかも、何百メートルも離れた場所だ。ドクターは、軍医ではあるが戦闘は基本的なものしかできないので安全な場所にいるのは当然だ。話すのはモニター越しだし、遠隔操作で眠らせていたわけだけど。

「あの、ドクター?」
「あら、おほほ。私としたことが。UMAというだけでなく、こいつを見ているとなんだか無性に腹が立っちゃって」

 わたくしは、ドクターに前々から聞きたいことがあったので、確認するためにここに偶然いただけなのだけれど、まさかノウキが目を覚ます瞬間に立ち会うとは思っていなかった。そして、ふたりのやりとりを見て、わたくしの考えが確信に変わる。

「ドクター、いえ、グラスさん。あなた、もしかしたら前世の記憶がありませんか? 顔だけですけれど、あのUMAに心当たりや、個人的な強い憎しみなどありませんか? 別人だった思い出の欠片でもなんでもいいんですけれど……」

 もしも、見当違いで変な子扱いされてもかまわない。そう思って聞いたのだが、グラスの反応は想像以上のものだった。

「やっだー、タイムさん。なんだー、あなたも知っていたの? 思い出したと言うべきかしら。いつから?」

 彼女は、ノウキの前世での元婚約者だった。ノウキがメガーに入れ込んだので、さっさと見切りをつけて婚約解消をして、もっと良い男性と婚約したのである。

 婚約解消した直後の彼女の、人生の汚点だと言わんばかりの、『損きりはさっさとやるべし。あの人がらみの時間がもったいなかったわ。ま、でも、いろいろ勉強になったから、授業料ってとこかしら。それに、婚約者の時に、ノウキ個人の権利や会社の半分を合法的に手に入れることに成功していたしね』という言葉に感心したものだった。

 わたくしたちはお互いの状況を確認しあった。

「あの時は、助けてあげられなくてごめんなさい。言い訳になるけれど、あなたの友人たちも閉じ込められたり家族を人質にとられてしまっていて。私は別の国にいたし……」
「いいえ、いいえ……前世のことは、なんというかドラマを見ているようで、自分のことだけど、自分じゃないというか。それに、どうすることもできなかったと思いますし、わたくしが差し伸べてくださろうとする手を、犠牲者を増やしたくないから掴まなかったかと。だから、そんな風に頭を下げないでくださいませ。それよりも、わたくしは友人たちに裏切られていなかったんですね。当時は、本当に世界で一人ぼっちになった気がしていて……そのことを知れてとても嬉しいです」

 ノウキは、いびきをかきながら眠っている。尋問するには起こさなければならないが、見ていてむかむかするし、軍部の専門家を呼んで交代した。彼は、医学と科学、そしてごうも……、尋問のプロだ。肉体的にも精神的にも、相手にとってどのようにアプローチすればいいかをすぐに探り当てて、期待以上のデータを採る事にたけている。

「お任せください。得意分野ですから」
「マディ・サイエティ中尉、貴重なサンプルですから、ほどほどにしてくださいね」
「おやまあ、いつもみたいに壊さないようにとか釘を刺さないんですね?」
「人間じゃないし、頑丈そうだから」

 マディさんは、面白いおもちゃを見つけたかのようににこにこしている。

 余談だけれど、彼こそがグラスさんの新しい婚約者だった人で、彼にも記憶があるらしい。今は、とっくに結婚しているとのことだった。

 つまり、彼は妻の元婚約者の裏切り者で、しかも人類の敵に対して容赦はしなさそうだということ。少しだけノウキに同情してしまうが、これも人類の未来のため、ほんの少し私怨を晴らすため。他の仲間やメガーのことなどをしっかり聞き出してもらいたい。

 わたくしたちは、グラスさんの私室に移動した。私室はプライバシーが守られている。ここならどんな話をしていても外部にはもれない。

「あれから、あの国は自滅をしたわ。メガーが暴君のようになっちゃって、皆国を見捨てたの」
「やっぱりそうですか……国民たちには迷惑なことでしたね」

 少し、寂しいような、でもやっぱりどこか歴史の一コマのような気がする。わたくしは、結構薄情な人間だったようだ。

 出されたエナドリを飲んで、チョコとナッツがキャラメルに包まれたプロテインバーにかじりつく。今日は訓練が休みだから、夕食は控えめにしないといけなさそう。

「いいのよ。国民ったら、タイムさんがどれほど自分たちのために身も心も削っていたかも知らず、ずーっと不満や愚痴をあなたにぶつけていたんだし。あなたを偲ぶ人たちはなんとか助けることができたから良しとしましょう」
「良しとしていいんでしょうか」
「100%完璧なことなんてできないわ。出来ることを出来る範囲でするしかないじゃない。ふふふ、今のあなたたちと一緒よ。それにしても、カエリズミさんは覚えてないのねぇ。あなたの忠実な侍女だったのに。それでも、前世と同じようにあなたLOVEなようで安心したわ」
「LOVEって誤解をまねきかねないような言い方はしないでくださいませ。彼女は全く覚えてなさそうです」
「ふふ、あなたたちを見ていると、なんだか前世がなつかしくなるの。勿論、楽しくて幸せだった学園生活のことよ。今も昔も、女の子たちに人気なのね」
「わたくしは大した人間じゃないんですけど、これも、皆様の優しい気持ちのおかげですわ」
「いきすぎた謙遜は嫌味よ。さ、そろそろデータも取れたことでしょうし戻りましょうか」
「ええ」

 わたくしたちが、元居た場所にたどり着くと、別の敵が襲来したことを伝えられたのであった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。 ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

処理中です...