必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
上 下
79 / 541
17♡

17♡3

しおりを挟む



 ───何回イかされたんだろ、俺。

 聖南は三回……? いや、もっとなのかな。

 俺は途中意識を飛ばした時もあったから、どれだけの時間エッチしてたのか想像もつかなかった。

 最後は精液すら出なくなった俺の大事なところは、突然の快楽の連続にクタクタだ。

 一緒にお風呂に入ったところまでは覚えてる。

 聖南が俺の孔に指を入れてローションを掻き出す手付きにまた喘がされて、しかも「挿れたい」って囁かれたから忘れるはずない。

 そこから今に至るまではまったく記憶になくて、目覚めても顔や指先を動かすのすら億劫だった。

 間近で眠る聖南は物凄くスッキリした様にスヤスヤと眠っていて、外が明るくなり始めた室内に優しい光が射し込んでいる。

 ……ここに来たのは夕方だったはず。

 あれからぶっ通しであんな事やこんな事をやってたのかってビックリだけど、背中や腰の鈍痛と、お尻にまだ聖南のが入ってるような感覚、そして喉の痛みが何もかもを如実に表していた。

 聖南は……気持ち良かったかな。

 あんなに何回もするくらいだから、多分、気持ち良かった……はず。

 俺も最初は怖くてたまらなかったけど、最後の方なんか聖南にもっとってせがんでしまったような消したい記憶もあって。

 気持ち良くて、このままずっと愛されてたいって強く望んでしまったけど…… 一回エッチしたから、これで終わりだ。

 俺はもう、聖南に、用無しだって言われる覚悟をしないといけない。

 嬉しい言葉をたくさん聞けて、目一杯抱き締めてくれて、全身で愛してくれて……こんなにも幸せな気持ちなのは生まれて初めてかもしれなかった。

 俺は俺のままでいいんだって、ちゃんと言ってくれたのは聖南が初めてだったから。

 そんな聖南の重荷にはなりたくない。

 聖南の想いは一過性。

 そう聖南が気付いてしまった時、俺はきっと立ち直れなくなっちゃうから、このまま楽しくて幸せな思い出で終わらせるのが一番だと思う。

 逃げではなく、身を引く。

 尤もらしい言葉を見付けると、俺の卑屈さも正当化できる気がした。

 指を動かすのも億劫だけど、体中の鈍い痛みを堪えながら俺はゆっくり上体を起こした。

 腕枕から俺の気配がなくなって、聖南もすぐに目を覚ます。


「どこ行くの」
「あ、トイレ……」
「付いてく」
「い、いいって! それはさすがに恥ずかしいです!」
「……すぐ戻れよ」
「………………はい」


 俺の返事に安心したのか、一晩中運動して疲れてる様子で、また安らかに寝息を立て始めたのを確認すると、真っ裸だった俺はハンガーに掛けられた服を大急ぎで着た。

 脱ぎ散らかしてたのに(正確には聖南に脱がされて放られた)、俺が知らないうちに聖南が掛けてくれてたみたいで、意外にマメなんだなと笑う。

 トイレに行くフリをして寝室から出ると、ふとリビングが視界に入って立ち止まった。

 生活感の無いだだっ広い空間に、大きなコーナーソファ、正面には特大の大型テレビ。

 甘いコーヒーを聖南自ら作ってくれたキッチンも最低限のものしか置かれていなくて、食事はいつもどうしてるんだろって疑問を抱いた。

 ……そんなの、俺にはもう関係ないけど。

 何だかこうして聖南の存在を感じていると、前と同じでずっとここに居たいと思ってしまう。

 でも、ダメだ。

 聖南の想いは、気持ちは、言葉は、俺を舞い上がらせるだけ舞い上がらせて、離れてくかもしれないんだ。

 「一回だけ」の彼女達と、同じ気持ちでいなきゃ俺は……情けなく聖南に縋ってしまいそうで怖い。

 なんたって、俺が好きになった人は、トップアイドル様。

 キラキラした眩しい世界で生きている人だ。

 俺には相応しくない。 何もかも。




 俺は静かに玄関を出た。

 二度とここには来ないと誓って。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。

西友
BL
 こぼれ話し、完結です。  ありがとうございました!  母子家庭で育った璃空(りく)は、年の離れた弟の面倒も見る、しっかり者。  でも、恋人の優斗(ゆうと)の前では、甘えん坊になってしまう。でも、いつまでもこんな幸せな日は続かないと、いつか終わる日が来ると、いつも心の片隅で覚悟はしていた。  だがいざ失ってみると、その辛さ、哀しみは想像を絶するもので……

推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです

一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお) 同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。 時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。 僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。 本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。 だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。 なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。 「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」 ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。 僕の推しは俳優の、葛城 結斗(Iかつらぎ ゆうと)くんだ。 その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。 悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。 え?葛城くんが目の前に!? どうしよう、人生最大のピンチだ!! ✤✤ 「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。 全年齢向けの作品となっています。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...