必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 揺すられてもなかなかイくにイけなくて、射精感には抗えずに自ら扱いちゃえと手を伸ばしかけると、気付いた聖南に腕を取られて頭上に追いやられてしまう。

 何で触らせてくれないんだって怒りの目で聖南を見るも、彼の瞳は欲にまみれて視点が定まらないほど激しく興奮してるようだった。


「っ……あ、ぁあっ……ッッ……ちょっ、せなさんっ……おねが、っ……触ら、せて……イきたい……っ」
「俺のだ、触んな」
「そん、な……っ……んっ……ぁんっ……」


 自分から出てるとは思えない甘ったるい声が、さっきから部屋中に響いてる。

 イきたいのに触らせてもらえないし、中を何度も擦られてお尻とお腹がビショビショだし、腰を振る聖南はカッコよすぎるし、もうほんとにおかしくなりそうだった。


「一緒にイこ」
「……あ、……やぁぁっ……待っ、ん……あぁぁあ……っっ」


 宣言通り、俺のものを握って扱き始めた聖南は、先ほどよりもさらに早く内壁を擦り上げた。

 凄まじい快感の波と待ちに待った直接的な刺激に、やっとイけそうだと下半身に力が入った矢先、扱いてくれてた掌が無情にも昂ぶった俺のものをギュッと握る。


「うっ……なん、なん……で……あっ……はぁ、っん……」


 突然堰き止められた欲の行き場が無くなり、それは涙となって溢れた。


「や、もうイくの、惜しいなーと思って」
「はぁ……っ? やっ、ちょっ……もうイき…たい……んっ……のに!」
「まだまだやる気なんだけど、ほら、これ、記念すべき俺らの初エッチだろ? もったいねぇっつーかさ」


 聖南も随分ツラそうなのに、喋りながらも尚突いてくる器用さに、これが経験の差なのかと天を仰いだ。

 初エッチだろ?と言う聖南の笑顔は、今まで見たどんな人のそれも霞んでしまうほど美しくてカッコイイ。

 だけど、今それは言わなくていいと思う。

 ゆるゆると孔を貫く聖南の腰付きはこんなにも射精を促してるのに、このまま堰き止められてたら、変になってしまう。

 早く手を離してほしい。

 どうやったらイかせてくれるかな……。

 ひっきりなしに声をあげてるせいか、やけに喉が痛くなってきた。

 頬擦りしてくる聖南の背中を抱いて、俺のものを握る手のひらに扱いてほしいと懇願したくても、声は掠れてるし何よりちょっと恥ずかしい。

 イきたい、イきたい……と背中を波打たせていた俺は、あ、と閃く。

 勇気を出して、おもむろに聖南の両頬に手をやり、なんと自分からキスをしてみた。


「ん……ふ、っ……んんっ……」
「……はるー、よそでそんな事すんなよー」
「あっ、……あっ、んっ、……早っ……っ……や……やっぁぁぁ……!」


 キスが大好きな聖南へ、俺からの初めてのキスはよほど効果があったみたいで、ようやく俺は射精できた。

 脳ごと揺れたかと思うほど激しく腰を打ち付けられて、ちょっとだけ視界が真っ暗になる。

 同時に、聖南も一際早く抜き差しした後、荒い息遣いのまま俺の体に倒れ込んだ。


「はぁ……はぁ、……はぁ……」
「大丈夫? 痛かった?」
「…………大丈夫、です……」
「良かった……。 好きな人とすんのってこんな気持ちいいのか……」


 まるで女性側のような台詞を呟いた聖南は、チュッとまたキスを落としてきて、行為の後の恥ずかしさも相まって俺はひたすら照れた。

 これが、セックスというものなんだ──。

 肌を重ねるとか、交ざり合うとか、そういう表現がピッタリだった。

 オナニーすらほとんどしてこなかった俺には、刺激が強過ぎたのかもしれない。

 聖南の大きな体を受け止めた俺は、ベッドに全体重を沈ませて天井を見詰め、しばらく動く事が出来なかった。


「ヤバ……ゴム変えなきゃなのに出たくねぇ」
「……か、変えるって……?」


 中に入ったままの聖南のものが、このほんの少しの間にまた元気を取り戻してきてハッとする。

 出たくないと駄々をこねてる間にも、さっきと同じ存在感が中を押し拡げ始めた。


「え、……聖南さん、あの……」


 俺はその性の深さに驚くというより、続ける体力が保たなくて愕然としてしまった。

 戸惑う俺に、聖南はアイドルらしいキラキラな笑顔を向ける。


「もう少し付き合って?」
「……ん、っ? んぁぁ……っ」


 ズルっと一気に引き抜かれ、また俺はあられもない声を上げた。 自分は一体どうしちゃったんだろうと怖くなるくらい、簡単に喉を潰してしまう。

 聖南が新しいコンドームに変えている様を力無くぼんやり眺めていると、手慣れたその動作に悲しくなった。

 けれど再び覆い被さってきた聖南に強く抱き締められたら、途端に快楽の波に攫われて思考が働かなくなる。

 悲しい気持ちは、与えられる快感でその時は忘れていられた。

 聖南が俺で興奮してくれて良かった。 すごく嬉しかった。

 何も考えられないくらい目まぐるしく抱かれた俺は、聖南の背中越しに見える月をたまに見詰めながら、長い長い「もう少し」の間中 掠れた声を上げ続けた。



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