80 / 541
17♡
17♡4
しおりを挟むマンションを出ると、まだ早朝にも関わらず数名のマスコミの姿はあったけど、確実に以前ほどの過熱ぶりではなさそうだった。
土地勘もなく、さらに方向音痴なのも手伝い、俺は疲労感たっぷりの体を引き摺ってぐるぐると街を回り、ようやく駅に辿り着いた。
そこからはちゃんと自宅まで迷わず帰れて、まだみんな起き出す前だったから静かに部屋へ上がり、慣れたベッドへダイブする。
こんな事ならタクシー拾えば良かった。
「疲れた……」
俺はベッドにうつ伏せたままの状態で意識が途切れ、学校がある月曜日の朝すらも起きられず、夢なんか見ないで爆睡し、目を覚ましたのはなんと月曜の深夜だった。
「───葉璃、大丈夫ー? 入るよー?」
「だからもう入ってる」
お馴染みのやり取りを交わすと、春香がホッとした表情でいつもの様に俺の椅子に腰掛ける。
「あ、起きてたんだ。 めちゃくちゃ寝てたけど、どうしたの? 具合悪い?」
熱測ったけど無かったからほったらかしてた、と春香が心配そうに体温計を見せてくる。
「今何時?」
「月曜の0時過ぎだよ」
「月曜!? 俺そんな寝てたの…」
ビックリした。 信じられないほど寝てたみたいだ。
頭をポリポリと掻きながら体を起こすと、寝過ぎなのか聖南とのエッチのせいなのか体中がバッキバキだった。
痛くて気休めに伸びをすると、春香が物言いたげに俺を見てるのに気付く。
「何?」
こんな夜中に春香が俺の部屋に入ってくるのは、何か話がある時だ。
「あのさ、セナさんと何かあったの? すごいんだよ、私への連絡が」
「え、っ? 春香に……?」
「葉璃またスマホの電源切ってるでしょ。 葉璃に連絡付かないけどどうなってるんだって、一時間おきくらいに電話してくるの」
「え……」
「葉璃、日曜の朝に帰ってきてから死んだように寝てたじゃない? セナさん、家に来るってしつこかったけど、葉璃起こしちゃ可哀想だからそれは遠慮してもらったの。 セナさんには葉璃は寝てるとだけ伝えといたけど、起きたのなら早く連絡してあげてよ」
……そう言われても、俺なりに物凄い覚悟を決めてあの家から出てきたのに、軽々しく考えを変えるなんて出来ないよ。
痛む体を引き摺って、早朝の電車内で知らないオヤジに話し掛けられて鬱陶しい思いをしながら、電車とバスを乗り継いでやっとの思いで帰ってきた事が無駄になる。
想いを消さなきゃっていう決意が、ポロポロと崩れてしまう。
「いやぁ……しない」
「なんでよ、何かあったの? このままじゃ私ずっとセナさんから問い詰められちゃうじゃん」
「そっか……そうだよね。 どうしよ……」
俺と連絡が取れないからって春香に迷惑をかけ続けるわけにもいかないし、どうしたらいいんだろ。
俺は一回だけのつもりで聖南とエッチしたのに、聖南は足りなかったのかな。
あの美女達の話しぶりだと、一回したら終わりって聞こえたのに、何回も呼ばれるとか、そういうパターンもあるんだろうか。
「とにかく、何でもいいからセナさんに連絡しなって! 何があったか知らないけど、うまくいくようにしなよ。 葉璃はいっつも自分を犠牲にし過ぎ」
「そんな事ないけど……」
「嫌な事頼まれても、嫌だなって思ってるくせに安請け合いしたり、何か悪い事が起きたらぜーんぶ自分のせいにしてるでしょ。 恭也くんも言ってたよ? 葉璃は何もかも自分のせいにして、背負い込んで、自分だけがバチ被ればいいと思ってるって」
「何でそこで恭也が出てくるの……」
「葉璃の事親友だと思ってるんだよ。 葉璃が高校入って出来た友達って恭也くんだけでしょ? 今日お見舞いに来てくれた時、そう言ってたよ」
「…………そうなんだ」
「あんたの根暗なとこ受け入れてくれてるの、セナさんと恭也くんくらいじゃないの? なんで自分を分かってくれてる貴重な人を大切に出来ないの? 意味分かんない」
起き抜けに耳の痛い話を矢継ぎ早に聞かされて、俺は縮こまるしかなかった。
15
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
EDEN ―孕ませ―
豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。
平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。
【ご注意】
※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。
※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。
※前半はほとんどがエロシーンです。
不夜島の少年~兵士と高級男娼の七日間~
四葉 翠花
BL
外界から隔離された巨大な高級娼館、不夜島。
ごく平凡な一介の兵士に与えられた褒賞はその島への通行手形だった。そこで毒花のような美しい少年と出会う。
高級男娼である少年に何故か拉致されてしまい、次第に惹かれていくが……。
※以前ムーンライトノベルズにて掲載していた作品を手直ししたものです(ムーンライトノベルズ削除済み)
■ミゼアスの過去編『きみを待つ』が別にあります(下にリンクがあります)
αなのに、αの親友とできてしまった話。
おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。
嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。
魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。
だけれど、春はαだった。
オメガバースです。苦手な人は注意。
α×α
誤字脱字多いかと思われますが、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる