必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
254 / 541
41★

41★ 9・宮下恭也、感無量です。

しおりを挟む



 葉璃は診察の他、レントゲンだけ撮っておきましょうとの事で看護師さんと一緒に先程から出て行っていて、個室にはCROWNの三人と俺という妙な組み合わせが葉璃の帰りを待っている。


「恭也、ありがとな。  マジで事後報告のつもり満々だった。  何も異常がねぇならそれはそれで安心すっから、話してくれりゃ良かったのにな」
「葉璃……事後報告のつもりだろうと、思いました」


 セナさんは腕を組んで、葉璃の遠慮に苦笑した。

 ずっと立ってるから、さっき俺が座ってた丸椅子に腰掛けてもらおうとしたんだけど、「恭也座ってろ」と言われてしまい、セナさんは壁に凭れたままだ。


「あとさ、葉璃、なんかあった? 凹んでるように見えんだけど」


 ……さすが、セナさんは葉璃の事なら何でもお見通しだ。

 何も話していないのに、葉璃の少しの表情や雰囲気で落ち込んでいる事に気付いたみたいだ。


「そうか?  凹んでた?」
「あんま伸びてる実感ないのに成長痛止まったからかな?」
「いや違うんじゃねぇかな。  恭也、知ってる?」


 アキラさんとケイタさんには葉璃の変化に気が付かなかったようだけど、セナさんは絶対に何かあったはずだと俺に視線を寄越してくる。

 葉璃の動揺の意味が俺もよく分からない、と前置きして、三人に彼女の存在を話した。


「えっ? 恭也、彼女いるんだ」
「それで何で葉璃が凹むの?」


 アキラさんとケイタさんも俺と同じ思いで、葉璃の凹む理由が見えなくて首を傾げている。

 対してセナさんは、腕を解いてポケットに手を突っ込み、意味深に口元だけで笑った。


「……恭也、その彼女の存在を今まで葉璃に全然匂わせなかったろ」
「はい。  俺自身も、付き合ってるっていうほどの感覚が、ないですからね。  どちらかというと、葉璃優先、してきましたので」
「だからだ。  良かったな、恭也。  ……俺お前にも嫉妬しそー」
「え?」


 良かったな、って……。

 どういう事か分からずセナさんを見上げると、フッと笑ったままブルーレンズのサングラスを掛け セナさんは腕を解いてポケットに手を突っ込み、意味深に口元だけで笑った。


「葉璃はショックだったんじゃないの。  親友だと思ってた恭也が今まで何も話してくれなかった事。  恭也に女が居たって事実を受け止めきれねーってのもあんだろ」
「………………」
「普通の友達だと思ってんなら、恭也に女が居たって別に何とも思わねぇ事だよな。  葉璃が恭也に心開いてんのは知ってたけど、……ここまでとはなぁ。  ……妬いちまう」


 それはつまり、俺が今まで彼女の存在を話さなかった事が、葉璃をしょんぼりさせてしまった原因、なのだろうか。

 俺に彼女が居た事も……?


「………………」


 セナさんと恋人同士になった葉璃を、取られた、寂しい、と思ってしまった俺と同じ気持ちを、葉璃も抱いてくれたって事なのかな。

 俺だけが葉璃の事を大好きだって思ってたから、そんな事を聞かされたら、浮かれてしまう。

 しょんぼりさせてしまったことは棚に上げて、もしそうだったらいいなって、嬉しくて嬉しくて。

 この気持ちは決して恋愛感情ではなく、セナさんとの仲を危ぶむような事も俺はしないって断言できる。

 でも友達と呼ぶには浅過ぎて、親友というのも物足りない。

 それは例えるのがとても難しく、恋愛感情はないのに「愛してる」って、葉璃にだったら平気で言えると思う。

 俺の傍に居てほしい。

 離れないでほしい。

 笑い掛けていてほしい。

 俺を理解していてほしい。

 ……体の関係がない恋人と紛うほど、葉璃にもすべてを曝け出してほしい。

 そう考えてしまう俺は、少しおかしいのかもしれない。

 ───分かっている、そんな事は。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

処理中です...